『「リスト」の魔法』が発売されたのを記念して、知的生産における5つのリストの話をしてみます。
知的生産活動はさまざまなプロセスを経ますが、それぞれにおいてリストが活躍します。たとえば、以下の5つです。
- ネタ帳
- 読書リスト
- やることリスト
- アウトライン
- テーマリスト
今回は、このうちの一つ「アウトライン」について考えてみましょう。
企画案(目次案)
まず、思いついたアイデアが核となり、それが膨らんできそうなら、考えるのが企画案です。目次案と言い換えても良いでしょう。その企画で、いったいどんなことを書くのか──それを書き出してみます。
その段階では、それほど精緻に考える必要はありません。粒度を揃えなくても、順番にこだわらなくても大丈夫です。自分はその企画について、いったいどんな「ネタ」を持っているのかを確認してみる。そういう作業だと言えるでしょう。
つまり、「こんな感じの本になるかな〜」という草案やラフな構造、いや構造というよりも要素の列挙が企画案です。
ある程度そこにボリュームが生まれるなら、実際に執筆をスタートしてみてもよいですし、たとえ十分な量が集まらなくても、一考してみることは企画を考える力のトレーニングとなってくれます。
アウトライン
さて、企画案を考えてみて、これは行けそうだなと思ったら、いざ執筆です。その際に、まずアウトラインを考えます。企画案の段階で漠然と考えていたものを、もう少し具体的・整合的に整えていきます。
まず第一に粒度の整理です。いくつかの要素を並べて書くとき、粒度がバラバラだと読む方は混乱してしまいます。完璧に整える必要はありませんが、それでもだいたいの感じで情報の粒度を揃えてみます。それがいわゆる「章立て」となります。
次に範囲の設定です。書き出してみたところ、200ほどの要素が見つかったとします。それをすべて入れ込むことは適切でしょうか。中心となるテーマからあまりに外れているものはいったん保留にしておいた方がいいかもしれません。
だいたいこの二つの作業を通して、その企画の「テーマ」が徐々に姿を現すことになります。ただし、この段階ではまだその姿はうっすらと垣間見える影のようなもので本体そのものではありません。それが実際に姿を現すのは、もっとずっと後になってからです。
最後に、要素の順番です。要素をいかに並べるのか。言い換えれば、話をどんな流れで進めていくのかを検討します。まったく同じ要素を扱っても、その順番によってコンテンツの全体像は変わってくるものです。ここに「正解」はありませんが、だからこそ複数のバージョンを検討してみたいところです。もちろん、ここにも「テーマ」が関わってくることは間違いありません。
と、上記のような「アウトライン」を立てられれば、執筆にとりかかれるでしょう。とは言え、これらはあくまで仮決めに過ぎません。執筆の進行状況によって、いくくらでも後から変わってくるものだ、ということは認識しておきましょう。
目次
本文を書き上げて、最終的に整ったアウトラインが「目次」です。これは仮決めのものではなく、正式版として(あるいは提出版として)最終的にローンチされるその本の「構造」を示すものです。
つまり、そのコンテンツを受け取る人が、「ああ、これはこういうものなんだな」と理解する手助けをするものが「目次」です。
その意味で、執筆活動とは(不安定・不完全な)アウトラインを、少しずつ目次に近づけていく作業だと言えるでしょう。逆に言えば、その二つは基本的なレベルにおいて別物である、という認識を持っておくと執筆は進めやすいかもしれません。
さいごに
ちなみに、上記のような準備を一切せず、ただ思いついたままに頭から書き出して、そのまま書き上げる物書きさんもおられます。もちろん、それだって一つのやり方です。
自分がどちらのタイプに属するのかは、実際にやってみることでしか確かめられません。ぜひとも、先入観をもたずに、両方の方法で試してみるとよいでしょう。
▼参考文献:
上記の考え方は、アウトライナーの使い方に見事に呼応します。ぜひご一読を。
▼今週の一冊:
古い本ですが、今でも「読書論」として非常に面白く読めます。古典として読むことと、情報として読むこと。現代は後者に強く比重があるので、そのバランスを取り戻すことが大切なのでしょう。
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少しずつ執筆を進められるようにはなっています。とりあえず、毎日15分は『僕らの生存戦略』を書くことにしました。それくらいなら負荷なく続けて行けそうです。時間はかかりそうですが、少しでも前に進んでいる、という感覚は大切ですね。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中。