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年末年始は情報環境の整理を! 2018



倉下忠憲さて、年末です。

年末と言えば大掃除ですが、せっかくなので情報環境の整理も行いたいところ。

今回は、いくつかの観点から整理のポイントを紹介しましょう。

媒体

まず、どんな媒体をインプット対象としているでしょうか。

書籍、新聞、雑誌、電子書籍、掲示板、ニュースアプリ、RSS、SNS……。

日常的に摂取する対象もあれば、演劇や美術館のように頓服的に摂取する対象もあります。

とりあえず、自分は一年間どんな媒体をインプット対象にしてきたのか振り返っておきましょう。

時間

次に、時間です。自分がどのくらいの時間をインプットに当てているか把握しているでしょうか。そしてそれは多いでしょうか、少ないでしょうか。

時間は限られた資源です。無駄遣いしても構いませんが、無駄遣いしていることくらいは把握してきたいですし、現状を変えたいならば、まず現状を認識しなければなりません。

1秒単位の事細かな記録までは必要ありません。何かのメディアを摂取している時間について考えてみてください。できれば、測定してみてください。

お金

さらに、お金です。自分がどのくらいの金額をインプットに当てているか把握しているでしょうか。そして、それは多いでしょうか、少ないでしょうか。

書籍、新聞、雑誌といったクラシックなインプット媒体だけでなく、最近ではストリーミングサービスや読み放題サービスもありますし、またある種のサロンに参加するのもインプットの一種と捉えられるでしょう。それらにどのくらいの金額を費やしているでしょうか。

私も一年間に使った書籍代などまったく計算したくありませんが(個人事業主は確定申告がそれを突きつけてきますが)、それでも一度ざっくりと金額を把握しておくことは有用です。無限にお金が湧いてくるわけではないのですから、何かに使ったら別の何かに使えなくなるのは間違いありません。

自分は、自分にとって優先度の高い対象にお金を使えているでしょうか。それを確認しておきましょう。

そして、質です。これが一番扱いにくいパラメータです。そこで、二つの側面から切り込んでおきましょう。

一つは、益です。実益と言い換えてもよいでしょう。どれくらい役に立ったか、あるいは満足を得られたか。それが高いほど良いことは言う間でもありません。お金も時間も突っ込んでいるのに、益が少ないなら切り替えるタイミングです。また、ものすごく益はあるけれども、それ以上のお金や時間がかかるなら、その対象も再考した方がよいでしょう。そのインプットをやめる代わりに、別のインプットを増やした方が、全体としての質が上がることは十分ありえます。

もう一つは、体験です。それを摂取しているときの体験はどうでしたでしょうか。それを摂取した後の体験はどうでしたでしょか。無料で楽しいけれども疲れるだけとか、モチベーションは上がるけれども、その後余計に落ち込んでしまう、といったことが多いなら、そのインプットが本当に必要なのかは一度じっくり考えた方がよいでしょう。

再構築

上記を諸々考慮すれば、来年の方針がなんとなく定まってくるのではないでしょうか。

「本をもっとたくさん読みたいけども、時間とお金が足りないので、イベントの参加を減らし、チェックするSNSを一つ止める」

こういう判断が下せます。

たいてい新年の目標は「本をもっとたくさん読む!」のような漠然とした(≒具体性を欠いた)文言になりがちですが、だいたいにおいて何かを増やすためには、何かを減らさなければいけません。しかし、そもそも何をしているのかを知らなければ、減らしようもありません。

また、単に列挙するだけでなく、それぞれの媒体についての評価軸も必要でしょう。それがなければ、選択は非常に困難となり、単純化した結論──「面倒だからこのままでいい」「○○は一切やめる」など──に飛びつきがちです。そういう極端さも、あまり良い結果は残さないでしょう。

大掃除のように一つひとつの対象のほこりを取り、再評価した上で、捨てるか残すかを考えていく方がよさそうです。

おわりに

インプットが過剰に押し寄せてくる現代だからこそ、定期的がメンテナンスは必要となります。でなければ、精神と知性のヘルスは、簡単に傷つけられてしまいます。

おそらく現代のポイントは、ひとかたまりの大きな時間の使い方ではなく、小銭のような小さい細切れ時間でしょう。そういう時間に侵入してくれるインプット媒体はたくさんあり、しかも光明です。

でも、自分がそれを求めているのかは、改めて考えてみる必要があるでしょう。ポケットの中の小銭は簡単に無駄遣いしてしまいますが、小銭時間も同じような傾向を持っています。

年末シリーズ


▼今週の一冊:

「創造性」は限られた人だけが持つ、特別な才能ではなく、訓練可能なスキルであり、しかも社会な現象でもあることを示す本です。『Evernoteとアナログノートによる ハイブリッド発想術』は、実施的にその話をしましたが、本書はより実証的にその話を展開してくれています。


▼編集後記:
倉下忠憲



現在原稿の「はじめに」をなおして、最終チェックに入っています。これが終われば初稿は脱稿で、いよいよ……というところなのですが、はたして年内に仕上げられるのかは微妙なところです。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中