かわぐちかいじさんの『沈黙の艦隊』というコミックに、合衆国大統領とその息子の会話があります。
大統領が息子に「大昔の東洋には、入ってはいけない部屋や金庫に鍵がかかっていなかった」という話を聞かせるのです。
ではどうやってセキュリティを守っていたのか?
カギの代わりに戸に紙で封をしていたというのが、大統領の話でした。
魔法の紙であったという話ではなく、特別な効力があったわけでもありませんので、破ることも剥がすことも容易にできます。
しかし紙にはこう書いてあったそうです。
「あなたは悪いことをしようとしている」「それでいいのですか」
あなたは今日中に寝られなくなる。それでいいのですか?
タスクシュートが「時間管理」に効果を発揮するのも、これとまったく同じ原理によるものです。
当日中にやらなければならないすべてのタスクがリストアップされています。
それぞれのタスクには、ほぼ適切な見積時間が割り当てられています。中にはいささか少なめに見積もられているタスクすらあります。
本当はもっと多くの時間が必要でしょうが、最低でもこれだけはやらなければならないというリストです。
その時間をぜんぶ足すと、布団に潜り込めるのは23:59。
つまり当日中に就寝したければ、よけいないことはできないというわけです。
そんなとき、おもむろにどうでもいいようなエッチサイトをぼんやり眺める。
あなたはそれを眺めることによって、今日中に寝ることはかなわなくなる。
それでいいのですか?
タスクシュートはなにも強制はしません。
時間を自動的にうまく使えるようになるツールでもありません。
いちいち行動を変えるたびに、開始時刻と終了時刻を打刻するのはわずらわしいという人もいます。
たしかにそうかもしれません。
でも、無意識のうちに行動を変えてしまうのでは、意識的に自分の置かれた状況を、冷静に見つめ直すことはできないのです。
自分はこれをしようとしている。
それでいいのだろうか?
この問は、無意識ではできません。行動を変えるたびに自意識を呼び出すことが、タスクシュートを実践するということなのです。