昨日の記事で大橋さんが紹介した“時間セレブ”たちの“時間リッチ術”には、「自分のための時間を予め確保しておく」という共通点が見られます。
・「いつやるか」を決めて、あらかじめ時間を確保(渡邉社長)
・「就寝前10分の日記書き」で頭をスッキリさせて熟睡(渡邉社長)
・忙しくても就寝前30分は好きなことでリラックス(茂木氏)
・週2回のトレーニングはどんなに忙しくても続ける(佐藤氏)
・「空いたらやる」ではなく「やる時間を空けておく」(佐藤氏)
・2〜3週間に1度、「癒しの日曜日」を設ける(大前氏)
「1日30分」にしても、「どうにかして時間を自分のために使いたい」と切望している人は、誰でも同じようなことを考えるはずです。
問題は、時間を確保することにあるのではなく、確保した時間を例外なく自分のために活用できるかどうかだと思います。
たとえば「1日30分英会話の勉強をする」と決めて、仕事が終わってからの時間を自分のために確保しておいても、自分との約束というものはあっさりと破られます。疲れているから、一日くらい…破られる理由は様々でしょう。
“時間セレブ”たちは意志力が強い、ということなのかもしれません。でもここでさらに考えてみます。
心理学に、“選好逆転”と呼ばれる現象があります。
ハトに対して、28秒待たせてから2秒間だけ餌がもらえる選択と、32秒待たせてから6秒間だけ餌がもらえる選択を選ばせますと、ハトは後者を選びます。
これを人間に置き換えますと、いわゆる“意志力のある”選択行動ということになります。冬の帰り道に焼き芋を買うのを我慢して、家に着いてからちゃんとした夕飯にありつくまで我慢するような行動です。
ところが、同じハトでも、2秒待って2秒だけエサをもらえる選択と、6秒待って6秒エサをもらえる選択を選ばせると、前者を好むのです。つまりこの場合には、焼き芋を買ってしまう行動をとるということになります。
28秒と32秒の差は4秒。2秒と6秒の差も4秒。4秒長く待つことで、4秒分多くの餌がもらえる点も同じ。違っているのは最初の例では、どちらにせよ長く待つという点だけです。
こうした現象が起こるのは、生物は衝動の呈示が至近に迫ると、衝動的行動をとりやすくなるからだと、考えられます。ハトでも人でも同じです。
会社にいる間は、焼き芋を食べたりせずに、まっすぐ家に帰って食事をとろうと考える人でも、焼き芋屋の前を通ると“選好逆転”が生じてしまうということです。
時間の使い方でもこれを避けたいと思うなら、衝動的に“楽になれる”誘惑を、なるべく自分から隠しておくことです。それを左右するのは“意志力”ではなくむしろ“工夫力”と言えるでしょう。ダイエット中の人はお菓子を目につかないところに隠すのが望ましく、禁煙中はたばこを目にしない方がいいのと同じです。
さらに、衝動的になりやすくなるのは、生理的な欲求の圧力が高まっているせいと考えられます。焼き芋屋の前を通ってつい手が伸びてしまうのは、寒くてお腹が空いているからです。
同じように、あまりに仕事でへばってしまっていれば、勉強よりも楽になれる方へ、流されやすくなるはずです。衝動に向かう圧力が、それだけ高まるからです。
以下をまとめると次のようになります。
自分の時間を使うコツ:
ストレスを減らし、誘惑を自分に呈示しない