仕事には大まかに分けて2つの種類があります。
1.やれば終わる仕事
2.やってみないと終わるかどうかわからない仕事
「やれば終わる仕事」は、文字通りやり方を熟知していて、始めればほとんど迷うことなく一直線に終えることができる、いわゆるルーチンワークとよばれる仕事です。
・その仕事を始めてから終えるまでのステップが詳細かつ具体的にイメージできる状態になっている、
・手順を体が覚えていて、あまり考えることなくサクサクと進めることができる、
・勘所や間違えやすいポイントを熟知している
といった特徴があります。
一方、「やってみないと終わるかどうかわからない仕事」は、やっかいです。上記の「やれば終わる仕事」の特徴をいっさい持っていない、つまり、
1.どんなステップがあるのかイメージできない
2.どんな情報が必要なのか見当がつかない
3.どんなワナがあるかわからない
からです。
従って、なかなか手がつけられません。それよりも、慣れ親しんだ「やれば終わる仕事」ばかりに目が行ってしまい、「やってみないと終わるかどうかわからない仕事」はますます先送りされるという悪しきスパイラルに陥りがちです。こうしてイヤイヤタスクが生まれるわけです。
でも、「やれば終わる仕事」にも問題はあります。
それは、「やれば終わる」のだから今やらなくてもいいだろうと、高をくくってしまい、これまた後まわしにしてしまうことです。
今でこそ「やれば終わる仕事」ですが、最初はどんな仕事も「やってみないと終わるかどうかわからない仕事」だったはず。そして、得てして「やってみないと終わるかどうかわからない仕事」の方がクリエイティブで楽しかったりします(人生、ないものねだりですね…)。
なぜか。
それは発見の余地があるからでしょう。「やれば終わる仕事」はすでにすべての「謎」が解明し尽くされており、「やってみないと終わるかどうかわからない仕事」が持っていたミステリアスな部分がいっさいありません。
2回目に読む推理小説のようなもので、すでに犯人を知っているので、「犯人は誰なんだろう? コイツか? それともアイツ?」といったスリルやワクワク感がありません。
でも、1回目に読んだときとは別の視点で読めば新しい味わいが出てくるのではないでしょうか。
例えば、
1.主人公ではなく別の登場人物の立場に立って、改めて物語をたどってみる
2.1章から順番に読むのではなく、2章 → 5章 → 3章などのようにランダムに読んでみる
3.物語とは直接関係のない情景描写だけを追っていく
などです。
このような読み方はスタンダードではありませんが、思わぬ発見が隠れていたりするかも知れません。プロットに矛盾を見つけたり、あるいは1回目に読んだときには気づかなかったような奇妙な共通点、あるいは作家が巧妙に仕込んだ物語の隠し味に迫ることができるかも知れません。
これを仕事に当てはめてみると、「やれば終わる仕事」と化した仕事でも、
1.これを別の人にやってもらうとしたらどういう風に説明する?
2.いま手作業でやっていることを自動化できたらどうだろう?
3.毎月やっているけど、そもそも毎月やる必要はあるのかな?
といったツッコミを入れていくことで、今まで気づかなかったことが浮かび上がってくるのではないでしょうか。
機械的に仕事ができてしまうということは一見とても素晴らしいことのように思えますが、見方を変えれば、自分がマシーンになってしまっているということでもあります。人は決められたとおりに動き続ける機械と違い、時とともに変化し続けるものであるため、同じ仕事を長期間にわたって続けていると、必ず人と仕事との間に齟齬が生じます。
それに気づければ、今の自分に最もフィットしたやり方を見いだせるのではないでしょうか。
おもしろい事例があります。
クリフト1人でクリアする
クリフトといえば、スライムだろうがデスピサロだろうが、ザキを連発する<おちゃめなバカ>のイメージが通説になってしまったが、そんな彼の印象を、もっと【使えるキャラ】に変えてやれないものか。
もし、彼一人でデスピサロを倒すことができれば、彼のイメージ改善にも役立つのではなかろうか。クリフトは神官ということで、回復の手段も持ち合わせている。そんな風にいろいろ考えていくにつれ、何とかがんばれば、クリフト一人でデスピサロを倒せそうな気がしてきた。
防具をいっさい装備せずにクリアする
何も装備しない素の肉体でデスピサロの攻撃や激しい炎をがっちり受け止め、素手でデスピサロをねじ伏せたとなれば、「天空の装備」はすべて「伝説の武器」でも何でもなく、天空の塔に入るためのただのパスポートに過ぎなかったことになる。こうして、「ドラクエ4」の正統的物語はまた一つ歯車を狂わせることになるであろう。
いずれもドラゴンクエストというロールプレイングゲームを、自分なりの制約を設けて繰り返し楽しんでいるという、文字通り楽しい事例です。
このゲームはご存知の方も多いと思いますが、通常は3人以上のパーティーを組んで敵に立ち向かうものです。でも、その前提に果敢にチャレンジし「なぜ3人なのか? 1人でもいいじゃないか!」というツッコミが起点になっています(たぶん)。
それにしても、この方の根性には頭が下がります。例えば、
そんなこんなでレベルを上げ続けること2週間。レベルも36になり、いまやギガンテス2匹も普通に倒せるようになった
あるいは、
リセットの繰り返しを続け、ゾーマを倒したのは148回目の挑戦であった。結果からいえば5ターン連続の会心の一撃が必要であった。
といったチャレンジの数々は、普通であれば途中で挫折してしまうか、そもそも考えただけでゾッとして実践に移そうとしないか、それ以前に思いつきもしないようなことばかりです。比類なきクリエイティビティを感じずにはいられません。
というわけで、自分の中ですっかり定番になってしまった「やれば終わる仕事」に対しても、時折「本当にこのやり方でいいのか?」というツッコミを入れることで、新たな謎やチャレンジが生まれ、引き続きその仕事を楽しくすることができそうですね。