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タスクシュート効果その2:「環境」を変える



大橋悦夫エンジニアのための時間活用術、第14回です。

前回は、ツールの効用の1つ目として、「見え方」を変えることができる点について、次の3つ観点からご紹介しました。

  • 1.現実は表現されたもの
  • 2.「レンズ」を付け替える
  • 3.ツールは「パワードスーツ」


今回は、ツールの効用の2つめとして環境を変える役割に注目します。

環境ドリブンと自分ドリブン

人は身を置く環境によってその行動に影響を受けています。静かな図書館であれば、おのずと集中して勉強をする気になりますし、自宅に帰り着けば放っておいてもリラックスするでしょう。

もちろん、例外もあります。静かすぎる図書館よりも、ある程度騒がしいカフェのほうが仕事がはかどるという人もいるでしょうし、神経が高ぶっていれば自宅でも緊張が解けないこともあるかもしれません。

それでも、たいていは環境を変えることで気分が改まり、行動にも変化がおよぶものです。

このように、環境の力を借りて行動を変えようとするアプローチを「環境ドリブン」と呼ぶことにします(ドリブンとは「駆動」の意味で、ここでは環境の変化がきっかけとなって行動に何らかの変化が起こる、というニュアンスです)。

一方、環境に関係なく、自らの意志と努力によって行動を変えるアプローチもあります。便宜上、こちらを「自分ドリブン」と呼ぶことにします。

この2つの「ドリブン」を比べた場合、いうまでもなく環境ドリブンのほうが自分ドリブンよりも楽に行動を起こすことができるでしょう。

例えば、受験生にとっての図書館や、ビジネスパーソンにとってのカフェは、それぞれ自宅という環境よりも何かに集中して取り組むうえでは適した環境といえます。

僕の知人に資格試験の勉強を会社帰りのカフェで済ませている人がいます。わざわざ寄り道をする理由は、自宅では勉強がはかどらないからだそうです。帰り着くなりどっと疲れが出て、勉強どころではなくなってしまうからでしょう。

彼の場合は、カフェという環境を利用している、すなわち環境ドリブンを使って勉強という行動を補強していることになります。


ツール選びのポイント

前回、「ツールを選ぶ基準」として、次の2つを挙げました。

  • 「見え方」を変えてくれるか?(同じ仕事でも違って見える、のが理想)
  • そのツールを使うことで「気持ち」が変わるか?(そのツールを使う仕事をしたくなる、のが理想)

PCのキーボードにこだわりを持っている人は少なくないでしょう。実際問題として、キーボードが変わると仕事の能率が落ちるということはあります。

これは、ペンについても同様でしょう。作業内容によって、ペンを変えるという人もいます。彼は、細かい文字を書き込む際には0.5ミリのペン、一人で紙に向かってブレストをする時には1ミリのペンをそれぞれ使うといいます。

「そのキーボードのタイプ音が心地よいから」、あるいは「そのペンの書き味に惚れ込んでいるから」という理由で、これに引きずられる形で仕事のやる気も引き出されているということはあるでしょう。

そういう意味では、毎日使う道具(キーボード、マウス、ペン、メモ帳など)については、それぞれ思わず使いたくなるようなお気に入りのものを揃えておくことは仕事への取りかかりの敷居を下げる効果があるはずです。

キーボードにしてもペンにしても、ツールでありながらも、それは使い手にとっては1つの環境といえます。つまり、ツールによる環境ドリブンです。

先ほど、作業内容に応じてペン(の太さ)を変える例がありましたが、これは作業内容にふさわしいツールを選んでいるということのほかに、例えば1ミリのペンを手に持つと、おのずとブレストをしたくなるという、いわゆる「条件付け」の効用も得られるでしょう。

「条件付け」については以下の記事をご一読ください。


時間の環境ドリブン

環境、ツールとならんで時間にも環境ドリブンがあります。

例えば、朝になると決まってやりたくなる作業、ランチ前にふさわしい作業、退社間際にならないとやる気にならない作業など、時間帯という環境もまた行動に影響を与えていることに気づきます。

あらかじめ分かっている限り、時間帯と作業内容の組み合わせを自分にとってしっくりくるものにしておくことで、環境ドリブンの後押しを受けることができます。

さらに、毎日決まった時間に決まったアプリケーションが立ち上がるように「タスクスケジューラ」を設定しておけば、なお良いでしょう。

あるいは、一日を複数の区画(セクション)に分けることで、各セクションごとに気持ちを区切ることができるようになります。

このあたりについては以下の記事で解説しています。

僕は5つのイベントの開始時刻を以下のように決めていて、これを守るようにしています。

  • 朝食 08:00~
  • 昼食 12:00~
  • 運動 15:00~
  • 夕食 17:00~
  • 入浴 21:00~

最初はなかなかこの通りにいきませんでしたが、きちんと守ることで、毎日同じ長さの区画が確保できるので、計画的な行動がとれるようになります。

計画的な行動がとれれば、望ましい結果が得られるので、これがポジティブなフィードバックとなって「明日も守ろう」という気持ちが生まれ、守れるようになります。

これは時間の環境ドリブンといえるでしょう。

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