※当サイトはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています。

本に感じる文脈から生成した選書リスト:「ネットワークの力とその付き合い方」

By: David GoehringCC BY 2.0


倉下忠憲読書は、気の向くままに新刊を読み漁り、ときどき集中して過去本を読み返すことがある倉下ですこんにちは(※元ネタ)。

私はあまり体系的に本を読むことはせず、気の向くまま、目に付くままに本を読んでいます。でも、結局の所ひとりの同じ人間が選んでいる本なのですから、何かしらの共通点が浮かび上がってくることも珍しくありません。

それに、まったく脈絡なく読んでいた本で、「あっ、これはあの本に書いてあったことと通じるな」と発見するのは、独特の面白さがあります。

というわけで、最近読んだ本で感じた「脈絡」を今回は紹介してみます。

出発点となる本

出発点となるのは、『ソーシャル物理学』です。

» ソーシャル物理学:「良いアイデアはいかに広がるか」の新しい科学


本書のテーマは「ネットワークの力」で、それが人々の行動にどのような影響を与えうるのかが、理論だけでなく実験の結果と共に開示されています。で、この本のテーマにつながる本が、いくつもあるのです。

が、その流れに進む前に、「分岐ルート」を示しておきましょう。

分岐:IoTとデータ

「社会物理学」__『ソーシャル物理学』で提示されている学問__は、人の行動を細かく記録し、データとして集められる機器によってその科学性を担保しています。すると、人とネットワークの関係に注目するルートとは別に、機器とデータに注目するルートもあるわけです。

最近読んだ本の中では、次の二冊がそのテーマを扱っていました。

» IoTビジネスモデル革命[Kindle版]

» IoTビジネスモデル革命


» ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える (講談社現代新書)[Kindle版]

» ネットフリックスの時代 配信とスマホがテレビを変える (講談社現代新書)


片方は、IoTがビジネスにどのような変化を与えるのかについて書かれています。もう片方は、動画配信にデータがどのように関わってるのかがわかる本です。

もし、もう少し「データと私たちの生活」について掘り下げたいのなら、次の本も参考になるでしょう。

» ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える[Kindle版]

» ビッグデータの正体 情報の産業革命が世界のすべてを変える


» ビッグデータ・コネクト (文春文庫)[Kindle版]

» ビッグデータ・コネクト (文春文庫)


分岐:ネットワーク

「データ」方向への分岐は終わったので、再び「ネットワーク」方向への分岐へと戻ってきました。

まず新しい方から挙げると『経済は「予想外のつながり」で動く』があります。

» 経済は「予想外のつながり」で動く[Kindle版]

» 経済は「予想外のつながり」で動く――「ネットワーク理論」で読みとく予測不可能な世界のしくみ


これはそのまま「ネットワーク理論」が扱われている本で、人の行動は経済学(あるいは行動経済学)が示すインセンティブモデルによってのみ決まるのではなく、ネットワークの力学もそこに無視できないほど関与している、という内容です。『ソーシャル物理学』ではインセンティブについてはほぼ言及されていませんでしたが、こちらは「両方を見据えることが重要である」と指摘されています。

続いては『偶然の科学』。

» 偶然の科学[Kindle版]

» 偶然の科学


扱われているテーマは幅広いのですが、私たちが直感的に理解している世界の構造__専門家の予想は正しい、歴史を教訓にする、偉大な作品は必ず成功する__はだいたいは間違っていて、「偶然」が大きな影響を持っている、というお話です。

この場合の「偶然」とは、ようは「AすればかならずBが起こる」といった予想を拒絶するような現象のことで、そこにネットワークの関与がイメージできます。

ちなみにこの本は、『急に売れ始めるにはワケがある』と一緒に読むとすごく面白いです。

» 急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則(ソフトバンク文庫)


さて、ネットワークが関与すると、「事前には予想もしえない大きなことが起こりえる」__毎回起こるわけではないところが、その予測不可能性をさらに強めています__のですが、そこに注目した本といえば、ご存じ『ブラック・スワン』です。

» ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質

» ブラック・スワン[下]―不確実性とリスクの本質


ただ、彼はちょっと頭が良すぎる感じなので、もう少し平易な内容だと次の本があります。

» 「無知」の技法 Not Knowing


ネットワークと付き合うためには、「わかりえないことが起こること」を受け入れなければいけません。つまり、無知であることを受け入れる必要があるのです。

もし仮に、無知であることを拒否しようとすると、あたかもネットワークを予想可能なもの、理解可能なものとして矮小化してしまう可能性があります。そうなれば、ことごとく間違った行動を取ってしまうでしょう。世界にはそうした間違いの事例が山ほどころがっています。

「Aのボタンを押せば、Bと表示される」といった単純なコントロールが効かないようなもの__それがネットワークです__と接するためには、「わかりえないもの」との付き合い方を学ぶ必要がありそうです。

さいごに

もちろん、ここで挙げたのはあくまで「私が読んだ本」だけです。「ネットワーク理論」に関する本は他にもいくらでもあるでしょう。ただし、これらの本を読んで私が感じた「文脈」(脈絡)は、今のところAmazonのアルゴリズムでは代替できないように思います。

というわけで、以上を選書リストとして活用していただければ幸いです。

▼編集後記:
倉下忠憲



書籍の執筆も佳境に入っております。あるいは佳境の二、三歩手前ぐらいかもしれませんが。当初は重くなりがちな筆も、ある程度進んでいくると少しずつ軽くなってきますね。これもネットワークの効果……ではないですね。はい。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。

» 知的生産とその技術 Classic10選[Kindle版]