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デジタルノートテイキング連載のまとめ



倉下忠憲

前回までで、主要なデジタルノートツールを紹介してきました。iPadなどを加えれば、選択肢はさらに広がるのですが、ひとまずは大きな石は踏んでいけたかと思います。

さて、連載の締めくくりとして、今回はこれまで書いてきたことを振り返ってみましょう。

デジタルノートらしさ

連載の全記事は「デジタルノートテイキングまとめ」からでも確認できますが、私が自分で作った以下のScrapboxページもあります。

デジタルノートテイキング連載 at シゴタノ! – 倉下忠憲の発想工房

このページをご覧頂いていても「デジタルノート」の強力さがよくわかるでしょう。情報がきれいに整列されているだけでなく、他の情報のページともリンクしています。それも「外部」のWebサイトだけでなく、自分が書いた他のノートともリンクしているのです。

たとえば「知的生産の技術書100選」というノートは、私が来年の連載のアイデアとして暖めているもので、それが今年の連載の一覧と「リンク」しているのはいかにもナチュラルです。また、他のキーワード(”アウトライナー”や”カード法”など)のリンクもあり、このノートをハブにして、さまざまな情報が連結していることもわかります。

さらに、こうした情報群を今やっているように他の人に共有することもデジタルノートでは容易です。

総じていえば、同じノートとは言え、アナログノートとデジタルノートはかなり違った性質を持っているのです。

三つの特徴

では、その性質とはどのようなものでしょうか。連載中何度も確認してきましたが、もう一度復習しておきましょう。

まず第一に、デジタルノートに保存されるものは、たとえどんなものであれそれは「データ」だということです。データは、再編集と加工がきわめて容易であり、さまざまな「使い方」ができます。一つのデータから複数の出力を作成したり、逆に複数の異なるデータから一つの出力を生成したりもできます。

一方でアナログノートは、何かしらの入力=記述は、物そのものへの情報の添付であり、もっと言えば物質化です。それは容易に動かすことができないものです。もちろん、容易に動かせないからこその良さもあるわけですが、動かせることの良さもあります。用途を考えて、適材適所を選んでいきたいところです。

第二に、情報量の多さがあります。よほど慎重に使わない限り、デジタルノートでは扱う情報が多くなります。あるいは「膨大になる」と言ってもいいかもしれません。これは、間違いなくメリットではあるでしょう。情報は少ないよりも多い方が好ましい。直感的にもうなずける話です。

一方で、そのような膨大な情報を扱う「術」(すべ)を私たちはまだ自覚的に確立していません(生物的には皆無でしょう)。よって、アナログノートのアプローチでデジタルノートを使おうとしてしまうのですが、基本的にそれは良い結果をもたらしません。扱いきれずにパンクしてしまいます。デジタルノートにはデジタルノートの方法論が必要なのです。

最後の第三に、動的な情報との親和性の高さがあります。いくらでも書き換えていけるデジタルノートは、一度生成されたら以降書き換えられることのない情報よりも、むしろ一定の間隔で変化していく情報の扱いに適性を持ちます。そして、その間隔の長さによって、適切なツールの要件も変わってきます。アウトライナーは比較的短く、Scrapboxはやや長いといった具合です。

さらにこれは、「知識」の扱いとも関係してきます。たとえば、Webクリップなどの情報の扱いは、「高機能な新聞の切り抜き」と大差はないのですが、知識を扱う場合はそれとは違った手法が必要になります。それがデジタルノートにおいて顕著に現れてきます。

よって、知的生産においてデジタルノートの運用を検討するのであれば、やはり「知識」をどう扱うかの検討は避けて通れないでしょう。

さいごに

というわけで、今年書いてきたデジタルノートについて簡単にまとめてみました。ここで書いた話の具体的な検討や今後の課題は過去記事をご覧いただければより詳しく見えてくるでしょう。

もちろん、まだまだ展開したい話もありますが、それはまた別の機会に譲るとして、来年からはまた別の連載をスタートしようと思います。

では、一年間お付き合いくださりありがとうございます。

デジタルノートテイキング連載一覧

▼編集後記:
倉下忠憲


新しいセルフパブリッシングの書籍が予約中です。当ブログの大橋さんにも寄稿頂いております。5年後くらいにはえらい分厚い本になるのではないかと予想しております。
 
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▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中