高い成果をあげるためのカギは、朝一番に大事な仕事に取り組むという習慣をつけることである。つまり、真っ先に「あなたのカエルを食べること」を日課にすることだ。あまり考え込んだりせずに。(序章より)
今回ご紹介する『カエルを食べてしまえ!』の言わんとするところは、上記に引用した3文に集約されます。
「そんなことは当たり前だし、すでにわかりきっている」と言われるかもしれませんが、その「当たり前」を「わかりきる」から「やりきる」に引き上げるのが本書の目指すところでしょう。
では、具体的にはどうすればいいか。
それは、本書で紹介されている21の原則に沿って行動を起こすこと。急いでいる人は、128ページに21の原則がまとめて解説されているので、そちらから先に読んでみるといいでしょう。
ただし、本書には「使用上の注意」があります。それは、本書が語っているのは、行動を起こすレベルよりも一階層上のレベルの話であること。
生きるための狩りを例に取れば、本書が指し示すのは「狩り」という方法であって、「狩り」に付随する具体的な一つひとつのアクションではない、ということです。
- 生きるためには、イノシシやウサギを捕ればいいんだよ。
- うまく捕るためには罠を作るのが一番だね。
といった感じです。
でも、罠の作り方にまでは言及していませんし、そもそもどこに行けばイノシシやウサギに出会えるのかについても明言されていません。
とはいえ、「そうか、罠を作ればいいのか!」ということで行動を起こせる人もいるでしょうから、そういう人には役に立つ、と言えなくもないです。
そういう意味では、若干肩すかし感のある一冊なのですが、著者が「言わなくてもわかるよね」とでも言わんばかりに省略している部分を補っていくと、全体像が浮かび上がってきます。
今回は、そういった“補助線”を引いていく作業を、いくつかの原則について、手前味噌ですが拙著『成功ハックス』に当てはめながらやってみます。
原則5.常に「ABCD法」を実践する
「ABCD法」とは、やるべき仕事のリストを作り、重要度順にA〜Eのランクをつけていく、という方法。
「A」の仕事が残っているうちは「B」の仕事にとりかかってはいけない。大きなカエルが食べられるのを待っているのに、オタマジャクシに気をとられてはいけないのだ。
では、どうしたらオタマジャクシに気をとられずにカエルに向かっていけるのでしょうか。「気をとられてはいけない」と言われても、とられてしまうものは仕方がありません。
『成功ハックス』では、「時間に利用限度額を設定する」という方法をご紹介しています(p.133)
原則7.能率の法則にしたがう
「すべきことをすべてする時間はない」ということで、次の3つのことを自問すべし、としています。
- 1.私にとって最も重要な仕事は何か?
- 2.私にしかできないことで、本当に重要なのは何か?
- 3.いま私の時間を何に使うのが最も有意義だろう?
(いま最も大きなカエルは何か?)
いずれも、それがわかれば確かに時間の使い方が改善できそうです。でも、こうした自問に対して、即座に正しい答えが出てくるという人はどれだけいるでしょうか。わかっていれば悩まないのではないか、と思うのです。
『成功ハックス』では、重要かどうかを判断するための具体的な質問をいくつか紹介しています(p.64ほか)。
原則12.一度に一樽ずつ
これまでぐずぐずしてきたあなたも、人生の目標や仕事や計画を定め、実現をめざして第一歩を踏み出そう。そのためには、目標や仕事や計画を実現するにはどうすればいいかじっくり考え、その段階をリストアップすることが必要かもしれない。
「必要かもしれない」と、急にマイルドになっていますが、やはりリストアップは必要不可欠でしょう。
『成功ハックス』では、付箋やMindManagerを使ったリストアップの方法をご紹介しています(p.70)。
原則13.自分を追い込む
あらゆる仕事や用事に期限を設けよう。自分で「自分を追い込むシステム」をつくるのだ。ハードルを設け、それに追い込むのだ。期限を設けたら、あくまでそれにこだわり、何とかクリアするようにしよう。
「自分を追い込むシステム」の具体的な作り方については言及がありませんが、期限を設けるだけでは心許ない気がします。
『成功ハックス』では、Stickiesを使った「自分を追い込むシステム」の作り方をご紹介しています(p.94)
原則21.仕事を中断しない
著名な教育家のエルバート・ハバードによれば、自己鍛錬とは「自分がすべきことを、それが好きであろうとなかろうと、すべきときに、できるようにすること」である。
つまるところ、いかなる分野であれ成功するには、多大な鍛錬が必要である。自己鍛錬や克己心は、性格をつくり大きな成果をあげるための基本的な要素である。
重要な仕事にとりかかり、完全にやりとげるまで頑張るかどうかで、あなたの性格や意志力、決意のほどがわかる。
とても大変そうですね。
『成功ハックス』では、「継続のコツは“ちゃんとやらない”」ということで、ゆるく長く続く方法をご紹介しています(p.203)。
まとめ
誤解のないように補足をしますが、そもそも本書は『成功ハックス』とはアプローチが違う本ですから、いちいち細かいことまで指図されるのはゴメンだ、という人にはサッと読めて役に立つ一冊だと思っています(その点、『成功ハックス』は“くどい”です)。
ただ、「それだけじゃわからない!」という人には、やや物足りないかもしれない、と感じました。
とはいえ、紹介されている21の原則は、あなた自身の「仕事システム」を改善するうえで役に立つチェックリストになりますから、「当たり前だな」と思っている人であっても、一通り読んでおいて損はないはずです。
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毛色は違いますが、同じ著者によるプレゼン指南書。こちらは、思い切りプレゼン(というか講演会)に振り切っており、同じ著者かと思うほどにカラーが違います。でも、その根底にはやはり今回ご紹介した21の原則に通じるものが見て取れます。一言でいえば、熱意を持って取り組める目標の設定と周到な準備です。
▼次にすること:
・本を読みながら「当たり前だな」と思えた個所について「それをやりきるためにはどうすればいいか」を考え、実行に移す。
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