最近はめっきり本や雑誌からよりもブログから情報を仕入れることが多くなってきました。いや、本は読まないといけないと思っているのですが、
- 1.編集の手を介さない、荒削りながらも素材そのままの味わい
- 2.コメントやトラックバックを辿ることで得られる立体的な楽しみ
- 3.取ろうと思えば直接その書き手とコンタクトを取れる魅力
- 4.目線の近さからくる「あ?、それあるある」という共感
といったブログならではのおもしろさに引き寄せられているのだと思います。
本もブログで紹介されているのを見て買うことが多くなりました。
それにしても人はなぜ「あるある」という感覚に弱いんでしょうか?(弱くない人もいるかも知れませんけど)
「似た構造を発見すると非常にうれしい」
ちょっと古い記事ですが、日経ビジネスアソシエ(2005年1月18日号)に掲載されていた養老孟司さんと南伸坊さんの対談記事にそのヒントが読み取れました。
南 面白がるってことって、学習能力のムダ使いっていうか、
そもそも学習することっていうのが人間にとって快感につながっている。
そういうふうにプログラムされているんじゃないか?と思うんです。
似ていることが面白いっていうのは、その学習能力の基本っていうか、
最も原始的な学習なんじゃないか、すべての判断力の基本に
似てるか似てないか問題ってのがあって、
だからそれを楽しむようにできてるんじゃないかと思うんです。養老 認識能力の基本の一つに、似た構造を発見する能力があります。
似た構造を発見すると非常にうれしい。なぜかというと、脳のエネルギーを節約できるから。
全く違うものでも同じだと言えるのなら、非常に楽じゃないですか。
その「同じ」を今度は自分自身に当てはめちゃったのが自己ですね。
皆さん、私は常に私で同じだと思っているでしょうけれど、
物質的に言ったら、絶対そうなり得ない。
我々をつくってる分子というのは、
10年経ったらほぼ完璧に入れ替わっちゃう。
それは物質的には別なものでしょう、つまり、我々はシステムなんです。
この「似た構造を発見する能力」とか「発見すると非常にうれしい」というメカニズムが人に備わっているのはとても興味深いですね。
ところで、お笑い芸人のねたを見ていると、いくつかのグループに分けられることに気づきます。
- 1.自虐系(ヒロシ、いとうあさこ)
- 2.あるある系(レギュラー、いつもここから、摩邪)
- 3.トンデモ系(磁石、オリエンタルラジオ)
- 4.パフォーマンス系(はなわ、長州小力、パッション屋良)
- 5.音楽系(テツ&トモ)
個々の芸人を取り上げ始めるとマニアックな話になってしまいそうなので、深入りしませんが、で、これらのうち1~3について注目してみます。
- 1.誰もが心の片隅に持っている劣等感のようなものを代弁したり(自虐)、
- 2.普段何気なく見聞きしている光景や人のクセを強調して伝えたり(あるある)、
- 3.あるいはコンテクストを入れ替えたり、デフォルメしたり(トンデモ)
といった何かしら「似ている」状況を作りつつ、それを誇張したり歪めたり裏返したりしています。
モノマネが面白く感じられるのも、「似ているんだけど、ちょっと違う」あるいは「全然似てないけど、わかる!」という微妙なニュアンスがポイントになっています。
これがもし、本人と寸分違わない歌声や仕草だったとしたら、おそらく笑えないのではないでしょうか。
つまり「似ている、だけど違う」という感覚が「あるある」なわけです。
仕事の中に「あるある」探す
人のもつ「似た構造を発見すると非常にうれしい」という特性を利用して、人を引きつけておいて、結局のところ違うものを見せることになるのですが、それに気づいたときにはもう手遅れ。
人は「似た構造」というエサにおびき寄せられるわけです。
マーケティングでも「あるある」は活用されていますよね。
テレビCMなどで、
- 1.こんなことでお困りではありませんか?(あ、困ってる困ってる)
→ 解決する商品があります! -
2.いま男性の間でも大人気!(オレも行った方がいいかも?)
→ 今ならおトクです! -
3.いつもうまくいかないんだよなー(あ、そうそう、いつもうまくいかない)
→ この商品ならうまくいきます!
こうして、おびき寄せられます(笑)。
当然、この特性は仕事にも活かせます。
- 1.この仕事って、以前やったあの仕事に似ている!
→ ラクに片づけられるかも! -
2.このお客さんは、あの人に似ている!
→ 前のお客さんで学んだ教訓を活かせるかも! -
3.いつも同じやり方だけど、ここを少し変えてみよう(あえてデフォルメしてみる)
→ いつもより早く終わった!
ここでも、「似ている、だけど違う」というところがポイントで、まったく同じだったとしたら「またかー」ということで、やる気があまり起きません。
慣れてくるとすかさず「ロボット」が出てきてしまうからです。
そんなわけで、日々の仕事の中に「あるある」(似ている、だけど違う)がないかどうかを探すのが仕事を楽しくするコツの1つと言えるかも知れません。