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意識的にアイデアを見つけ出すための5ステップ


By: Shannon KringenCC BY 2.0

第1ステップ 厄介事(難問)に直面する
第2ステップ 問題を解くためのデータを収集する
第3ステップ 事実を受け入れる
第4ステップ 問題から離れる
第5ステップ 新しい解決策(アイデア)を応用してみる

この5ステップは、いくつかの「発想本」を読みあさったりしているうちに習慣となった、自分なりの「アイデア発想法」です。物を書くという職業柄、アイデアを全く発想できないというのではすまされません。したがって自然と、類書が目にとまります。

エントリの最後に、参考文献リストを掲げますが、主にお世話になったのは、『アイデアのつくり方』(ジェームズ・ヤング著、阪急コミュニケーションズ)と、『「超」発想法』(野口悠紀雄著、講談社)です。

第1ステップ 厄介事(難問)に直面する

発想が必要となるのは、多くの場合、「解決したい問題」を抱えているからです。科学者の場合しばしばそれは、もっとダイレクトに「解きたい難問」であったりします。問題を解くアイデアさえ見つかれば、それがそのまま研究成果となるわけです。

私たちは厄介事、ないしは難問というものを、まず「不都合」と認識します。何かしら、不愉快な事態に直面するわけです。しかしこの段階ではまだ、「問題解決へ向けて、データを収集する」というところまでは行かないでしょう。

問題解決へ向けて、データの収集を始めるのは、厄介事が明確に自分の生活や人生に、影を落としていると気づくからです。あるいは、厄介な問題が容易に解けそうになく、それを解くと想像するだけで興奮したり、ノーベル賞がもらえたりしそうだと思うからです。

たとえば『「超」発想法』の著者である野口悠紀雄さんは、「資料や書類が整理できない」という厄介事に直面していました。初めのうちは、ごく自然に整理整頓に取りかかっていたのでしょうが、どうやってもうまくいかないというパターンに陥り、これは容易に解けそうもない不都合だと認識するに至ります。

このように、「ちょっとやってみてもうまくいきそうにない!これは問題だ!」と強く認識すると、人はアイデア発見の第2ステップに移行します。

第2ステップ 問題を解くためのデータを収集する

データ収集は多くの場合、試行錯誤と失敗体験の繰り返しです。この段階は、無意識に通過されていることも多いのですが、ある種の不快感、閉塞感がつきまとっています。

データ収集のメディアは、自分の体験記憶や記録の他、インターネットでも書籍でもなんでもかまわないわけです。大事なのは、それが事実であること。それも「動かしがたい事実」であること。その意味で、アイデアを発想するためのデータが、自分自身の実体験であることは、多くなります。なぜなら、自分が体験したということは、そのこと自体においてウソはないからです。

たとえば先に挙げた「整理の問題」では、「整理しようと努力しても、うまくいかない」というのが「動かしがたい事実」です。そしてまた、各種「整理本」を読んでも、やはりうまくいかない。私たちは最初、この「動かしがたい事実」を何とかして「動かそう」とがんばります。その努力の中で、ますますデータの真実さ、つまり「動かしがたさ」を認識させられることになるわけです。

科学の発見プロセスにおいて、このステップはちょうど「観察データの収集」に当たるでしょう。とにかく実験をして、データをとる。地味で忍耐力を必要とする作業です。しかし、ここで「動かせない事実」にぶつかればぶつかるほど、後のアイデアの価値が高くなります。

第3ステップ 事実を受け入れる

いわゆる「常識を疑う」といわれているステップは、この段階です。容易なようで、実に難しい段階です。

私自身のお話をします。私は「やる気」をテーマとした本を2冊、上梓させていただいているのですが、ここで受け入れた「動かしがたい事実」が、「やる気は意のままにならない」ということでした。「仕事に取りかかる気がしないときには、どうやっても気持ちは変えられない。先送りして、つまらないことで時間を費やしてしまう」といってもいいでしょう。

この「事実」をすんなり受け入れることが、私にはどうしてもできませんでした。なんとか「意志力」を強くする方法はないかとか、コーヒーの飲み方を変えれば、やる気が出るのではないかとか、いろいろ考えました。「自分のやる気は出ないけど、他の人は出ているのではないか」とも思いました。

ようするに、これほどまでに「やる気が出なくて、先延ばしする人」が多くいて、また自分もたくさんそれをやってきているという「事実」があるのに、それは「動かせる事実」だと、思い込んでいたのです。それは私の「常識の殻」でした。「常識の殻を破ろう」という言葉は、それまでも千回以上は読んでいたと思うのですが、役に立っていなかったのです。

『「超」整理法』の野口悠紀雄さんも、「整理は分類」という思い込みにとらわれていたエピソードを語っています。それが「分類は不可能」という事実を受け入れることができたとき、新しい段階へと移っていったのです。

第4ステップ 問題から離れる

ことさら述べずとも、この段階の重要性は、すでにほとんどの本で説かれています。アイデア発想のために、できることをすべてやったら、そこでテーマや問題のことは忘れてしまうのです。

忘れるということは、なにやら神秘的です。人は怪我のことを忘れているうちに、怪我が治っていたりします。最近読んだ過食症のエッセイマンガでは、過食のことを忘れているうちに、過食症から解放されるのです。(ちょっとトートロジー的ですが。)

無意識とかセレンディピティという言葉が有名ですが、そのカラクリはさておき、大事なことは「忘れる」こと自体にあるのでしょう。意識し続けるのは、うまくないのです。クリスマスのプレゼントは、起き続けている限り、手に入らないもので、イブの夜のことをすっかり忘れて、ハッと目が覚めたとき、枕元に現れているものなのです。

厄介事や難問に行き当たる(第1ステップ)
問題を解くためにデータを集める(第2ステップ)
動かしがたい事実を受け入れる(第3ステップ)

ここまで来たら、問題のことは忘れましょう。すると素晴らしいアイデアがわき出てくることがよくあるようです。

第5ステップ 新しい解決策(アイデア)を応用してみる

このステップは、何らかのアイデアが見つかった後のステップです。

よほど変わった人でない限り、なにかいいアイデアが思いついたと思ったら、それを実践してみたくなるものです。野口悠紀雄さんが「超」整理法を思いついたとき、これを実践せずにはいられなかったでしょう。

はたして現実に適用することは可能なのか?
本当に自分の思いつきはいいアイデアなのか?

それは気になるものです。にもかかわらず、この項目も多くの発想本に記されているところを見ると、アイデアを発想しても、実行に移されずに終わる危険性が、意外に高いようです。

たしかに、ある日素晴らしいアイデアを思いついたと思っても、一夜寝て起きて考え直してみると、たいしたことはなかった、と感じることも少なくありません。しかし、それよりもまずいのは、他人に話して色よい反応を得られないことだと思います。

人は他人の評価というものを気にする動物です。誰か親しい人にせっかくのアイデアを披露しても、大したアイデアではないように言われると、自分の考えが急に色あせてしまいます。けれどもこのことは、本当のところ意味のない判断ですので、とりあえずいい発想があったら現実に試してみることです。それで思ったほどよいアイデアでなかったとしても、それほど失うものは多くないはずです。

試してみて、現実によい変化が訪れれば、素敵なアイデアを発見したということです。

参考資料

アイデアのつくり方 アイデアのつくり方
ジェームス W.ヤング


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「超」発想法 (講談社文庫) 「超」発想法 (講談社文庫)
野口 悠紀雄


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アイデアのヒント アイデアのヒント
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