エンジニアのための時間活用術、第2回です。テーマは「時間割」について。
よく、時間割を作るとそれに縛られるのでイヤだ、という声を耳にします。でも、むしろ時間割を決めて、これに沿って過ごしたほうが快適だと感じています。何よりも「今これをやっているのが最も無駄のないことなのだ」という確信が持てるようになります。
「縛られる」というのは言葉がネガティブですが、こと仕事においてはある程度は縛られていたほうが効率は上がる、という実感があります。
ただし、その縛りが自分の意志から発しているものであることが前提です。そのためにも日々の記録とレビューによるチューニングが欠かせません。
このあたりのことについて、大学時代から遡って書いています。
時間割があることで迷ったり考えたりする時間を最小化できる
僕が最初に時間管理を意識しはじめたのは大学2年生の冬でした。当時の時間の使い方は、次の4つのカテゴリーに分けられます。
- 1.大学の授業出席
- 2.体育会の部活動
- 3.塾講師のアルバイト
- 4.ファーストフード店でのアルバイト
まず、授業の時間割が決まり、
続いて、部活動の時間が決まり、
残ったところにアルバイトのシフトを入れていく、
という段取りでスケジュールを埋めていきます。
外国語学部英語学科という、出席が大前提の授業が多い大学生活だったため──学部や学科に関係なく本来はそれが当然なのですが──、卒業するためには授業の時間割を守ることは最優先事項でした。
そうなると、余ったコマで他のカテゴリーに属するタスクをやりくりすることになります。
授業の次に優先したのは部活動です。活動をともにするメンバーがおり、揃わなければ成り立たないからです。とは言え、活動にはお金が必要ですからアルバイトを通して資金を切らさないようにする必要もあります。
そこで、最後にわずかに残ったコマにアルバイトのシフトを差し込んでいくわけです。
今、手元に当時使っていた手帳があるのですが、そこには時間割が貼り付けてあります。6時から24時までを3時間ごとにコマ割りし、大学の時間割はもちろん、部活の予定、アルバイトの予定、勉強の予定なども細かく刻んで割り付けられています。
▼学生時代の時間割 オレンジ:授業の予習復習、水色:アルバイト、赤:授業、緑:部活動
今の自分が見ても、非常にハードでタイトなスケジュールに思えますが、当時の日記を読んでみると、この時間割があったおかげで、
- 「次は何をすればいいか?」
- 「来週のバイトはどれぐらい入れるか?」
- 「大学の試験勉強の準備は十分か?」
といった迷ったり考えたりする時間を最小化することができていたようです。
本当の意味で「流れ」に身を任せられる
以上の考え方は、今の仕事でも活かされています。
まず、時間割を作ることのメリットは、コマを埋めていくことによって必然的に、
- 「今の自分にはこれしか時間がない」
という厳然たる事実を自分に受け入れさせることができる点にあります。これは、ラッシュ時の満員電車と新幹線の指定席を対比すればわかりやすいでしょう。
満員電車なら、たとえ満員であろうとがんばればまだ乗る余地はあるだろう、と多くの人が思うでしょう。実際に果敢に乗り込む人も少なくないでしょう。
でも、そうやって乗り込めたとしてもぎゅうぎゅう詰めの車内は決して快適とは言えません。ストレスもたまりそうです。
一方、新幹線の指定席の場合はどうでしょう。満員電車に比べれば密度は低く、一見無駄が多いように思えます。でも、その分だけ余裕が生まれますから快適な乗り心地を実現できるはずです。
言うまでもなく、満員電車は時間割のない過ごし方、新幹線の指定席は時間割のある過ごし方です。時間割を作ることによって、自分にとって快適な生活を送るための「時間密度」の基準が得られるわけです。
次に、時間割という“水路”を作ることによって、水の流れ、すなわち予定の流れをスムーズにすることもできます。避けるべきは、水路を作りながら同時に水を流し始めてしまうことです。当然、水路からあふれる水も出てきますから、無駄になってしまいます。
時間割があることによって、「今この瞬間は何をしていれば良いか」が決まるわけですから、成分の大半が水である人間にとっても非常に楽なはずです。文字通り「流れに身を任せられる」わけです。
まとめ
時間割の効用:
- 「今の自分にはこれしか時間がない」という事実を受け入れやすくなる
- 自分にとって快適な生活を送るための「時間密度」の基準が得られる
- 「今この瞬間は何をしていれば良いか」について迷いが少なくなる
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補記
時間割という言葉を社会人になってから社会人の文脈で初めて目にしたのは、本田直之さんの『レバレッジ時間術』だったと思います。
本書については2本の記事を書いています。
以下の2本目の記事の中で時間割について取り上げています。
毎日繰り返す習慣(起床や入浴や食事)は、あらかじめ“水路”を作っておき、そこに毎日水を流し込むだけで、一連の習慣がすべて漏れも滞りもなく実行されるようにする、言い換えれば何も考えなくてもできるようにしてしまうのがよい、というわけです。