1.覚える努力をした後に、よく寝ているか?
2.覚える努力をしている時に、ドキドキしているか?
3.覚える努力をする時間が、長すぎないか?
4.覚える努力をした後に、復習しているか?
5.思い出すときに、リラックスしているか?
参考図書『記憶と情動の脳科学』(ジェームズ・L・マッガウ著(大石高生・久保田競監訳)
記憶と情動の脳科学 (ブルーバックス) L.J. マッガウ 久保田 競 大石 高生 講談社 2006-04-21 by G-Tools |
記憶力を鍛えるというテーマは、永遠のテーマといった趣があり、脳科学でも期待の高いこともあって盛んに研究されていますが、盛んすぎるために知見が多く出すぎていて、何を信じていいのか分かりかねるところがあります。
私が基本的に信頼している「5原則」は、おおむね上述の通りです。これらは、それなりに多くの研究者によって支持されている原則であり、その理由も一貫していて、経験にも合致します。というところで一つ一つ見ていきましょう。
1.覚える努力をした後に、よく寝ているか?
寝なければいけません。寝ることが記憶定着度を高めるという研究報告は意外に古く、1925年の、ジェンキンズという心理学者の研究にまでさかのぼることができます。
1925年当時ではまだ解明できていませんでしたが、現在では「夢を見ること」が記憶定着に一役買っていると、いくつかの睡眠研究によって報告されています。なぜ、そしてどのように、という仮説についてはまだ議論がまとまっていません。しかし、寝なければ記憶力が低下するというのは、ほとんどの人に当てはまります。
2.覚える努力をしている時にドキドキしているか?
ドキドキするということは、情緒的に興奮しているということです。夢中になって、ドキドキしながら読んだ本のことは、よく覚えているものです。
ここでコーヒーなど、ドキドキを誘発する物質を活用するという方法につながってきます。おそらくは、つり橋で本を読めば、その時の内容をよく覚えています。また、劇的な物語にしてみると、記憶への定着度は高まるという研究結果もあります。
3.覚える努力をする時間が、長すぎないか?
たくさんのことを一度に覚えようとすると、後から覚えた内容のせいで、前に覚えたことの記憶定着度が下がってしまいます。このような効果を逆行抑制と呼んだりします。
名刺交換の場などで、次々に人と会っていくと、一番最後の人しか覚えていなかったりすることがありませんか?これなどは典型的です。一度にたくさんのことを覚えようとしても、記憶定着には量的限界があるのです。
4.覚える努力をした後に、復習しているか?
復習は記憶定着のために、睡眠に並んで大事です。このことを誰よりもはっきり打ち出したのは、忘却曲線で有名なエビングハウスです。
復習を全くしないと、記憶定着レベルは悲惨なほど低下してしまいますが、1度復習するだけで、記憶の成績は劇的に上昇し、3度復習すると、80%以上の内容を想起できます。復習は予習よりはるかに楽なので、本でもスポーツでも、同じ事を再度、再再度と経験するようにしたいものです。
5.思い出すときに、リラックスしているか?
記憶というとどうしても、「どうやって覚えるか?」ばかりに目がいきがちですが、「どうやって思い出すか」は同じくらいに重要なことです。
思い出す方略もいくつかありますが、何よりリラックスすることが大切です。人前に立っていざ話そうとすると、話す内容をすっかり忘れてしまうことがよくあります。緊張で頭が真っ白になるとはよく言いますが、過度に緊張すると記憶想起(思い出すこと)ができなくなるのです。
以上の5原則は、いたってありきたりなものばかりですが、これをやらずにいる方はたくさん見受けられますし、かく言う私自身、最も記憶力を要求された学生時代、このほとんどが実行できていませんでした。
この5原則を必ず意識するようにすれば、記憶定着度は確実に向上するはずです。