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Roam Researchに過去のデジタル日記4年分を投入してみて分かったこと



大橋悦夫30年近くデジタル日記を書きつづけていますが、いつかこの日記を何らかの形にまとめてみたいと考えている大橋です。

どのようにまとめればいいかを模索しつつ、同時にそもそもなぜまとめたいのか、自分でもうまく説明できないでいました。

それでもとにかく日記は書き続けているので、「データ」は蓄積され続けます。

「特にまとめることなどしなくても、ときどき思いついたときに読み返せばそれでいいではないか」

そう思ったこともありました。

それでも、日記をランダムに読み返すたびに「うわー、これほんっっと面白いな~」と我ながら心から楽しく感じていたので、この楽しみをもっと手際よく身近にできないものか、という気持ちは抑えがたい。

展開は知りすぎるほどに知っているのに何度も見てしまうシリーズドラマのように。

そうであるならば、いつでも見返せるようにDVD BOXを買い求め、しかも好みの名場面に片っ端からインデックスを付けていって、好きなときに好きなシーンを即座に見返せるようにすればいい。

そのような「加工作業」を日記に対して行えば、先ほどの気持ちは満たされるのではないか。

問題は、この加工作業を行ううえでの最適なツールがなかったこと。

これまでにいくつものツールを試しつつも挫折、をくり返してきました。

今回のツールもどうなるか分かりませんが、とりあえず1996年4月~2000年5月までの49ヶ月分のデータを投入してみました。

そのツールは「Roam Research(ロームリサーチ)」。


始めて早々に課題に感じているところもありますが、まずはどんな感じになっているのかをご紹介します。

そもそも日記とは何か?

今回の記事は以下の記事の続きです。

» 忙しい人ほど日記を書いたほうがいい理由と、日記の効用を引き出すための書き方

この記事の内容を二行でまとめると、

  • 日記にその日に自分が何を思い、どう感じたのかをありのままに克明に書いておくと、後で読み返したときに面白い
  • 「面白い」と感じる → 似た構造を発見する → 脳のエネルギーが節約できる

ということです。

ざっくりすぎる2行目について補足します。

  • 心の容れ物である物質的な肉体は時々刻々と入れ替わっている
  • 中身の心も入れ替わっているが、肉体よりは緩やかなはず
  • 目に見える肉体の変化(老化)は分かりやすい
    • だからダイエットやトレーニングを駆使して「まだまだ現役!」と思えるとうれしい
    • ↑変化に対する抵抗
  • 目に見えない心の変化は分かりにくい
    • だから日記で可視化して時系列で見比べてみることで「アハハ、やっぱり相変わらず自分だわw」と思えるとうれしい
    • ↑自分で自分にOKが出せる

で、最後の「うれしい」が実は重要だと思っています。

「いろいろあったけど、それでもなお自分は自分なんだな」と思えることが文字通り自身&自心に対する自信につながるからです。

「いろいろあったけど、それでもなお自分は自分なんだな」と思えることが文字通り自身&自心に対する自信につながるからです(重要なので2回書きました)。

まとめると、以下のようなループを回し続けるということです。

  • 日記を書く(ログ)
  • 読み返す(レビュー)
  • 自分が自分であることを再確認する
  • 自信を持つ
  • 行動する
  • (最初に戻る)

このループを回すことで紡いできた自分の物語のうち、好きなシーンをいつでも見返せるようにすること。

それが、今回の企ての目的です。

1ページにつき1ヶ月(=1ファイル)を投入

現状、日記はテキストファイル(1993年~2019年)とEvernote(2008年~)に分散していますが、とりあえずテキストファイル部分の一部(1996年4月~2000年5月までの49ヶ月分)を入れてみました。

この期間はちょうど会社員時代(1996年4月~2000年3月)と重なります。その後の2ヶ月は会社を辞めてからの日々のことが書かれているので、ついでに投入。

以下の囲みの部分です。


最初はRoam Researchの1ページにつき1日分をコピー&ペーストしていたのですが、49ヶ月分の投入をするのに49ヶ月×30日=1470回ものコピペ作業が必要になるので、早々に挫折。

1ページにつき1ヶ月に切り替えました。つまり、49ページということになります。

まず「Journal」という親ページを作り、その下に各「年」ページ、その下に各「月」ページ、という構成に。

  • Journal
    • 1996
      • 199604
      • 199605
      • 199606
    • 1997
    • 1998
    • 1999
    • 2000

