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なぜ日記を読み返すことは「面白い」のか?



大橋悦夫ここ最近はRoam Researchに投入したデジタル日記の読み返しに精力的に取り組んでいる大橋です。

これまでにも何度か折に触れて読み返しているのですが、どういうときに「折に触れる」のかというと、

  • そういえば○○マネージャという変わった人がいたな → 具体的なエピソードは?
  • 秀丸エディタを使い始めたのはいつだっけ?
  • 「超」整理手帳はついての自分の感想をまとめて読みたい

といった「検索要求」が不意に発生したとき、です。

そのときは、ピンポイントで知りたいことがあるわけなので、日記の全ファイル横断検索(秀丸エディタのgrepという機能を使います)で見つけ出して、必要な箇所を拾い読みすることで満足できます。

ただ、この拾い読みだけではその当時の自分が置かれていた状況が完全には思い出せないために、拾い読みした内容を誤解する可能性があります。

コンテクストによって意味が変わることがあるからです。

「この日はどんな日だったんだろう?」という当然の疑問がわき、改めてその日の朝起きてからの流れを読み返したりします。

それでだいたい気が済むのですが、ときには「そもそも当時の自分はどんな感じだったのだろう?」という、さらにつっこんで「分かりたい」という“追加注文”が発生することがあります。

そうなると、その数日前は、その数週間前は、とどんどん遡っていき、気づくとえんえんと日記を読み返している自分に気づき(とにかく「面白い」ので)、ハッと我に返ることもしばしば。

そんなこともあり、いつか改めてまとめて読み返したい、と思うようになりました。

大河ドラマを観て、改めてイチから歴史をしっかり学び直したくなる心境に似ています。

で、今回は事例として、「超」整理手帳(野口悠紀雄氏が考案した手帳)をふり返ったときの様子をご紹介しつつ、日記を読み返すことがなぜ「面白い」のか、その謎に迫ります。

気になったキーワードで全文検索

冒頭でも書きましたが、

  • 「超」整理手帳についての自分の感想をまとめて読みたい

という「検索要求」がある日、実際に発生しました。

すぐに秀丸エディタのgrepコマンドで日記フォルダを対象に探索を開始します。

すると、以下のような検索結果が得られます。日記のみを対象にしたGoogle検索のようなイメージです(クリックで拡大)。

ファイル名(行頭の黄色の文字列)をダブルクリックすると、そのファイルを開いたうえで、ファイル内の該当行にカーソルが位置づけられます。

地上1万メートルの上空からターゲットの家屋に一気に降下するイメージ。

たとえば、1行目の

199502.txt(125): ◆リブロ・紀伊国屋電話:「超」整理手帳在庫なし

の意味は、

  • 「199502.txt」というファイルの
  • 125行目に
  • 「◆リブロ・紀伊国屋電話:「超」整理手帳在庫なし」という検索キーワードを含む行がある

ということになります。

この行をダブルクリックすると、199502.txtの125行目にジャンプできます。

なお、「重要度順」に並ぶ Googleの検索結果と違い、秀丸エディタのgrepの検索結果は単純にファイル名の小さい順に並びます。

検索結果を見て分かること

これを眺めていると、「超」整理手帳と自分との“関係史”が手に取るようにわかります。

同時に、「超」整理手帳をいつ頃まで使用していたのかもわかります。

2008/10/29に「スケジュールシート交換」を最後にその後の記述がなくなることから、ここが終わりの始まりであることが見て取れます。

その数行前に、

「超」整理手帳からW-ZERO3に乗り換えることになりそう

という記述があることから(この日は2006/07/17でした)、これが伏線になっていることも。

こうして、「超」整理手帳というツールをめぐる、自分が仕事や予定や時間やメモというものをどのように扱ってきたのかが浮かび上がってきます。歴史でいうところの「テーマ史」です。

そして、より理解を深めるための「通史」にも触手が伸び始める、というわけです。

これは何か?

もともと今回の記事はここで終わるところだったのですが、何かが欠けていると感じていました。

ただ、今日は外出の予定があったので、記事の投稿はいったん保留に。

移動中にたまたま読んだ(正確には、Instapaperの読み上げで聴いた)記事の中で「欠けているピース」を見つけました。

先ほど、過去のすべての日記を対象に特定のキーワードで全文検索した結果得られたものを「テーマ史」と呼びました。

この「テーマ史」とはいったい何なのか?
「テーマ史」を“編さん”することで何が得られるのか?

