以下の10選を、すべて試す必要は全くありません。これは私自身がとりあげた中でも、有効程度の高い「心理ハック」集だとおもいますが、要不要、効果的かそうでないか、個人差があって当然です。「使えそう」なものを1つでも選び、お試しいただければと思います。
即効性のある心理ハック10選
1.悪癖を絶つ―「負の強化」を応用して
2.「やりたいこと」に取りかかる―「不満の解消」を「夢」にしない
3.大事なところを記憶する―マーカーしない
4.今日の仕事を気持ちよくこなす―過去の自分を参考に
5.目標を達成する―衝動に負けずに
6.やる気の消耗を防ぐ―見通しをはっきりする
7.寝てスッキリする―ストレス解消の睡眠術
8.しっかりと記憶する―記憶のチェックリストを使う
9.早めに取りかかる―話題にする
10.多すぎる仕事を削る―「明日」必ずさばく
1.「負の強化」を応用して悪癖を絶つ
何か、やめたいことがある時に使えるハックです。禁煙やダイエットなど、何かをやめること自体が目的になることは多いものの、それが容易くないのは周知の事実。心理的には「負の強化」が有効手段だと考えられます。
たとえばたばこを吸う度に、何か一つほんのちょっとした面倒なことを一緒にする習慣をつけておくのです。そうしておけば、いつか禁煙を成し遂げたいと思ったとき、たばこを吸わなければ面倒ごとも一緒に「避けられる」という感覚を持つことができます。
その快感が禁煙の後押しをしてくれるでしょう。
いつまでもデブと思うなよ (新潮新書 227) 岡田斗司夫 新潮社 2007-08-16 by G-Tools |
2.「不満の解消」を「夢」にしない
「いつかやりたい」ことが膨大に貯まって、ただでさえ忙しいのに、全く手のつけられないリストと化す。そうなる原因のひとつが、「したいこと」の中に、「やりたくないことをやめること」が混ざってしまうからです。「夢」と「不満解消」はイコールではありません。
「いつかやりたいことリスト」に「今だからやりたいこと」を入れない
「時間のできたときにやりたいこと」のリストも同様で、実際に時間ができたときにリストを見ても、なぜかその時にはどれにも手をつけたくなかったりするから、不思議です。
こういうことになる理由として、一番考えられるのが、「いつかやりたいこと」の中に、「不満を解消するための努力や勉強」が入ってしまっていることです。
3.覚えたい箇所にはマーカーしない
試験となると、マーカーや赤ペンが異常に活躍する。しかし、赤ペンを引けばそれで覚えたということには、全くなりません。記憶とは、脳に緊張を施すことです。安心しきってしまうことは、記憶の妨げとなるのです。
そして、ツァイガルニクは、目標が達成されれば緊張(生理的不快感)が解消されるならば、目標が達成されないままの方が、目標をよく覚えておけるに違いないと考え、それをそのまま課題についても一般化しました。完了していない行動は、完了した行動よりも、記憶によく残り、記憶の再生成績がよいのではないかと、仮定したのです。
4.過去の自分をもっと参考にする
業務にはルーチン的作業がつきものです。ルーチン的な作業を繰り返しているのに、昨日と今日が全然違うということは、まずありません。今日のスケジュールが、昨日のコピーでは良くないかもしれません。しかし、未来の計画を組むのに、自分の過去ほど参考になるものはないでしょう。
他にもこの「実績カーボン」による予定表には様々なメリットがあります。
・前には間違いなくこの時間で出来た仕事なので、やってやれない予定ではないはずという見通しが立つ
・前には間違いなくこの時間で出来た仕事なので、あまりこれ以上の時間をかけたくはないという、過去の自分との競争意欲がわく
5.衝動に負けずに目標を達成する
ちょっとしたことです。
しかしそのちょっとしたことが、すべてを台無しにしてしまうことがよくあります。「間食はしない」という遠大な目標が、目の前のひとかけらのチョコレートに、台無しにされてしまいます。それならば、チョコレートは満腹のうちに、徹底して隠すことです。
こうした現象が起こるのは、生物は衝動の呈示が至近に迫ると、衝動的行動をとりやすくなるからだと、考えられます。ハトでも人でも同じです。
会社にいる間は、焼き芋を食べたりせずに、まっすぐ家に帰って食事をとろうと考える人でも、焼き芋屋の前を通ると“選好逆転”が生じてしまうということです。