実際には以下の通り。

※チェックが付いている年月日は読み返し&リンク付け作業(後述)が完了している目印です。

1つのページが大きすぎると読み込みが遅くなる問題

この問題があるから日単位が良かったんですが、作業負荷との関係でやむを得ないですね。

ページを開くたびにChromeが数秒間「応答なし」になります…。

それでも、いったんページが表示されれば以降の読み返し&リンク付け作業は支障なく行えます。

読み返し&リンク付け作業

あとは普通に読み返していきます。

ここからがRoam Researchの本領発揮。気になった言葉を[[ダブルブラケット]]で囲んでリンクにしていきます。

Scrapboxを使ったことがある方ならおなじみの作業ですね(Scrapboxは[シングルブラケット])。

その上で、そのリンクをクリックします。

すると、以下のようにすでにそのリンクが含まれるページの一覧と、リンクが含まれている行も合わせて表示されます。すでに13ページのリンクがありますが、最初は0ページからスタート。

※惜しむらくは、この一覧の並び順が変えられないこと…(Scrapboxは変えられますね)。

このページをスクロールしていくと一番下に「Unliked Reference」という薄いグレーの目立たない文字列が現れます。まるでクリックされるのを拒んでいるかのようです(なぜなんだ)。

この文字列の左側にある右向き三角形をクリックします。文字列はクリックしても何も起こらず、この小さな小さな三角形をクリックする必要があるのです(なぜなんだ)。


すると、同じ言葉でまだリンクしていない候補ページおよび該当行が表示されます。

ここで、「Link All」をクリックすると表示されいてる候補ページ内の言葉がすべてリンクになります。

各ページごとの「Link」をクリックすれば、個別にリンクになります。

同じ言葉でも、文脈によっては意図しない使われ方がされていたりしますので、確認したうえで個別にリンクにするほうが安全でしょう。

課題1:キーワードリンクの限界

この作業をくり返すことで、日記をウィキペディア化することができます。

日記という閉じた世界の中でキーワード・サーフィンを楽しめる、ということです。

とはいえ、キーワードリンクには限界があります。

キーワードとして現れないものの概念的には同じ括りにはいるもの同士はつながらないのです。

つなげたければ以下のように恣意的にキーワードリンクを付けて関連づける必要があります。タグ付けですね。


課題2:キリがないのでは?

この作業を始めて即座に気づきましたが、この作業にはキリというものがありません。

もちろん、あらゆる言葉をリンクにすることはありませんが、やればやるほど「あ、この言葉も気になる…」「あ、これも…」と、リンクにしたいキーワードが次々と目に入り、そのたびに「Unliked Reference」の一覧を見返して、ポチポチとリンクに変えていくという、もしかして、これってデジタルな賽の河原積みになってない? という疑念にたびたび襲われます。

たとえば、以下を見ていると「ダンス」もリンクにしたくなります。


このあたりは、しかし、続ける中で一定の方向性が見えてくることで収束していくのではないか、という淡い期待を盾にいったん考えないことにします。

やはり「面白い」

とはいえ、読み返すこと自体はやはり非常に「面白い」です。

「うわ~、この時期からすでに今と同じこと考えてたんだ~」という伏線の回収がたびたび発生するからです。伏線張りまくりのドラマの終盤で回収シーンがえんえんと続くイメージ。伏線回収無双です。

まさに「いろいろあったけど、それでもなお自分は自分なんだな」です。

「見積もり工数の大切さに気づいた」

たとえば、以下は入社1年目の、配属から1ヶ月たったころに書いたメモです。

  • 1996/09/28(土) やるべきこと、やりたいことを付箋に書いてどんどん机に貼っていっているが、こうでないといけないと思う。
    • パソコンに入れてしまうと見えなくなる、というのが欠点。とうてい一覧できないようなブラックボックスでなければ、検索ができるメリットは生きてこない。
    • 世間ではこの棲み分けがあいまいであるようだ。予習はアナログ、復習はデジタルというのが理想だと考えている。
    • 未来は何が起こるかわからない。予定はどうしても粗いものとなる。しかし過去は決して変わらず、静かに積み重なる。これは正確に記録することができる。
    • ならば、もともと粗くしか作れないなら、時間をかけずにさっさと作りたい。
    • 予定は紙で考える。過去は蓄積されていく。ブラックボックスが形成されていく。ならば検索できるように電子化する。カテゴリー別・人別・時系列など自由に閲覧できる。

