- スケジューリングによって、中断しない時間を確保できているか?
- 緊急タスクが発生した現場で、応急措置をほどこしているか?
- 八割できたら、他の仕事に着手できるか?
- 意識的に寝かせる時間がとれているか?
- 所要時間が不確実な案件を先に入れているか?
参考図書『「超」整理法〈3〉タイム・マネジメント』(野口悠紀雄著)
本書の初版が出たのは1995年と、いささかさかのぼるのですが、内容は決して古びていません。FAXが頻繁に登場する本でありながら、メールとインターネット全盛の時代にも、十分通用する好著です。
メインテーマは言うまでもなくタイムマネジメント、すなわち時間管理術ですが、より細かく言えば、スケジューリングの技術でしょう。本書の発刊をきっかけに、有名な「超」整理手帳が販売されるようになったわけですが、この本が初めて世に出た時には、まだそんな手帳もなかったわけです。
この本を私が読んだ時には、まだ学生だったのですが、それ以来上記の「ルール」を、どれくらい自分のものにできているか。それを検証しながら紹介していきたいと思います。
1.スケジューリングによって、中断しない時間を確保できているか?
スケジュールする目的のひとつはこれでしょう。計画を立ててもその通りに行くことはまずないのだから、計画を立てる意味などないという人もいますが、計画を立てないと、すべてを記憶に頼ることになります。
しかし人間の記憶力はそんなに素晴らしいものではないため、3週間から4週間もの予定と仕事を見通せるものではありません。したがって記憶だけに頼ると、たとえばある仕事の締め切り間際に、別のうち合わせに出る約束をするなど、なんでもない計画すらうまく立てられなくなります。
仕事も初動のうちであれば、企画を練ったり、アイデアを拾ったりする内容がほとんどのため、「細切れ時間」でも有効活用できるのですが、たとえば「最後の仕上げ」は、それほど大事なことでなくても、まとまった時間が必要になります。そのような時期に、時間を分断するような「約束」をするのは、避けたいところです。
ちなみに私自身は、OutlookとiTouchを同期させ、折に触れこれを見返すことで、この問題に対応しています。
2.緊急タスクが発生した現場で、応急措置をほどこしているか?
「応急措置」はその時々で変わってくるでしょうが、ご存じの通りこれをしておくと、後々の自分を助けます。たとえば、「請求書」が届いた時に、封を切らずとも「所定の位置」に投げ込んでおくことなどは、「応急措置」でしょう。
これを講じておかないと、さして広い仕事場を持っていなくても、「たしかに見たはずの書類がない」という不思議な現象に見舞われます。
「所定の位置に置く」というのは、「応急措置」の基準として、よい基準だと思います。後で見返す保証をそこで確保できますし、すぐに本来の仕事に戻れるからです。中断での「応急措置」にのめり込むと、仕事は遅れます。(たとえばメールの返事を、受け取ったその場で書いてしまうなど)。
3.八割できたら、他の仕事に着手できるか?
なぜこうするかというと、第一に「仕上げる」のは大変だからでしょう。第二の理由は、「仕上げ」を拒否される可能性を排除できないからです。
仕事は誰かに「承認」される必要があるため、「完成させた」としても、それを突き返されれば、「未完」に戻ってしまいます。このダメージは大きいので、慎重にならざるを得ないわけです。
そのうえ、「他に全く未着手の仕事がある」のなら、「少しだけそれに取りかかっておく」と、後の自分を大いに助けます。これは一種の「応急措置」と言えるでしょう。
なお私はこれを実践するために、基本的にブログは前日に書くことにしています。「完成」させてもアップは一日後のため、比較的雑なところでも切り上げられるのです。
4.意識的に寝かせる時間がとれているか?
3とこの項目が関係していることは、明らかです。つまり、八割のところでストップして、「間を空ける」のです。
こうすることで、たとえばブログのような「他人の承認」がある程度必要だけれども、それを実際に「承認してくれる」人が身近にいるわけではない仕事を、「未来の自分で判定」することができます。
昨日の晩に思いついたとても面白いギャグを、朝になって思い起こしてみるとまるで面白くない、ということが時々あります。表に出さず、「寝かせて」おけば、余計な恥をかかずに済むというものです。
「寝かせる」効用はそうした事故を防ぐ意味にとどまらず、「続きを書く」ことで、とてもいい発想につながることがままあるのです。睡眠中に記憶が整理されるという脳科学の仮説が連想されますが、そういったこともあるため、一日で仕事を仕上げてしまうことができる場合でも、二日かける意義は大いにあります。
5.所要時間が不確実な案件を先に入れているか?
これは当然のことですが、この1項目だけのためでも、「計画」を立てる必要があるわけです。計画を立てないと、所要時間が不確実な案件がいくつあるのかさえ、はっきりしません。
さらに、「所要時間の不確実な案件」とは、一般的に「時間が長くかかる案件」です。そのような「巨大案件」は分割するのが原則です。
「巨大な案件」を分割するということは、すでに計画の始まりです。全体をいくつに分けて、何日で終わらせる予定なのか、分割された項目を何日の何時頃やるのかという話になってこざるを得ないからです。
この5つのチェックリストが、自然と頭にのぼってくるようになると、スケジューリングは楽に、効率的にできるようになります。私自身は、『「超」整理手帳』を使っていませんが、この本から学んだことは大いに役に立っていると思います。
本書にはこのほかにも、タイムマネジメントを考える上で、とても面白くてためになるアイデアがたくさん詰まっていますので、一度お読みになることをお奨めします。『レバレッジ時間術』などと読み比べてみると、色々と考えるきっかけになります。