テーマさえあればスラスラと執筆を進めていけるなら話は別ですが、たいていの場合、執筆に取りかかる前に(ある程度は)構成を固める必要があります。
書くべき素材はあるけれども、それをどこに、どのように配置するのか。
そうした構成、あるいは構想を練り込んでおかないと、全体像が掴みにくく、執筆のルートも険しいものになりがちです。
そこで執筆に取りかかるまえに、あれやこれやと考えを進めることになるわけですが、その際にどんなツールを使えばよいでしょうか。
もちろん何だってよいわけですが、ある程度「適性」を持ったツールを4つ紹介しておきましょう。
付箋
ひねりもなにもありませんが、やはり王道は王道です。
書きたいことを付箋に1つずつ書き込んでいき、それをペタペタと貼っていく。近しい要素を近くに集め、全体像を眺めてさらに配置をかえる。そうした手順を通しながら、脳内にある構想に手を加えていくわけです。
アナログツールなので、「貼り終えた付箋はどうするんだ?」という問題は残りますが、とりあえず取っつきやすいツールであることは間違いありません。
アウトライナー各種
最近シゴタノ!で何度か取り上げられているアウトライナー。
※たとえば、この記事。
アウトライナーは一行一行が移動可能な要素なので、構成を練り込んでいく際にはたいへん役立ちます。とりあえず要素を一通り打ち込み、流れをイメージしながら要素を並び替えていく。気に入らなければ、また別のパターンを作る。そういったトライアルがいくらでも可能です。
また、デジタルツールなので、コピペなどを使えば執筆作業にシームレスに移行できるのもポイントです。
ボード系各種
実際の所何系と呼ぶのが良いのかはわかりませんが、付箋っぽいことができるデジタルツールもあります。
たとえば、「Scapple」や「Delinete Pro」がそれです(いずれもMacアプリ)。
※画面は「Delinete Pro」。
自由配置でテキスト要素を並べていくことができ、また矢印などの関係性を示す要素を配置することも可能です。
アウトライナーは要素を縦一列に配置していきますが、こうしたボード系ツールでは平面空間に配置が可能です。構成がぼんやりしている段階では、これくらい自由度が高い方がやりやすいかもしれません。この辺りの使い勝手は付箋に近しいものがあります。
それでもやはりデジタルツールなので、執筆作業への移行も対応可能です。ただし、配置するテキストは単語ぐらいが適切で、あまり長い文章を入れるのには適していません。
表計算ソフト各種
意外なことに、表計算ソフトもこの用途に使えます。
セル1行に一つの要素を入れ、それを並べていく。ツールによってはドラッグで要素の移動ができますし、コピペを使うこともできるでしょう。
こちらも、ボード系ツールと同じように平面空間に要素を配置できます。また、長い行の文章を入力することも問題ありません。
ただし、要素の移動は「可能である」という範囲であり、「楽々スムーズに」というわけにはいきません。その意味で、ある程度は固まっているけれども、もう少し練り込みたいという場面で活躍します。
さいごに
アウトライナーは便利なツールなのですが、たとえば「ある塊の要素群を、横に並べて比較検討する」といったことができません。ボード系ツールや表計算ソフトならそれが可能になります。
結局の所、こうしたツールの使い勝手については、「自分がどのようなビューを求めているか」に依ります。縦一列で違和感がないのか、あるいはちょっと横に並べてみたいのか。その辺りの感覚を実際にツールを使いながら確かめてみるのがよいでしょう。
▼今週の一冊:
「神話」とは一体何なのか。それは私たちの中からいかにして生まれ、いかなる影響を与えるものなのか。そうしたことが対話の中で語られていきます。
現代には大人になるための神話があまりない、という話が登場するのですが、たしかにそういう部分はあるかもしれません。断片的なもの、刹那的なもの、語り継がれないものは、おそらく神話的力を持ち得ないでしょう。
インターネットから神話は生まれるか。
興味深い問いです。
Follow @rashita2
すべてが順調に運んでいれば、本日にはセルフパブリッシングによる電子書籍が発売になっているはずです。
もちろん本書の執筆の前段階においても、上記のようなツールは活躍しました。
えっ、どれを使ったのか? 全部使いました。
「できることは、すべてする」ぐらいでないと、なかなか大きな本はまとめられないのです。
※追記@2015/05/31(日) 08:00 発売になりました。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。