前回の続き。
仕事に限らず、何ごとも計画を立てたり準備を進めたりという「前段階」は楽しいものです。なぜなら──少なくとも目の前の「仕事」に前向きな関心を持っている限りは──計画や準備というのは「やっている気分」が味わえるからです。それでいて、“汗”はかきませんからますますうっとりできます。ある種の陶酔感を覚えるわけです。
言うまでもなく、この陶酔感を打ち破らない限り成果を手にすることはできません。つまり、取りかからなければ始まらないわけです。
ということで、取りかかるためのコツをこれまでのシゴタノ!のエントリーから厳選し、4回に分けてお送りします
第2回の今回は「困難を前にひるんでしまう場合」にフォーカスします。
対策:とりあえずのレベルで出す
まだ余裕のあるうちに“つまみ食い”
鬼門である「取っ掛かり」をクリアする上では「やらなくては」という追っ手が迫ってくる前に、先行スタートを切れた方が“レース”を有利に運ぶことができます。
まだ余裕があるうちに「どれどれ」という感じで仕事を“つまみ食い”してみることで“下見”ができます。局地戦において、敵地に攻め込む前に、
1.どこが切り崩しやすいかを探る(=取っ掛かりの糸口を探る)
2.逃走ルートを確保する(=うまくいかなかった時の妥協点を見極めておく)といった偵察活動になぞらえることができそうです。
早く取りかかっても、ギリギリになってようやく腰を上げても、期限は変わりません。となると、早く“離陸”を始めればそれだけラクに上昇していくことができるはずです。つまり、こう配をなだらかにできるわけです。
・・・それができれば苦労しない、という声が聞こえてきそうですね。早く手をつければそれだけラクができるのは分かっていても、それ以上に何もしない方が断然ラクですから。ちなみに、ここで言うところの「ラク」とは、努力しなくても済むのではなく、同じ努力がラクになるという意味です。昨日の「情熱大陸」で勝間さんも同じようなことをおっしゃっていました。
» 勝間和代さん登場の情熱大陸 | ワークスタイル | 世界を巡るFool on the web | あすなろBLOG
楽に努力をする方法を説明するのであって、努力をせずに楽をする方法ではない
では、どうすればいいか?
始めて初めて分かること
最近、ふとしたきっかけで『インターネット的』という本を読み始めました。この本の初版刊行は2001年7月27日と、ちょうど5年前なのですが、内容はいささかも古さを感じさせない内容で「ふむふむ」と読み進めています。
この本の中に以下のような一節があります。
考えたこと、やってみたいことを惜しみなく出し続ける。枯渇するのではないかとか、後でもっといい使い道があるとかを考えずに、出して出して出し尽くして枯れたらそれでしかたがない、というくらいの気持ちがないと、日刊で曲がりなりにも「新聞」を出すことなどできません。おそろしいけれど、なかなか楽しいことでもありました。
ここで言う「新聞」とは「ほぼ日刊イトイ新聞」のことを指しているのですが、(著者の)糸井重里さんは、その後に以下のようなことを書かれています。
さて、インターネットによって、表現になる前の思いがやりとりしやすくなった。論文として、企画書として完成してなくても、可能性に満ちた思いをアドリブ的に伝えることができるようになったということです。完成を待っているうちに、世の中が進んでしまって、そのアイデアが必要なくなってしまうことも多くあるでしょう。
アイデアやヒントがまだ幼いうちに、他者に向けて何とか出してみる。そしてたくさんの相手が、「未完成だけどポテンシャルを感じる」と言ってくれたらしめたものです。自分ひとりじゃできないことでも、その受け手の力に手助けされて、素晴らしい現実を生み出せるかもしれないのですから。
孫引きになってしまっていますが、このエントリーを書いてから2年近くたった今でもまだ古さは感じないですね。糸井さんのおっしゃることをまとめれば、次の3つになるでしょう。
1.つべこべ言わずにやってみよう(考えるだけで終わるな)
2.未完成でも出してみよう(完成させようとするな)
3.受け手の力に期待しよう(一人で抱え込むな)
それでも最初の敷居が乗り越えられないというなら、僕自身もよくお世話になっているこの方法。
仕事術の本に片っ端から目を通す
そこで最近思っているのが、可もなく不可もないパターンをたくさん持つのが良いのではないか、ということです。例えば、仕事が夜中に込んでしまい、このままでは朝早く起きるのが難しくなる、という状況では
1.その場ですぐに寝て、翌朝はいつもより早く起きて仕事の続きをする
2.できるところまでやり切ってしまい、翌朝はいつもと同じ時間に起きて昼に仮眠を取る
3.できるところまでやり切ってしまい、翌朝はいつもより遅く起きるというパターンのいずれかを採用するわけです。その時のコンディションにも左右されるとは思いますが、だからこそコンディションに応じた最適なパターンを選ぶことができれば、すなわち有効な選択肢を豊富に持つことができれば、現実に起こる様々な状況に対する対応能力がアップするでしょう。
例えば、英語でストレスなく自分の気持ちを表現しようとすれば、それなりの語彙数が必要です。馴染み深い日本語について考えてみれば、我々は相当数の言葉を知っているはずです。中には知っているだけで自分では使いこなせない言葉もあるでしょう。そういう言葉であっても、繰り返し目にしたり耳にしたりするうちに次第に自分の中に取り込めるようになります。表現を助けるようになるのです。
同様に、たくさんのパターンを持っていれば状況に応じて適切なアクションを引き出すことができるようになるはずです。
語学の学習においては、辞書を読むことが語彙力向上の最短距離でしょう。なぜなら辞書は網羅性が高いからです。普通の本を読んでいては出会えないような言葉にまんべんなく出会えます。そういう意味では、中学生向けなどの薄い辞書の方がいいかもしれません。
仕事においては、仕事術の本が辞書に当たります。読むというより、片っ端から目を通して手当たり次第にやってみることです。通販のカタログはめくっているうちに物欲が刺激されますが、仕事術の本もパラパラめくっているうちに、そこで紹介されている方法を試したくなってきます。
そうなればしめたもの。そのための“カタログ”をいくつかご紹介します。
手前味噌ですが、個人的には堀さんの「7つの論理と10の技術」は読み応えがありますし、すぐに実践できる方法論が数多く紹介されていますので、理解しようとするのではなく、実践するために目を通すと良いでしょう。
小山さんや原尻さんのこれまでの著作を読んでいる方であれば既視感ありまくり、かと思いますが、やる気の出ないときにパラパラめくって目についた「ハック」を実践してみると良いでしょう。既視感はあっても既“使”感のあるハックは本当に少ないはずですから。
この本の良さは、本当の意味でのビジネス・パーソンに向けて書かれているところ。仕事術の本でベストセラーになっているものの多くは“ビジネス・アスリート”向けの内容であり、ビジネス・パーソンにとっては「すごいなー」だけで終わってしまうことが少なくありませんが、『ちょいデキ!』なら「いっちょうやってみるか!」という気にさせてくれます。
まとめ
今回はシンプルに、以下の3ヵ条を繰り返して締めくくりたいと思います。
1.つべこべ言わずにやってみよう(考えるだけで終わるな)
2.未完成でも出してみよう(完成させようとするな)
3.受け手の力に期待しよう(一人で抱え込むな)