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今年こそはノウハウ書を書くぞと決意したら



倉下忠憲前回の記事で知的生産目標を設定しようと書きました。


もしかしたら、その目標で「今年こそは、ノウハウ書を書くぞ!」と決意された方もいるかもしれません。

本一冊を書き上げることは、たいへんな苦労を伴う行為ですが、その代償を支払う価値あるが行為でもあります。ぜひとも、その目標を達成していただきたいものです。

出版に至るルートは、出版社に企画案を持ち込む方法もありますし、セルフパブリッシングでやってしまう方法もあります。

また、後者である程度実績を作ってから出版社に持ち込むという迂回ルートもあります。ですので今回は、セルフパブリッシングをベースに、その進め方を考えてみましょう。

テーマ・コンセプト

まずは、テーマ設定です。「ノウハウ書を書こう」と思っている時点で、何かしら「書きたいこと」があるのだと思います。具体的にそれが見えているならば、そのまま進めばOKですが、そうでない場合は掘り下げが必要です。

自分にどんなことが書けるのか、自分はどんなことを書いてきたのか。マインドマップで描き出したり、自分のログを振り返るなどして、書けそうなテーマを見つけ出しましょう。

そうして、テーマが見つかったら、次は切り口です。

たとえば「Evernote」をテーマにする場合でも、

  • 基本的な操作の説明
  • 多くのユーザーの使用事例集
  • 自分の使い方の全紹介
  • マニアックなカスタマイズ例

ような複数の切り口が想定できます。「基本的な操作の説明」であっても、説明文章中心なのか、物語形式なのか、漫画を使うのか、といった多様な切り口がありえます。そのどこを攻めるのかを見極めましょう。

その際、すでに類似の本があるならば、そのルートは回避した方がよいでしょう。自分の方がうまく書けるという強い自信があるなら別ですが、そうでないならば、空き地(ニッチ)を目指す方が、うまくいくでしょう。モチベーションに関しても、「これはまだ誰も言っていないことだから、自分が書くのだ」という方が行動の動機付けは生まれやすいはずです。

逆にテーマを考える場合でも、「自分はこんな本が読みたいのに存在していない」という方向から探っていくこともできます。

どちらにせよ、この段階でおおまかな方向性を決めておきましょう。あくまで「おおまか」というのが一つのポイントです。

目次案作り

ある程度方向性が見えてきたら、その本には何がどのように書かれるのかを考えてみましょう。

300文字くらいでその本の概要をまとめたり、目次案を作ってみたり、なんなら「はじめに」を実際に書き下ろしてもよいです。

この段階でしっくり来ないなら、一度引き返して、テーマ・コンセプトの練り直しに戻る勇気を持ちましょう。自分がどういうことを書きたいのか、あるいは書けるのかが何一つ具体的にならないなら、その先の執筆の見通しはかなり暗いものとなります。それでも進めないわけではありませんが、そうとうな困難の覚悟が必要です。

また、概要や目次案を作っているうちに、微妙にコンセプトが変わってくることもあります。操作説明を中心に展開しようと思っていたのに、書きだしてみたらツールの背景や思想について筆が乗ってきた、というようなことです。

こうした場合でも、やはりテーマやコンセプトに立ち返って再検討してみるのが有効でしょう。

さきほど「おおまか」にがポイントになるといったのも、この点においてです。

最初に決めたことが、そのままスムーズに最後まで進むというのは極めて稀な出来事です。宝くじで、老後十分な蓄えを得られるくらいには稀です。なので、「決めた」ことはいつでも変更し、ときにはひっくり返せるように心づもりしておくことが肝要です。

最初に決めたことを「最初に決めたことだから」という理由だけで邁進するのは、実際のところ背負い込む苦労が増えるだけでなく、できあがる本のクオリティにも良い結果は残さないでしょう。

本の良し悪しを測る基準は多様ですが、少なくとも自分が面白いと思えるという基準はクリアしておきたいものです。

執筆計画

さて、テーマ・コンセプトも決まり、概要と方向性が見えてきたら、あとは執筆を進めるだけです。といっても、この「だけ」が難しいことは今さらいうまでもありません。慎重に進めていく必要があります。

まず時間です。

2019年の目標なので、期間は1年間あります。1年という時間があれば、よほど長い本を書こうとするのでないかぎり、十分な時間があります。あまり焦る必要はありません。