当時はまだ(僕の中で)アナログ優勢であり、デジタルとのつき合いはまだまだ浅かったことが窺えます。

日記を書いていると、事実 → 感想 → 思いつき、という具合に思考が進むため、ときおりこうしたメモが生まれます。

予習はアナログ、復習はデジタル

時期は前後しますが、同じ月に書いた別のメモ。

  • 1996/09/16(月) ☆見積もり工数の大切さに気づいた。
    • 今までTodoというのは羅列に過ぎなかったけど、ひとつひとつが数字をもつことにより、いきなり動き出した。
    • 具体的に残り時間に対してどれだけの作業が残っているか、数字でわかるというのは大切なことだ。
    • 今回のTodo管理DBはうまく行くかも知れない。ただ、行動記録とのリンクがいまいち。Todoで終わった項目は行動記録に併合できると良いのだが。

このメモを改めて読み返してみると、タスクシュートの原形の片鱗のようなものが感じられます。特に最後の一文はタスクシュートそのものです。

自分にとって有用なものをHTML整理したい

入社2年目の11月のメモ。

  • 1997/11/21(金) ☆Niftermに蓄積されているログのうち、自分にとって有用なものをHTML整理したいと思い始めた。
    • たとえば、知研書房だったら、本のページを作っておいて、そこに個々の書き込みからボトムアップで項目を洗い出し、それぞれの書き込みに辿っていけるような仕組みに。
    • そのためには、「これは」と思えるような書き込みは、簡単な操作によって、その場でタグ情報が付加され、HTML化ののちページに投入される、というプロセスが必要。
    • 逆にこれさえできれば、手動でちまちまリンクを張るという手間から解放される。これは何もNIFTYログだけに限らず、雑誌・本ほか言語化しうるあらゆる情報について適応可能。

Nifterm(ニフターム)」なる一部の方には懐かしい言葉が出てきますが(パソコン通信・NIFTY SERVE専用の統合ターミナルソフト)、今でいえばTwitterやSlackに近いかもしれません。

自分の発言だけでなく、その発言の元となった誰かの発言も含めてデータベース化することで、その後のアウトプットに活かせるのではないか、という魂胆がありました。

かくして、20年以上たった今でも同じようなことをやり続けている自分に気づくわけです。

「発見をとらえる」ための日記

『知的生産の技術』に「観察を正確にし、思考を精密にする」ための習慣として「発見の手帳」という方法が紹介されています。

「発見」というものは、たいていまったく突然にやってくるものである。まいにちみなれていた平凡な事物が、そのときには、ふいにあたらしい意味をもって、わたしたちのまえにあらわれてくるのである。たとえば宇宙線のような、天体のどこかからふりそそいでくる目にみえない粒子の一つが、わたしにあたって、脳を貫通すると、そのとき1つの「発見」がうまれるのだ、というふうに、わたしは感じている。

宇宙線は目にみえない。目にみえない宇宙線を観測し記録するためには、それを目にみえるかたちでとらえる装置が必要になる。「ウィルソンの霧箱」とよばれる装置は、それである。

宇宙線は、天空のどこかから、たえず地球上にふりそそいでいて、だれの大脳をも貫通しているはずだ。したがって、「発見」はだれにでもおこっているはずである。それはしかし、瞬間的にきえてしまうものだ。そのまま、きえるにまかせるか、あるいはそれをとらえて、自分の思想の素材にまでそだてあげるかは、その人が、「ウィルソンの霧箱」のような装置をもっているかどうかにかかっている。「発見の手帳」は、まさにそのウィルソンの霧箱なのである。



不意にやってくる「発見」はその都度そのときどきの方法でとらえるわけですが、そのまま“虫かご”に入れておくだけでは長くはもたないでしょう。

手持ちのメモ帳や箸袋、ナプキンなどにメモしただけでは内容が断片的なことが多いこともあり、そのときに脳内に確かに存在したクリアな「発見」が、どんどん鮮度を失って、やがては消えてしまう。

そうなる前に安全な保管箱に移して、少しでも長く生きながらえさせる。この保管箱が僕にとっては日記だったのです。

時系列の中に置いておけば、その発見に「いつ」出会えたのかを後から知ることができます。

さらに、どのような状況下で出会ったのかも、日記ですから前後を読むことでうかがい知ることもできるでしょう。

ちょうど、古代の昆虫が琥珀に包まれることで、その姿を現代にまで伝えることができたのと同様に、日記という文脈に包んでおくことで発見を生きながらえさせることができるわけです。

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