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Scrapbox入門13「プロジェクトとページの粒度」



倉下忠憲前回は、Scrapboxで「リンクを付けること」について紹介しました。どんな手段を使おうとも、とにかくリンクをつけていくことがScrapboxの使い方のコツになります。


今回は、そこから少し視野を広げて、Scrapboxを実際に使っていく上で遭遇する問題について考えてみましょう。それは、プロジェクトやページをどんな粒度で作るのか、という問題です。

ちなみに、内容についての詳しい話や、そもそもScrapboxってなんやねん、については書籍『Scrapbox情報整理術』をご覧ください。あるいは、Scrapbox研究会にも情報が集まっているのでそちらを参照してください。



まず自由ありき

最初におことわりしておくと、ツールなんて好き勝手に使えばいいのです。「このように使わなければならない」というルールは、息苦しい押しつけでしかありません。使い方の想像力を削ぐ、嫌らしい拘束具ですらあります。

しかし、です。

そのツールの特性をより活かす使い方、というのはたしかにあります。それが「正しい」使い方ではないにせよ、こう使っておいた方が、わざわざそのツールを使う意義が出てくる、という使用方法は何かしらあるものなのです。

今回考えたいのは、そうした使い方です。それを知った上で、それに沿って使うもよし、気にせずぜんぜん違う使い方をするのもよしです。その点は、留意しておいてください。

プロジェクトとジャンル

まずはプロジェクトの粒度からいきましょう。

Scrapboxでは、複数のプロジェクトを作れます。すると、Evernoteのノートブックのようにジャンルごとに作り分けたくなりますが、はたしてそれはどうでしょうか。

もしそのプロジェクトを、ブログや情報まとめwikiのように使っていくのであれば、ジャンルごとの切り分けは有効です。「パズドラ攻略Scrapbox」に最新のテクノミュージックの流行が入っていても、あまり有効ではないでしょう。

しかし、個人用の情報整理ツールとして使うなら、そのような切り分けはあまり意味がないばかりか、「どこに保存しようか」問題が発生するので適切とは言えません。ぜんぶ一緒くたにまとめてしまえばOKです。

ただし、ブログ的な使い方の場合でも、すでに存在するページから派生的にリンクとして生まれるページの場合であれば、異なるジャンルのページがあってもよいでしょう。それらの情報は「つながって」いるわけですから、混ざっていても違和感はありませんし、むしろ有用と言えます。

メンバーで切り分ける

この問題は、所属するメンバーからも考えることができます。

たとえば「プロジェクトA」というものがあり、そのプロジェクトに5人のメンバーが参加しているとしましょう。そして新たに「プロジェクトB」を作り、そこにも同じ5人のメンバーが参加するならば、別段プロジェクトを切り分ける必要はありません。その場合は、同一のプロジェクトとして扱った方が、さまざまな利便性は向上します。

この観点を取れば、自分一人しかメンバーがいない複数のプロジェクトは、まとめてOKという話になります。つまり、先ほどの話が演繹されるわけです。

総じて言えば、自分が扱う情報の中で、「これは自分だけが扱えばよい」というものは一つのプロジェクトに、「これはあの人たちと共有しておきたい」というものは、そのメンバーごとのプロジェクトに、という分け方が、実際的なやり方でしょう。

ちなみに、「情報まとめwiki」に使う場合は、その時点ではメンバーが自分以外がいない(が、しかし将来的には増えるかもしれない)プロジェクトとして位置づけると、自分用のプロジェクトと切り分ける視点が生まれてきます。

ページの粒度

次に、ページの粒度について考えます。

プロジェクトの粒度は、かなり揺れ幅がありましたが、ページに関してはシンプルに言えます。

「できるだけ1ページ1項目として、短く刈り込んでいく」

「1ページ1項目」は、ノート系ツールを使う上での基本的な指針なので、改めての説明は不要でしょう。一つの情報単位に、雑多なものを詰め込まないようにすれば、それぞれの情報が扱いやすくなります。

Scrapboxの場合は、それが顕著に出てきます。

大きな概念ではリンクが作りにくい

たとえば、「11月4日」というページを作り、その中にその日思いついたことを3つ、4つ書いていったとしましょう。その時点では、それで何も支障はありませんが、時間が経った後に問題が生じます。

たとえばその4つの項目の中に、「Evernoteをうまく使うコツ」というのがあったとします。しかし、その情報を思い出すときに「11月4日」というキーワードはまず出てきません。ここ数日内に思いついた、ということは思い出しても(それすらあやふやですが)、具体的な日付までは思い出せないものです。

Scrapboxではブラケットの中に文字列を入れれば、それに近しいページのタイトルを表示してくれます。しかし、思い出せるキーワードが、「Evernote コツ」なのに、入力しなければならないのが「11/4」では、このページへのリンクを作るのは難しいでしょう。

だからこそ、細かく分けたページを作るのが吉です。4つの項目があるならば、それぞれをページにして適切なタイトルをつけておくのです。そうするとブラケットの中に言葉を入れたときに、目的のページが(極めて容易に)見つかるようになります。

さいごに

というわけで、今回はプロジェクトとページの粒度について考えてみました。どちらも「正解」のないものではありますが、一つの指針は示せたかと思います。

ちなみに、公開・非公開の選択ですが、「公開して問題ないものは、公開した方が面白い」ということは言えそうです。つまり、有用そうなものについては公開する、という考え方ではなく、デフォルトは公開として考えて、公開したらマズイものが含まれているものは非公開にする、というくらいが状況共有の広がりにとっては有効でしょう。

▼今週の一冊:

ちびちび読み進めているのですが、無茶苦茶面白いです。人の好みをいかに扱うのか、という現代のビジネスにおいても重要な視点が徹底的に考察されていて、自分の環境においても考えることが盛りだくさんです。


『ホモ・デウス』と合わせて読むといっそう面白いかもしれません。


▼編集後記:
倉下忠憲



たぶん嘘だと思うのですが、僕のカレンダーは11月になっています。いったい10月はどこにいってしまったのでしょうか。今月はともかく原稿をガリガリ進めよう月間でまいりたいと思います。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中