※当サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

『書くための名前のない技術 case3 千葉雅也さん』を読んで変えたこと

倉下忠憲刺激的な一冊です。

本書にある「書くための名前のない技術」とは、当人が工夫しているのだけども、特別とは思っていない技巧、あるいは特別な注意を向けていない技術のことです。注意を向けられていないのですから、そこに名前がつくことはありません。名付けとは注意を注ぎ込んだ結果として生まれるものだからです。

本シリーズは、そうした「名前のない技術」たちを掘り起こそうというコンセプトを持っているのですが、本作に限っては、すでにめちゃくちゃ注意が向けられています。言い換えれば、技術に対して意識的です。いかにすれば執筆が進むのか、自分にとって執筆はどのような意味を持つ行為なのか。それらが実例とともに雄弁に語られていきます。それが刺激的なのです。

では、一体どのように刺激的なのでしょうか。簡単に言えば、自分のやり方にアレンジを加えたくなるのです。たとえば、私は本書を読んで、WorkFlowyの使い方を大きく変えました。

WorkFlowyの使い方を大きく変えてみた

本書に提示されている実例を参考にしつつ、自分なりにアレンジした構造です。

これでずいぶんと使い勝手があがりました。いや、もう少し言えば、それぞれの項目が持つ意義みたいなものが、自分の中で明らかになりました。間違いなくそれは、ある種の相対感がもたらすものでしょう。「あの人は、ああ使っているけど、自分だったらこう使うな」という感覚です。

また、Scrivenerの「ラベル」の使い方も変えました。というか、これまでラベル機能はいっさい使っていなかったのですが、本書を読んで使い始めることにしたのです。

これまでは進捗管理は、ファイルのアイコンを変更することで実施していました。旗の色に(自分なりの)意味を持たせて、進行状況が変化するアイコンを変えていたのです。

しかし、ラベル機能を使うことで、記号と意味内容が合致することになります。アイコンの場合は、あくまで自分で決めていただけで、それが何を意味するのかは覚えておく必要があったのですが、ラベルにはそれぞれ名前を与えられるので、それがしっくり固まるわけです。名前がつけられる、というのは、とても大切なことです。

さいごに

「名前のない技術」シリーズは、回を重ねることに面白くなっています。それは別に、1よりも2が、2よりも3が面白いということではなく、こうした技術論が複数集まることによって見えてくる多様性と共通性がある、ということです。これは一人の著者の話だけでは絶対に浮かび上がってこない要素でしょう。

私たち知的生産者は、最終的には「自分のやり方」にたどり着くことになります。しかし、それまでの道のりにおいて「他人のやり方」に触れることはとてもよい勉強になります。本シリーズは、まさにそのための存在だと言えるでしょう。



▼編集後記:
倉下忠憲



かなり調子が良くなってきて、原稿もじわじわ進めておりますし、ブログの更新も復活しつつあります。様子を見ながらではありますが、徐々にもとのペースを取り戻していきたいと思います。とりあえず、本を書き上げたいですね。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中