しかし、そのことが執筆を滞らせる原因にもなります。セルフパブリッシングは、外部からの締切がないので、自分を動かす強制力がほとんど発生しないのです。「1年間ある、まだ大丈夫、まだ大丈夫」を繰り返しているうちに、あっという間に時間が過ぎ去ってしまいます。

なので、「一年間で一冊本を書く」という漠然としたものよりはもう少し具体的でタイトな計画(「3月までに初稿を仕上げて、5月に発売する」)を立てておくと良いでしょう。

ちなみに経験が少ないほど、この計画は現実と乖離します(だいたいは進捗を楽観的に捉えすぎるようにズレます)。ですが、そこはセルフパブリッシングです。遅れたら遅れたで、いくらでも後から計画を修正すればよいのです。

「そうやって後から変えるなら、計画なんて必要ないのでは?」

と思われるかもしれませんが、計画がまったくなかったら、もっと遅くなるか、そもそも途中で断念することも十分に起こりえます。最初に目処を付けておき、その目処を実情に合わせて修正していく方が、実際的でしょう。

書き進め方

続いて執筆の進め方です。これにはいくつかのアプローチがあります。

  • 目次案を立て、その通りに非公開で書いていく
  • 目次案を立て、書けるところから非公開で書いていく
  • 目次案を立て、その通りに公開で書いていく
  • 目次案を立て、書けるところから公開で書いていく

ざっくり四象限にしましたが、もちろん他にも細かいアレンジはいくらでもできます。が、大まかな方向としては上記のようなパターンに収まるでしょう。

この中で、一番難しい(≒苦しい)のが「目次案を立て、その通りに公開で書いていく」です。これを成し遂げられる人は、そうとうに頭が良い人なので、その自覚がない方は避けた方が良いでしょう。

それ以外のアプローチには一長一短あります。「目次案を立て、書けるところから非公開で書いていく」は楽なのですが、フィードバックがまったく発生しないので、そのままフェードアウトしてしまう可能性があります。

「目次案を立て、その通りに非公開で書いていく」は、公開に比べると途中で目次案を変更してしまう、という手が使えるので若干楽です。ただし、意欲を持続させる何かは必要でしょう。

一番楽なのが、「目次案を立て、書けるところから公開で書いていく」で、目次案は立てつつも、あたかもそんなものが存在しないかのように自由に書き進め、後からそれを編集して本の形に仕立て直す、というやり方が取れます。ただし、楽な分「絶対に完成する」保証はどこにもありません。その点がネックと言えばネックです。

どのやり方を選ぼうとも、何かしら苦労やデメリットは残ります。こればかりはどうしようもありませんので、自分に適した(自分にとって一番「苦」が小さい)方法を見つけてください。

さいごに

上記で紹介したもの以外に、最初の一ヶ月くらいは徹底的にメモ書きを集めて、そこから本文を立ち上げる、という方法もあります。メモは非公開でも構いませんし、Scrapboxを使って公開していく手もあるでしょう。

その場合、本文は改めて書き下ろす必要がありますが、十分な量のメモ書きがあれば、何もないところから書き下ろすよりもはるかに負担は小さくなります。いきなり本文、というのが不安な方は、助走がわりに「メモ」を育てていくのもよいかと思います。

というわけで今回は、主にノウハウ書寄りのセルフパブリッシングの進め方をまとめてみました。世界が皆さんのノウハウを待ち望んでいるかどうかはわかりませんが、書いてみれば自分の中で得ることも多いものです。もし、意欲があるなら、実際に行動に移してみてください。

▼参考文献:

Kindleでのセルフパブリッシング方法を中心に、個人出版のノウハウを紹介しています。


私が何を考えてセルフパブリッシングを行ってきたのかをデータ付きで紹介しています。


▼今週の一冊:

一見発想法系の話かなとも思うのですが、もちろんそういう話題もあり、それ以外の話題もあるなかなか裾野が広い本です。私たちはどんなものを好んで消費するのか、そしてそれに見合う発想(企画)はいかにして生まれるのか。いくつものインタビューを経ながら著者がまとめてくれています。


▼編集後記:
倉下忠憲
終わったッ! 第3部完! というくらいののりで初稿がだいたいあがりました。まだま〜〜〜〜〜だ作業は残っておりますが、とりあえずは一段落です。ここでさんざん「終わる終わる」詐欺を繰り返してきたので、ようやく決着を付けられた感があります。どう遅くても今年中に発売できそうです。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中