読書は、新刊よりも過去に読み終えた本を改めて読み返すことが多い大橋ですこんにちは。
初めて読んだ時の心境や環境から大きく変化していればいるほど、読み返したときのインパクトが強くなります。
このインパクトを味わいたいがために読み返している、といってもいいくらいです。
最近読み返したのは、今から20年前に読んだ『ザウルスで仕事革命』(1994年刊行)という本。
ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、当時はザウルスという「先進的な」情報端末が存在し、ビジネスパーソンの間で大いにもてはやされていました。
まだ学生だったにもかかわらず、僕自身もこのザウルスの愛用者でした。
ちなみにPI-5000という機種です。
当時から時間管理やタスク管理に強い興味を抱いていたからです。
1日8時間のうちどれくらいの時間をプランニングすればいいのか?
以下は、『ザウルスで仕事革命』の一節です。
プランニングをする際に注意しておくべきことは、仕事には事前にわかっている仕事のほか突然やってくる飛び込みの仕事もあるのですから、1日8時間の就業時間をすべてプランニングしても、それは実現不可能なプランニングだということです。
実際には、8時間のうち数時間は、必ず事前にわからない仕事を処理するために費やされることになるからです。
それでは、8時間のうちどれくらいの時間をプランニングすればいいのでしょうか。
それには、みなさんが毎日どれくらいの時間を、事前にわからない仕事のために使っているのかを調べなければなりません。
今までの企業のコンサルティングや社員のトレーニングの事例を集計したところ、1日の就業時間のうち、平均で25%の時間が事前にわからない仕事のために使われているという結果が出ています。
さらに、この事前にわからない仕事が1日の70%を超す日は、1年のうちでも数日しかないということです。
これはどんな職種でも、どの企業でも、同じ結果になります。
実際にどれぐらいのパーセンテージになるかは、実際に記録してみて把握しておきたいところではありますが・・・。
“前向きな妥協”を行なう
上記の引用部分の内容を僕なりにまとめてみます。
レストランを経営しているオーナーになったと想像してみてください。
- 営業時間内で、メニューにない料理を注文してくる客が10人中2、3人いる。
- 1年のうち数日はその数が10人中7人以上になる。
ここから言えることは、以下です。
- メニューにある料理をきちんと作ることができれば、10人中7、8人の客に満足してもらえる。
もちろん、「これ作って!」というリクエストに応じることは、相手の満足度をアップさせることにつながります。
認めてもらえるわけですから、がんばりたくもなるでしょう。
でも、果たしてそれを安定的に続けられるかどうかが気になります。
そこで、リクエスト通りではなかったとしても、それに近い料理をあらかじめ用意しておくという“前向きな妥協”というチョイスが登場します。
“前向きな妥協”を選ぶことで、10人中7、8人の客、すなわち大多数に満足してもらえるようになります。
「事前にわかる仕事」を増やせ!
とはいえ、
「うちの職場は“わがままな客”が多いんだよ」
ということで、メニューにない料理を注文してくる客の比率がもっと高いケースもあるでしょう。
つまり、計画を立てることが“賽の河原積み”のように感じられる状況。
計画を立てたそばから突き崩されるのです。
そこで、重要になってくるのが、現状において「メニューにない料理」すなわち「事前にわからない仕事」がどれくらいの頻度で発生しているのかを把握することです。
つまり、記録をとって確かめるのです。
TaskChuteであれば、見積り時間が空白の行が「事前にわからなかった仕事」ということになります。以下の赤枠のような状態です(見積り時間が空白で、実績のみに値が入っている状態)。
これを把握することで次のようなことができるようになります。
- 「事前にわかる仕事」が明確になるので、これを予定どおりに終わらせようとする動機が得られる
- 「事前にわからない仕事」でも、どういう時期にどのように発生するかの傾向は掴めるので、次回に備えることができる
レストランでいえば、リクエストの多い料理を公式メニューに採用する、ということになります。
同時に、ほとんど注文のない料理をメニューから除外します。
こうすることで、メニューが充実するとともに、メニューにない注文に応じるための余力も生まれます。
すなわち、「事前にわかる仕事」をリピートタスクとして取り込むことで、予定時間内にこなせるようになり、そこで得られた余力で、「事前にわからない仕事」にも無理なく対応できるようになるわけです。
メニュー化(=ルーチン化)を進めつつ、あまり注文のないメニュー(=ルーチン)を削減していく、というスクラップ&ビルドを絶えず繰り返すことになります。
メニューを減らせ!
これに似た話が最近読んだ以下の本(こちらは新刊)にありました。
「こんなに品数増やしちゃったら、たまにしか出ないメニューのために仕入れて結局無駄になって捨てる食材も相当あるんじゃないの? そういうの、『在庫ロス』っていうんだけど。たぶん原価率50パーセントぐらいになってるんじゃないかしら。そもそもあなた、原価率ちゃんと計算してる?」
「原価率って、値段の中に含まれる食材の仕入れ価格の割合ですよね?」
「そうよ。通常の飲食店の原価率はだいたい30パーセント前後ね。ものすごく簡単にいうと、売上から原価を引いた金額が『粗利』になるでしょう? そして粗利から家賃などの経費を引いた額が『利益』、つまり「儲け』になる。儲けるためには、売上を上げるか、原価や経費を抑えるというのが基本的な考え方よ」
「ああ、でも、僕、原価率を低くして儲けるとか、そういう考え方あんまり好きじゃないんですよね。だって、お客さんのためにならないじゃないですか」初めてささやかな抵抗をしてみたつもりの洋介だったが、それに対して、女性は逆に優しい口調で、かみくだくように言った。
「あのね、原価率が高いことが悪いっていうわけではないのよ。原価率が高くても、そこにちゃんと戦略があるなら全然問題ないわ」
「戦略? ですか?」
このようにストーリー仕立てで「儲けの仕組み」の作り方がわかりやすく解説されています。
最終的にはメニューをギュッと絞り込むことで、主人公である「洋介」は大成功を収めるのですが、このプロセスは、時間管理にも応用できるところがあると感じます。
言ってみれば、「ムダな忙しさから開放されて、自由に使える時間が増える仕組みを作ろう」というわけです。
時間とお金はお互いに似たところがあり、両者で共通して使える方法論があります(もちろん、どちらか一方でしか使えないものもあります)。
今回ご紹介した「メニューを減らす」はその1つです。時間でいえば1日に取り組むタスクの種類を減らすことで、タスクの切替に要する時間と手間(精神的なパワー)を節約できるため、トータルのリターンを増やすことができます。
時間におけるリターンとは、自由に使える時間、です。
そんなお金と時間を対比させながら楽しく読めた一冊でした。
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» 400円のマグカップで4000万円のモノを売る方法―――「儲けの仕組み」が、簡単にわかる!