「なんで最初からこれに気づかなかったんだろう!?」という軽い後悔をすることが時々あります。
いちど気づいてしまえば何のことはないことでも、その最初の気づきに至るまでが難関です。例えば、最初はさっぱり聴き取れなかった英語がある日突然聴き取れるようになったり、あるいは若い女性のように見えていた絵画が実は老婆にも見えてきたり。
仕事でも、ちょこっと視点をずらしたり、かがんでみたり、ナナメから覗いてみたりすることでまったく違った光景が見えてくることがあります。
このあたりは「アハ体験」と呼ばれる、人が一瞬のうちに気づきを得るプロセスの話とつながってきます。
人間の脳の素晴らしい特徴の一つは、ふとしたきっかけで新しいことに気付くことができることである。
ニュートンが、リンゴが木から落ちるのを見て万有引力の法則を発見したエピソードは余りにも有名である。ニュートンのような天才たちのひらめきが、人類の歴史を創ってきた。
英語では、「ああ、そうか!」と気付いた時の感覚を「アハ!という言葉で表す。このため、一瞬のうちに何かに気付くプロセスは、「アハ!」体験とも呼ばれる。
最近の研究によって、「アハ!」体験のような創造的なプロセスも、広い意味では学習の一部であることが判ってきた。学習と創造性は直接には結びつかないような印象もあるが、実際には両者は深く関係しているのである。
「アハ!」体験を生み出す脳のメカニズムは、「一発学習」とも呼ばれる。一度気付けば、もう二度と忘れることがないので、「一発」で完結する「学習」だとされる。
一発学習に関する研究によると、「アハ!」と気付いた時、脳の中では0.1秒ほどの短い時間、神経細胞が一斉に活動するらしい。この活動の結果、神経細胞の間の結合が強められ、一瞬で学習が完結するのである。
学校時代の勉強を振り返ってみても、学んでいることを本当に「納得」する瞬間には、「ああ、そうか」というひらめきがあった。能動的な学習は、ニュートンの「アハ!」体験と共通の脳のメカニズムに支えられている。
学ぶことは創造性と直結している。一生能動的に学び続けることで、人生を豊かなものにすることができるのである。
(「茂木健一郎 クオリア日記」より)
「アハ体験」はこの週末に見た「世界一受けたい授業」という番組(茂木氏が出演)で知りました。茂木氏は番組の中では、以下のようにまとめていました。
「わからない」と「わかった!」のギャップが大事。「何なんだろう?」と考えている間に脳が活性化する。(「わからない」と「わかった!」という)2つのモードを経験することが脳にとってすごく良い。
脳というのは未だ解明されていない部分も多いのですが、それだけに興味の尽きないテーマです。このブログでも「脳」については何度か取り上げていて(間接的に触れているエントリも含めて)、改めて見ると、脳に対する自分の関心のほどがうかがえます。
●「ジャグリングが脳の活性化にいいという話は聞いたことがある」
●「なぜかというと、脳のエネルギーを節約できるから」
●「『思いつき』というキーワードで脳ミソをGREPしたという感じでしょうか」
●「歳をとると、単純な知識を記憶する脳の海馬は衰えていくんですが、知識を複雑に組み合わせて理解する前頭葉は逆に充実していくそうです」
●「日めくりで漢字や英語表現などの問題に挑戦できたり、ちょっとしたクイズで脳の活性化に役立てたりできる」
「なんで最初からこれに気づかなかったんだろう!?」を意図的に起こすコツの1つは、忘れることだと思います。ただし、後からそれを思い出すルートを確保しておく。その手段はやはり「記録と復習」。
書いてしまえば、覚えておく(=ずっと意識しておく)必要はなくなり、バックグラウンドに沈めておくことができます。そして、何かの拍子にそれがフォアグラウンドに浮上してきます。
そのきっかけとなるものとしては以下の2つがあります。
1.何の前触れもなくやってくるひらめき(他力本願)
2.自分で書いたことを読みながら思い出す(自力本願)
自分で意図的にできるのは2の自力本願な「記録と復習」ではないでしょうか。今日のエントリも、過去に書いた「脳」関連のエントリを読み返しながら何度かの「アハ!」を経てここまで来ました。
今年もあとわずかですが、1年間せっせと書いてきたブログを読み返してみると仕事に役立つ「アハ!」がいくつかあるかも知れません。
<「なんで最初からこれに気づかなかったんだろう!?」>
自分で書いた文章を読み返してみると次回から新しい何かに気づけるようになる、かも。