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人が人に注目する理由

昨日は「仕事は人と人との対話から生まれる」と書きました。対話をするうえでは相手のことをよく知っておくことは大切なことと言えるでしょう。

スポーツ選手や経営者などのインタビューに際して、インタビュアーは事前に相手の経歴を調べることはもちろん、その著作や最近の掲載記事などを一通りチェックしたうえで臨むと言います。そうした綿密な準備があって初めて、相手から意味のある情報を引き出せるのでしょう。

仕事をうまく進めるうえでも、相手や相手の会社のことをよく知っておくことは大切であると考えられます。

人が新聞や雑誌を読む目的は、突き詰めていけば「いま誰がどんなことを考え、そして何をやっているのか」を知るための人間観察。それをやっている人の考え方に共感できれば、自分もそれを真似てみようとし、そうでなければ反面教師として自分を戒めます。

特に著名人でなくとも、身近にいる人からも学ぶことができます。

そんな感じで、今週の「発想七日!」のお題は「注目のこの人」なのですが、個人的には特にこの人、という人はおらず、最近ではある共通点を持った人に自然と目が向くようになっています。

それは、一人でビジネスをやっている人、あるいは始めた人。

今の自分が置かれた状況と似たような状況にある人、あるいはかつてそうだった人の話は、参考になるからです。そういう視点で注目しているのは、日本経済新聞に連載されている「私の履歴書」の方々です。

先月はシダックスの野村克也監督、今月はシマノの島野喜三会長です。

「履歴書」に登場する方々の共通点は、

 1.同時代の人々と少し違った視点で世の中を見据え、
 2.これをベースに新しいことを始め、
 3.逆境や障害を乗り越えながらこれを育てていく

というところだと感じています。

当然、時代のタイムラグがあるため、そのまま活用できるところばかりではありませんが、根底にある考え方や物事に向かう姿勢は刮目して学ぶべきことばかりです。人の本質はあまり変わらないことを改めて感じさせられます。

吉川英治氏は「我以外皆我師」という名言を残しているように、たとえ多くの人から注目されていない人であったとしても、自分にとって学ぶべきことがその人にあれば、その人は注目の師ということになります。

また、梅棹忠夫氏は「本を読むのは自分が考えていることがほかの人によってすでに考えられていないことを確かめるためである」というようなことを言っています。

本といえば、ベストセラーをめぐって、

 1.その本に書かれている通りに行動する人
 2.逆バリでいく人
 3.そもそも読まない人

という3つの行動パターンが考えられますが、梅棹氏は2に近いということでしょう。

世の中には学ぶべきことがたくさんありますが、今の自分にとって学ぶべきことはもっと限られたものになるはずです。それを見つけるためのカギが人です。人との対話を通して学ぶべきことを知り、同時に学んでいくのでしょう(そう考えるとSNSは深いですね)。

そして、この人の対話という過程は仕事そのものでもある、というのは興味深いところです。