これまでの何回かの連載で、KJ法の基本的な骨子について紹介してきました。
骨子の部分さえ理解できていれば、必ずしもカードを使った方法論にこだわる必要はありません。そもそもKJ法というネーミングにこだわる必要もありません。なるべく自由に連想を拡げて、それを後から構造化していく、というアプローチを取れば「発想法」のエッセンスは十分に活かせます。
たとえば、応用としてマインドマップアプリをKJ法的アプローチで使うようなことも可能です。
今回は、実践編として実際にデジタルマインドマップアプリを使って、アイデアを構造化する流れを紹介してみましょう。
どんなアプリを使っても問題ありませんが、今回はクラウド対応の「MindMeister」を使ってみます。
※http://www.mindmeister.com/
まずは準備
まずは、中心となるテーマをセントラルに記入します。
そして、一つだけブランチを伸ばします。
これで準備完了です。
ひたすら書き出し
後は、ひたすらテーマについて思い付くことを書き出していきます。
普通のマインドマップ的手法では、メインブランチを複数伸ばしていく手法をとりますが、KJ法バージョンでは、そういうことは「後で」考えることにして、ただひたすら思い付くことを書き出していきます。
書き出す要素の重要性、関係性、関連性、上下関係、因果関係などは、一切考えません。ただ、書き出していくだけです。
構造化する
書き出し終えたら、構造化を始めます。全体を眺めてなんとなく近いことを言っている要素をまとめていきます。
この時、どれか一つをメインブランチにする必要がありますが、何をブランチにしても問題ありません。ただ、ひとかたまりに集めることが目的です。
それを最後まで繰り返せば完了です。
全てをまとめ終えたら、それぞれの塊を眺めて「このまとまりが意味しているものはなんだろうか」「一体ここから何が言えるのか」を考えていきます。それが見つかったら、メインブランチの名前をそれに変更します。もともとブランチになっていたものは、子要素として追加しておけば問題ありません。
今回はサンプルなので、この作業は一回で終わりましたが、要素の数が多い場合は、これらのブランチをさらにまとめる作業が必要になるでしょう。
さいごに
デジタルの「後で自由に移動できる」という特性を使うと、以上のようなアプローチが可能です。デジタルマインドマップならでは、と言えるでしょう。
最初の書き出しの部分は、紙ツールを使うこともできます。紙にざっと書き出しておいて、それを後でデジタルツールに入力していく、というやり方です。特に正解と呼べる手法はありませんので、好みでアレンジされるとよいでしょう。
今回紹介した手法は、「何か言いたいことがあるのだけれども、何が言いたいのかがはっきりしていない」という時に効果を発揮します。
要素を書き出して、それを構造化していく内に、少しずつ自分が言いたかったことが見えてきます。これが「後で構造を作ること」のメリットと言えるでしょう。
▼参考文献:
今回紹介した方法は、マインドマップとはほとんど関係ありません。あくまでマインドマップツールを使ってKJ法をやっているだけです。もし、マインドマップそのものに興味をお持ちの方は、上の本を参考にしてください。
▼今週の一冊:
タイトルを見ると、いかにして記憶力をアップさせるか、みたいなテクニック集を想像しますが、実際のところ全然違います。
脳科学の知見による「記憶のしくみ」が中心的なテーマです。もちろん、そのしくみを踏まえた記憶力の上手な使い方という部分にも触れられていますが、単純に仕組みの紹介部分だけでも大いに知的好奇心を刺激されます。
初版が2001年と少しだけ古い本ですが、いまでも十分に面白く読めます。
「記憶ってそもそも何だろうな」という疑問をお持ちの方が、理解を進める上で有用な一冊だと思います。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。
PDF: 226ページ