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『ひらめきはカオスから生まれる』

By: Alan LevineCC BY 2.0


ひらめきはカオスから生まれる
ひらめきはカオスから生まれる オリ・ブラフマン ジューダ・ポラック 入山章栄

日経BP社 2014-02-15
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佐々木正悟 この本はかなりの野心作だ。

テーマが自己矛盾的である。セレンディピティを引き起こし、その果実を都合良く手にしようというのだ。

このテーマでは一歩間違うと相当に苛立たしい本ができあがってしまう。「セレンディピティは幸運な偶然だが、私はそれを必然的に引き起こすことができる」という本になってしまう。しゃあしゃあとそうしたことを述べ立てる人はたくさんいる。

偶然は、必然でないから偶然なのだ。意識的に都合良く引き起こせるようなできごとを偶然とは呼ばない。セレンディピティを「自分には」都合良く引き起こせるなどと言うのは「世に魔法は存在しないが私は魔法使いだ」と言うようなものだ。

軍隊にカオスを

冒頭から本書は読ませる。読んで面白いことは保証してくれる。著者は軍隊に連れてこられて、そこで「カオスの効果を試す」という流れにすぐ入る。作り話でないのが不思議だ。

その瞬間、私はこれから進める試みの重さと責任を痛感した。人生のあらゆる機会に、両親や教師からさんざん言われてきたものだ。どんな目標を追求するにせよ、はっきりとした計画をじっくり練りあげ、具体的な手順をしっかり定めておかなければならない、と。私はこれから、陸軍のエリート士官たちを対象に、軍隊の秩序と計画性をわざわざ台無しにするためのプログラムを作成し、実行に移そうとしていたのである。

さんざん言われてきたし、今も言われつつあるか、あるいは自分で言ってしまう。「目標を追求するにせよ、はっきりとした計画をじっくり練りあげ、具体的な手順をしっかり定めておかなければならない。」

本書はこれに異を唱える。セレンディピティを得るためにだ。小さくていいからカオスが必要である。そのためには「余白」が要ると著者は独特の用語を使う。

これは日本語で言えば「遊び」だろう。遊びは自由な活動の場となりうる。それを意識的に作り出せば、その結果「偶然が訪れる」という趣旨だ。

こういう説明だと、当然面白くない。ただ、私たちはうすうすこういったことに感づいている。「幸運を引き起こす」のはムリだが、「幸運が訪れやすい環境整備」はできるのではないかと。

そういうことであるなら、本書で説明すべきは「幸運が訪れやすい環境整備」はどう作ればいいのか、ということになる。本書ではまさにそれを説明している。もちろんこういった本はかなり説得的でなければならない。エピソードを適切に並べて飽きさせない工夫も大事だ。そのへんの工夫が著者は抜群にうまい。テーマに納得するかしないかは理性で判断すべきだが、感情的には納得したい気持ちにさせられる。

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