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情報のフィックスとは意志の構造的保存



倉下忠憲前回は、情報の扱い方にフローとフィックスの二種類があることを確認しました。単に流すままにしておくのがフローであり、自分で意識的に情報を位置づけるのがフィックスです。

近年のデジタルツールではフロー型のものが増えていますが、フィックス型にも独自の良さがあります。極端なことを言えば、ある文脈において情報を扱うためには必須の手つきだとも言えます。

そこでまず、フィックスの良さと悪さについて考えてみましょう。

Pin、リスト、構造

フィックスとは、情報を自分で位置づけることです。何をどこに置くのかを自分で決めるわけです。そのような作業を再帰的に・パターン的に繰り返していくことを「構造化する」と呼んだりもします。言い換えれば、情報をフィックスすることは、構造化を行うことなのです。

フィックスの一番単純なものが、特定位置での固定であり、WebブラウザやScrapboxのPinがこれに相当します。その要素が増えると、それは「リスト」と呼ばれます。Pinもそれが複数個あつまるならば、それは「リスト」と認識できるでしょう。逆に言えば、Pinとは個数が1のリストだとも捉えられるわけです。

そのリストが階層を持つと、構造として認識され始めます。階層化リスト、入れ子状リスト、そしてアウトライン。こうしたものが構造の表現です。ここでもまた逆に言えば、リストとはごく小規模の構造だとも言えます(高層ビルと平屋の建物をイメージしてください)。つまり、Pin-リスト-構造(ストラクチャー)は、その規模や情報的複雑さの違いがあるにせよ、すべて同一のレイヤーに所属していると考えられるわけです。

意志と構造

では、そうしたフィックスの良さとは何でしょうか。

一番分かりやすいのが、そこに重要度を反映させられる点です。一番重要だと思っていることを一番上に置けばスッキリしますね。この至極単純な話が、エグイくらいに重要です。

なぜ重要かと言えば、効率性の観点から言えば上記の最適化はあまり意味がないからです。むしろ効率性の観点から言えば、「直近に使ったものを上に表示する」方がはるかに適しています。実際パソコンのファイル操作では必ず「最近のファイル」が出てくるようになっています。これは野口悠紀雄さんの押出しファイリングであり、またその効果は『アルゴリズム思考術』でも確認されています。



「最近使ったファイル」を上に表示することが効率的であることは、一つの悲しい事実を示しています。つまり、「私が何を重要だと思うかは関係ない」ということです。私の意志(≒重要度認定)とは別に、私の行動・操作によって情報をソートした方が効率的なのです。
*行動主義的情報整理と呼びましょう。

もちろん、行動・操作も私の意志に依るものですから、まったく関係ないわけではありませんが、他の人がファイルを開いた場合でも、夢遊病的に行動していた場合でも、精神的に追いつめられた状態でブラック企業的に仕事をしている場合でも、「行動」の結果が優先されるのが効率的である、という点は今後の議論を進めていく上で極めて重要なので念頭においておいてください。

一方で、フィックスには、それを指定した時点の自分の意志がそこに反映され、またその意志が構造としてそこに残存することになります。あるいは、そうした意志を保存するメディアが、「構造」なのだと逆転的に定義することもできるでしょう(今極めてラディカルなことを述べていますのでわからなくても大丈夫です)。

ともかく、フィックスは自分で情報を位置づけることができ、それが自分の意志を反映し、またそれを保存し続けられる、という点は、フローには持ち得ないメリットだと言えます。

さいごに

もう一つ、フィックスならではのメリットとして「どこに何があるのかわかる」という点があるのですが、若干長くなってきたので、それは次回としましょう。キーワードは「情報の身体化」です。

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▼編集後記:
倉下忠憲

今週から少しだけギアを上げています。書籍原稿に加えて、電子雑誌の編集作業と確定申告を進めているのです。あんまりアクセルを踏むとまた「やりすぎ」になりかねないので、様子を見ながら、少しずつスピードを上げていきたいところです。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中