年末年始です。レビューの時期です。
通常業務から解放されるだけでなく、普段インプットしているメディアもだいたいお休みになるので、(その時期のインプットを控えれば)レビューするための時間が確保できます。そして、そのような時間が確保できるタイミングは非常に限られていることを考えれば、年末年始にこそ、ゆっくり身の回りの情報環境を振り返ってみるのがよさそうです。
これまでの当連載でも「情報摂取」における注意点をいくつか紹介してきましたので、それらを踏まえながらレビューのポイントを探ってみましょう。
数は多すぎる? 少なすぎる?
インプットの量は適切でしょうか。多すぎたり、少なすぎたりはしないでしょうか。
多すぎれば、情報摂取過剰となり、アウトプットに使える時間がなくなります。逆に少なすぎれば、発想が貧困化し、実のあるものを生み出せなくなります。もちろん、この間ぐらいがちょうど良いでしょう。
ただし、どのくらいの量が適切なのかは直接測定できません。むしろ着目するのはアウトプットの量と質です。アウトプットが「きちんと」生み出せているのならば、インプットの量も適切だと考えられるでしょう。この場合のアウトプットは、ブログ記事や本といった完成物だけでなく、読書メモやフリーライティングも含んでいます。「読み過ぎ」に針が振れてしまうと、こういったものがまったくなくなり、ただただ本を読んでいるだけになりがちです。過剰摂取のシグナルと言ってよいでしょう。
十分に読んで、十分に考えるだけの時間がキープできているなら、その量はちょうど良いと考えられます。
種類は多すぎる? 少なすぎる?
続いて種類です。この「種類」は広義に捉えてください。本のジャンルだけではなく、映像メディアや音楽メディアといったメディアの種類も含んでいます。もちろん、それぞれのメディアの中にも、いくつもの種類があります。
そうした種類を広くカバーしようとしすぎてはいないでしょうか。逆に、狭い場所に止まり続けてはいないでしょうか。
ありがちなのは、狭くなる方です。「フィルターバブル」に近い状況と言えるでしょう。普段慣れ親しんでいるメディアばかりに触れてそれで満足してしまい、広い視野を失ってしまうことはよくあります。一方の意見だけに耳を傾けすぎて、もう片方の意見をあたかも存在しないかのように扱ってしまうこともあります。
広すぎる場合は、だいたい時間不足という形で無理が露呈してくるのですが、狭すぎる場合はその影響が目に見えません。インプット過剰を減らそうとして、インプットを絞るのは良いのですが、あまり考えないでそれを行うと「偏食」が起きてしまうことがあります。
そのため、定期的にインプットの窓を開けて「空気の入れ換え」を行うのがよいでしょう。RSSリーダーに登録してあるブログ、Twitterのフォロワー、普段買っている週刊誌などを、たまに変えてみると、また違った景色が見えてくるようになります。
デザート比率は?
種類に近いのですが、やわらかい情報に触れすぎていないかもチェックした方が良いでしょう。
別段、やわらかい情報が悪いわけではありませんし、そもそも何を持って「やわらかい」とするかも人によって違いがありますが、それはそれとして、自分が無理なく読めるものよりも、ほんの僅かだけ難しいものに触れておくのは、知的好奇心の維持においても有用です。
疲れているときならば仕方がありませんが、そちらばかりに流れてしまうことのないように、全体のインプットのバランスをチェックしておくのは良いでしょう。小難しい本を、一年かけて読み通す、という目標を新たに立てるのも面白そうです。
さいごに
往々にして人のインプットは、過剰で、狭小で、消化しやすい方に向かっていきがちです。おそらく、脳の神経的傾向や消費エネルギーにおける最適解と何かしら関係があるのでしょう。意識的なコントロールが必要となります。
こうしたものは、日々の細々とした調整でも行えますが、まとまった時間で自分のインプットの全体像を見返してみるのも有効でしょう。ただし、あまり大きすぎる目標を掲げるのはオススメできません。そのあたりは『「目標」の研究』も参考にしてください。
それでは、良い年末年始を。
▼今週の一冊:
別の本を紹介しようかと思っていたんですが、そういえば今年最後の記事だと気づいて、もう一度この本を紹介することにしました。2016年でベストだった本です。年末年始の読書のお供にどうぞ。
» サピエンス全史(上) 文明の構造と人類の幸福 サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福[Kindle版]
» サピエンス全史(下) 文明の構造と人類の幸福 サピエンス全史 文明の構造と人類の幸福[Kindle版]
» サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福[Kindle版]
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さて、いよいよ2016年もお終いです。いろいろプロジェクトは達成できたような、ぜんぜん足りていないような不思議な気分です。2017年も面白い本を出すことに努めますので、よろしくお願いいたします。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。
» ズボラな僕がEvernoteで情報の片付け達人になった理由