その答えは『知的生産の技術』に書いてありました。

「発見の手帳」のチャプターです。

一冊をかきおえたところで、かならず索引をつくる。すでに、どのページにも標題がついているから、索引はなんでもなくできる。この作業は絶対に必要である。これによって、ばかばかしい「二重発見」をチェックすることもできるし、自分の発見、自分の知識を整理して、それぞれのあいだの相互関連をみつけることもできるのである。

これをくりかえしているうちに、かりものでない自分自身の思想が、しだいに、自然とかたちをとってあらわれてくるものである。



つまり、思いついたキーワードで全文検索することは、索引作りの一工程だったのです。

索引作りは次の2つの工程から成ります。

  • 索引の対象となるキーワードを決める
  • そのキーワードが含まれる箇所を特定する

僕の頭の中で不意に発生する「検索要求」は、「このキーワードが索引候補になるのではないか?」という問いだったのです。

grep実行後に得られた検索結果は、まさに索引そのもの。

よくよく考えてみると、Roam Researchの全ページ一覧(ALL PAGES)は索引そのものです。

※「ジュリアン」とは会社員時代によく訪れた喫茶店。しばしばここで重要な会話が交わされました。

秀丸エディタで日記を読み返すだけでは索引作りは進まない。
だからこそ、Roam Researchに投入するわけです。

» Roam Researchに過去のデジタル日記4年分を投入してみて分かったこと


で、索引とはインデックスのことです。

それで思い出すのは以下の記事で書いた「整頓の定義」です。

» 整理と整頓の違いを改めて整理する

すぐに取り出せるようにインデックスを付けること。誰でもピックアップすることができるように整えることが「整頓」なのである。


日記を読み返すことで何を得たいのか?

冒頭で以下のようなことを書きました。

ただ、この拾い読みだけではその当時の自分が置かれていた状況が完全には思い出せないために、拾い読みした内容を誤解する可能性があります。

コンテクストによって意味が変わることがあるからです。

「この日はどんな日だったんだろう?」という当然の疑問がわき、改めてその日の朝起きてからの流れを読み返したりします。

それでだいたい気が済むのですが、ときには「そもそも当時の自分はどんな感じだったのだろう?」という、さらにつっこんで「分かりたい」という追加注文が発生することがあります。

そうなると、その数日前、その数週間前、とどんどん遡っていき、気づくとえんえんと日記を読み返している自分に気づき(とにかく「面白い」ので)、ハッと我に返ることもしばしば。

そんなこともあり、いつかまとめて読み返したい、と思うようになりました。

大河ドラマを観て、改めて歴史をしっかり学び直したくなるのに似ています。

「いつかまとめて読み返したい」と欲するところの根っこには、「日記を整頓したい」という根源的な欲求があったのでしょう。

過去の記録からそのときどきで必要になる知識をすぐに取り出せるようにインデックスを付けることで、今後の自分の活動に役立てることができるからです。

脳としては、その方が生存確率が上がるので「面白い」と知覚させることで「読み返し」タスクの優先度を上げているのではないか、と。

» 忙しい人ほど日記を書いたほうがいい理由と、日記の効用を引き出すための書き方

僕が感じているのではなく、僕の脳が「ウェーイ(。ノ・ω・)ノ 余計な仕事しなくて済んだわ~」とうれしがっている。


まとめ

日記を読み返すことの実態は日記を整頓作業、すなわち日記の中から今後必要になるであろう知識をすぐに取り出せるようにインデックスを付けることで、生存確率を上げていこうとする行為、ということになります。

以下の記事で「デジタルな賽の河原積み」について危惧を抱いていましたが、

» Roam Researchに過去のデジタル日記4年分を投入してみて分かったこと

この作業を始めて即座に気づきましたが、この作業にはキリというものがありません。

もちろん、あらゆる言葉をリンクにすることはありませんが、やればやるほど「あ、この言葉も気になる…」「あ、これも…」と、リンクにしたいキーワードが次々と目に入り、そのたびに「Unliked Reference」の一覧を見返して、ポチポチとリンクに変えていくという、もしかして、これってデジタルな賽の河原積みになってない? という疑念にたびたび襲われます。

(中略)

このあたりは、しかし、続ける中で一定の方向性が見えてくることで収束していくのではないか、という淡い期待を盾にいったん考えないことにします。

生存確率を上げるためのインデックス作りなのだ、と認識を改めることでキーワード選定の基準も明確になり、読み返し作業にも意気揚々と取り組むことができそうです。

参考文献

「索引」というキーワードを教えてくれた記事です。

» ときめく心の資産、を育てる方法|Sangmin Ahn|note


結局この本に全部書いてあるのですよね…。



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