6.やる気の消耗を防ぐ
私はここで、自著の紹介はなるべくしたくないのですが、「やる気を消耗しない」方法についてフォーカスを当てた本が見あたらないので、紹介させていただくことにします。以下の方法はすべてテクニカルなものですが、とにかく「自分の作業がムダになった」体験をとことん避ければ、やる気が枯渇することがなくなります。
・仕事を可能な限り「文書」で受ける
・受けた仕事に取りかかってから、口頭でやりとりする
・仕事を完結させる前に、修正点を念押しする
・自分の仕事を完結させても、実は後で継ぐことができるようになっている要するに、「自分のやってしまったことが、完全に無駄になってしまった」という結果になるのを、極力避けていたのです。
一瞬で「やる気」がでる脳のつくり方 佐々木 正悟 ソーテック社 2007-09-15 by G-Tools |
7.ストレス解消の睡眠術
これは自分で実践しました。効果は感じられます。
なお、黒板消しを使って消していくというやり方の他に、紙に書いてそれを燃やし尽くすイメージを持つ、という方法を教えてくれた方もいました。こちらも効果がありそうです。
そんな中、レイがあまりにも忙しくなったために、ほとんど睡眠時間がとれないようになってしまって、その対策として登場したのが、独自に開発したリラクゼーション睡眠術です。ここだけは、急に具体的な「睡眠ハック」が記述されていて、大変注意を引かれました。
具体的にはベッドに入る直前に、時間をかけて頭痛のタネや考え事やネガティブな思い出を「消していく」のです。レイ自身の表現によると、黒板に書いてある文字を1つずつゆっくりと消し去るように、消していくのです。このようにして「頭の中をすっかり空にしてから」眠りにつくのでした。そうすれば3時間程度の睡眠でも、質がよいので十分に疲れがとれると。
成功はゴミ箱の中に―レイ・クロック自伝 世界一、億万長者を生んだ男-マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS) レイ A.クロック ロバート・アンダーソン 野崎 稚恵 プレジデント社 2007-01 by G-Tools |
8.しっかりと記憶するためのチェックリスト
「記憶ハック」は人気があります。書店にもそうした書籍が多く見られます。「記憶を強くしたい」とは現代人にとって、普遍的な欲求なのでしょう。色々な方法が提唱されています。私は少なくとも以下の5つの自問が、効果ありと見ています。
1.覚える努力をした後に、よく寝ているか?
2.覚える努力をしている時に、ドキドキしているか?
3.覚える努力をする時間が、長すぎないか?
4.覚える努力をした後に、復習しているか?
5.思い出すときに、リラックスしているか?
記憶と情動の脳科学 (ブルーバックス) L.J. マッガウ 久保田 競 大石 高生 講談社 2006-04-21 by G-Tools |
9.「早く取りかかる」ために「話題にする」
これは逆に考えてみると、よく分かります。プロジェクトにせよ宿題にせよ、期限にまず間に合わないタイプとはどんな人か?それは、自分の秘密の奥底に、課題を隠し持ってしまう人です。
β版を提出する方法といい、β版をさらに小分けにして、まず押さえるべきポイントを確認する方法といい、これらはすなわちコミュニケーションを密に取ることを意味します。もっと言えば、とにかく口に出し、話題にすることでしょう。
締め切りが遠いタスクに手をつけるには、そのタスクを話題に上らせることが効果を発揮するのです。話題に上れば、意識の真ん中に入ってきて、タスクのリアリティが感じられるようになります。そうすればタスクへの漠然とした不安ではなく、モチベーションが温められるでしょう。
10.「明日」必ず仕事をさばく
今日の明日なら、覚えているだろうと思っては、絶対にダメです。今日と明日の間には、「睡眠」という心理作業が入るので、脳はいったん記憶内容をリセットしてしまうのです。面倒でも、明日やるべきことは明日必ずもう一度、目に触れるように仕組んでおくことで、未来の時間を有効活用できるようになります。
これを最も巧みに実現してくれるのは、「リマインダー」です。「しかるべき時」にやるべきことを先送りするかわり、その時が来たら、無意識のうちに先送りしたものが目に触れるようにしておけば、非常にスムーズに仕事や生活が回ります。