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デジタルノートはリンクが命



倉下忠憲

前回は、DNT(デジタルノート・トランスフォーメーション)に向けての心がけを紹介しました。そのとき、チラリと触れるに留めた「リンク」について今回は書いてみます。

この「リンク」こそがデジタルノートの最大のメリットであり、その力を発揮させるのがデジタルノートの醍醐味でもあります。

階層構造を飛び越える

リンクの最大の効果は、階層構造を跳躍できることです。

これには二つの意味があります。一つは、階層構造を作らなくても情報に構造を与えられること。もう一つは、階層構造を作っていてもそれとは違った情報の構造を作れることです。

たとえば、自分でWebサイトを作ったとして、そのフォルダ/ファイル構造通りにページを表示させる必要はありません。どのページ(ファイル)がどのページとつながっているのかは、リンクで自由に記述できます。また、フォルダ/ファイル構造通りにページ構造を作ったとしても、それとは違ったルートで情報を表示できます。

どちらの意味でも脱階層構造的に情報を表現できるわけです。

つまり、階層構造がそもそも合わない場合はネットワーク構造を使うことができ、構造が合う場合でもそれとは違った「抜け道」を構造に与えられるのです。

ファイルシステムでは、シンボリックリンクが象徴的でしょう。ファイル/フォルダ構造下にあっても、「リンク」の機能使うことで、その構造を壊さずに、違ったアクセスルートを確立できます。言い換えれば、構造に柔軟性が増すのです。

これは階層構造的な制約──「一つのものは一つの場所に」──から自由になれる、ということです。

情報を束ねる

「リンク」はまた、情報を束ねる際にも役立ちます。

一般的に「リンク」というと、情報Aと情報Bを接続する、というイメージがあるかもしれませんが、これはリンク使用の限定的なパターンに過ぎません。情報Aと情報Bを接続し、情報Aと情報Cを接続し、情報Aと情報Dを接続し、……とどんどん広げていけます。

それが何を意味するのかと言えば、情報のインデックスを作ることができる、ということです。

情報Aを、「情報B、C、D」の集約所と捉えれば、それはまさしくインデックスです。しかもそのインデックスは、メタ情報としてではなく同じレベルの情報として存在しています。難しく聞こえるかもしれませんが、ようは「なんであってもインデックスになりうるし、それを自分で作っていける」ということです。

あちらこちらに情報が分散している状況があっても、「リンク」が使えればそれらを手軽るにまとめることができます。しかも、それらのもともとの情報を移動させなくてもよいのです。これはアナログ/物の整理ではまず実現できないことでしょう。

内外すらも跳躍する

さらにです。うまく作られたリンクであれば、もう一段の脱構造が可能です。

たとえばイメージしてみてください。パソコンのデスクトップ画面です。そこにはファイルと、シンボリックリンクと、URLファイル(Windowsなら.url/Macなら.webloc)が並んでいます。これらすべての実体は異なっていますが、同じような見かけでデスクトップ画面に並んでいるのです。これが「リンク」の真なる力です。

自分のパソコン内にあるファイル、そのファイルの位置を示すファイル、外部のサーバにあるファイルのURLを示すファイル。

これらがすべて同じ「手つき」で扱えます。つまり、自分のパソコンのフォルダ/ファイル構造を脱構造できるだけではありません。どのパソコン/サーバーに保存している情報であるかという構造すらも脱することができるのです。

たとえばScrapboxでは、自分のプロジェクトの他のページへのリンク、Scrapboxの他のプロジェクトのリンク、他のWebページへのリンクを一つのページの中にまとめることができます。さまざまな情報を「つなげる」ことができるのです。

このような越境性こそがリンクの最大の力ではあるのですが、十全にサポートされたツールはそれほど多くありません。特に、自分のパソコンと外部サーバの情報を「つなげる」のはセキュリティ的に難しいので、完全にやろうと思えばローカル側にリンク+Webアクセスの環境を整えるしかないでしょう。

さいごに

もちろん、リンクの力を十全に発揮させなければいけない、というものではありません。3〜5割くらいの力でも十分強力です。

ただ、アナログノートベースの発想だと、どうしてもこの「リンク」は馴染みが薄く、その割合ですらうまく使えないことが多々あります。だから少しずつ慣れていくのが良いでしょう。

  • 一物一位でなくてもよい
  • 脱階層構造であってもよい
  • 情報を自分でつなげ、まとめることができる

こうしたことを意識していくと、デジタルノート観が育まれていくと思います。

デジタルノートテイキング連載一覧

▼編集後記:
倉下忠憲




なんと拙著4刷が決定しました(なんと!)。
 
一回の重版ですら相当久々なのですが、4刷ともなると10年に一度くらいの出来事かもしれません。嬉しい限りです。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中