いよいよ年末です。何かを整理するには最適のタイミングですね。
前回のエントリーで次のように書きました。
情報をいかに仕入れ、いかに加工し、いかにアウトプットするのか。そういった一連の流れにおける技術が「知的生産の技術」です。その意味では個々のテクニックよりも、自分なりの情報ワークフローを確立していくこと事が重要だと思います。
年末は、この情報ワークフローの見直しを行ってみてはいかがでしょうか。
情報ワークフローが存在しているか?
そもそも情報ワークフローとはなんでしょうか。知的生産の過程は素材となる情報の仕入れから、加工、そしてそれをアウトプットするという一連の流れになっています。それが、「思いつき」や「その場限り」の出来事ではなく一連の手順へと落とし込めているかどうかというのがワークフローのあるなしと言えます。
- まず、「情報を仕入れているか」
- 次に、「情報の保管場所が決まっているか」
- さらに、「それが必要な時に引き出せるようになっているか」
- 最後に、「定期的にアウトプットする場所があるか」
を考えてみてください。
これらのうち、どれかが書けているならばワークフローができているとは言い難いでしょう。
一つ目の「情報」というのは、外部からの情報もあれば自分の内側からのアイデアも含まれます。そういったものをきちんと収集できているか。それがポイントです。
二つ目は、集めた情報の保管場所があるかどうか。これは個人的にはEvernoteを使うのを強くおすすめします。理由はいくつかありますが、総合的に言うと「便利」だからです。
三つ目は、集めた情報が引き出せるかどうか。これがEvernoteを使うメリットの二つめの理由になります。情報をうまく引き出せる仕組み作りにおいてEvernoteは大変強力です。書き出すと長くなりすぎるので割愛しますが、自分なりの整理方法を柔軟に確率できるという点においてはその他のクラウドサービスとは一線を画しています。
最後に、それを出す場所があるかどうか。Blogでもマイクロブログでも、仕事の会議でも、仲間内のミーティングでも対象はなんでも結構ですが集めた情報を定期的に使う場所があるかどうか。
この4つのポイントで自分の情報環境を一度見直してみてください。
I/O比を確認
立花隆氏は『「知」のソフトウェア』の中で次のように述べられています。
インプット量とアウトプット量の比は、物質的生産であれば小さければ小さいほどよ。それは原材料がいかに無駄にならず有効利用されたかを示す尺度だからである。しかし、知的生産においては、この比は大きければ大きいほどよ。この比が小さいということは、ひどい場合においては剽窃、よくてもノリとハサミでデッチ上げた作品ということになる。
確かに、仕入れた情報を単にそのままアウトプットしているだけではコピペと言われても仕方がありません。しかしインプットとアウトプットの比(I/O比)が大きければ大きいほどよいといっても、アウトプットがゼロであってはインプットする意味もありません。
I/O比が大きい状況はもしかしたら、インプットが多すぎるという事もあるかもしれません。特に必要でもない情報に対して時間を使いすぎていればこのような事態になるでしょう。
こういった「インプット富豪・アウトプット貧乏」にならないために自分のインプット環境を一度見直してみるのもよいかもしれません。
定期購読している雑誌、新聞、巡回しているサイト、TwitterなどのSNS、登録しているRSSフィード。これらの量は本当に自分に適切なものになっているでしょうか。一つ一つの量は少なくても、トータルで見た場合に押しつぶされるほど大きな量になっていないでしょうか。
どれほど貪欲に情報を集めたとしても、世界中の情報を全てインプットすることなどできません。結局限りがあるのだから、自分にとって必要度の高い情報のインプットに時間を使いたい所です。
Googleリーダーの整理であれば「Lifehacking.jp」さんの「Google Reader のトレンド機能でRSS ダイエット」という記事が参考になるでしょう。これと同じように他のインプットに関しても見直しておく必要があるかもしれません。
「時間がない」は本当か?
アウトプットに関しては「時間がない」という話をよく聞きます。
確かに現代は「忙しい」社会です。でも、本当に時間がないのでしょうか。
例えば、一日のうち読む事に書けている時間はどのくらいでしょうか。それが把握できているでしょうか。やっている事で隙間時間に出来ることはないでしょうか。あるはする必要のないことに時間を使っていないでしょうか。
このブログの主催者さんのように「使途不明時間がまったくない」という方はかなりのレアケースでしょう。結構皆さん知らず知らずのうちに時間を消費している事が多いと思います。基本的に、そういう「消費」は意識的に測定しないと気がつかないものです。
かのドラッカーも、自分の時間の使い方を記録せよとおっしゃっていましたが、それはかなり大切な事です。
「時間がない」という状況は、「時間がないと思っている」にすぎません。もしかしたら本当にまったく時間がないのかもしれませんが、そう思い込んでいるだけかもしれません。それをはっきりさせるためには自分の時間の使い方を一度記録してみる必要があります。
これは、生産という行為で見ればまったく何も生み出しません。気を出して取り組むには難しい行為です。が、とりあえず一週間だけでも記録してみる価値はあると思います。人は本当に時間を無駄遣いします。そしてその事を普段はまったく意識していません。
何にせよ、アウトプットする必要性を感じているならば、「時間がない」と嘆くよりも、アウトプットするために何ができるかを考えた方が建設的です。
慌ただしい年末ですが、自分の時間の使い方を振り返ってみるのもよいかもしれません。
まとめ
今回は年末の大掃除ということで、自分の環境の整理について書いてみました。情報の流れや量は適切だろうか、あるいは時間の使い方は自分の方向性とマッチしたものになっているか。そういった少し上の視点から自分の身の回りを見つめ直してみる事も時には必要です。年末にそういうタスクを入れてみるのも良いでしょう。
▼参考文献:
この本も何度か紹介していますが、面白い本です。立花氏の知的生産活動が自分自身で考察されています。これもある種のメタ思考ですね。
知識労働者はいかに仕事し、自己啓発し、生きていくか、という本。エッセンスが詰まりすぎて引き出すのが困難なぐらいの一冊です。
▼関連エントリー:
・「知的生産の技術」とは何か?
・Google Reader のトレンド機能でRSS ダイエット
▼今週の一冊:
新しい本をほとんど読めていない状況ですが、参考資料として過去読んだ本をぱらぱらとは見返しています。最近は「行動経済学」の本を中心に読んでいますが、そういった知見を得た後で読み直しても非常に面白い本です。
海馬という大脳辺縁系の一部がどのような機能を持っているのか、そして人はどのように「生き」ればよいのか、ということが軽やかな、しかし熱を持った対談で語られています。現代を生きる20代の方に、以下のような文章を引いておきます。
「三〇歳までは、とにかく失敗をたくさんして、インフラを整備していく」と考えたほうが、生き方が複雑になってきている現代に合ってると思う」
直線的な生き方が難しくなっている現代では、いろいろと挑戦し、失敗することを繰り返して行く中で脳の中も複雑にしていく生き方がいいんじゃないかな、という事です。私も同感です。
現在進行中の原稿がいよいよ正念場なので、年内は新しい本は一切読まない決意で進めております。
が、結構読みたい本があるんですよね。なかなか困りものです。「アメとムチ」的に、原稿を書き上げたご褒美としてじっくり読書にいそしむ、という計画を立てております。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。