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苦手な仕事に取りかかるには?



大橋悦夫エンジニアのための時間活用術、第18回です。

比較的すぐに取りかかれる得意な仕事がある一方で、締め切り間際になるまで後回しにしてしまう苦手な仕事もあります。多くの場合、苦手な仕事の方が重要であり、避けて通れないものです。

とはいえ、キャリアにおける成長は苦手な仕事をいかに乗り越えたかに左右されるのではないでしょうか。

そう思えるのは、僕自身がこれまでの仕事を振り返った時に、「あの時がターニングポイントだった」といえるタイミングには必ず、当時苦手としていた仕事に挑戦していた、あるいは、不可抗力的に挑戦させられていたからです。

例えば、僕の最初のキャリアはプログラマーでした。黒地に緑色の文字が踊る画面(COBOLという言語でした)に向かって淡々とプログラムを書き、それを紙に打ち出しては赤ペン片手にチェックをする毎日。

そんな中、上司は時々客先に出かけていって、交渉や折衝や提案をしているようでした。さながらプログラマーという雛たちを育てる親鳥のようです。

実際、僕をはじめとするプログラマーたちは上司が客先から持ち帰ってくる仕様書に沿って仕事をしていましたから、まさしく親鳥です。

そんな“親鳥”を見ていてつくづく感じていたのが、自分には上司のような役回りは到底できない、ということでした。

何よりも人と話すのが大の苦手で、場の空気を読んだり、腹の探り合いをするといった「コミュニケーション科目」はからっきしダメなのです。

それゆえ、仕様書に従ってひたすらプログラムを作るという日々はそれなりに満足していました。

そんな“平和”な日々は突然の部署異動によって終わりを迎えます。

苦手な仕事に取りかかるための2つのコツ

その部署とは、社長直轄のプロジェクトで、直属の上司は社内のナンバーツー、メンバーは僕一人だけという小所帯。

社長のコンサルティングをサポートする部署(というよりチーム)で、僕自身はアシスタント的な役回り。プログラミングから離れ、代わりにドキュメント作成や社内研修の講師といった今まで経験のない業務に携わることになります。

ドキュメント作成はまだしも、社内研修の講師はたいへん荷の重いものでした。それでも、研修の内容は独学で身につけた得意のExcelのマクロ言語である「VBA」でしたから、その点では救いがありました。

結論からいえば、この異動によって社内研修とはいえ講師として人前で話す場数をたくさん踏ませてもらえたことは、僕にとってターニングポイントになりました。

このように異動という不可抗力があったからこそ、人前で話すという僕にとっては十分に大それたことに取り組めたのだと思います。

このことから、苦手な仕事に取りかかるためのコツとして次の2つが挙げられます。

  • 1.環境の力を借りて印象を変える
  • 2.他人を巻き込む

1.環境の力を借りて印象を変える

人は相手が人であれ物であれ、まずはその印象にとらわれるものです。自分にとって良い印象であれば自然と前向きな言葉や行動が引き出されますし、良くない印象であれば踏みとどまるわけです。

でも、仕事においては、どんなに苦手な人でも自分の部下であれば接触を避けるわけにはいきませんし、苦手な仕事でもやらなければならないことはあります。

そのようなときにすべきことは、印象に逆らって無理をするのではなく、印象そのものを変えてしまうことです。

とはいえ、一気に距離を縮めようとするのは失敗のもとですから、少しずつにじり寄るというアプローチが良いでしょう。

例えば、人前で話すのが苦手という場合は、いきなり100人の聴衆を相手によどみなくプレゼンをこなすところを目指すのではなく、まずは3人の同僚を相手に1分だけ、自分が話したいことを話してみることから始めるのです。

ゴールをどこに置くかにもよりますが、まずはすぐに達成できるくらいの小さな目標を決めて、これを確実に仕留めることです。目標の大小に関係なく、自分で決めたことが達成できれば、人は自信を持つものです。

これを繰り返していくことで、時間はかかりますが、人前で話すことに対する恐怖は薄らぎ、印象も変わっていくはずです。逆に言えば、何も行動を起こさなければ一生印象は変わることはない、ということです。

あるいは、僕にとっての異動がそうであったように、自分では抗いようのない力に身をゆだねてしまうのも1つの方法です。

この場合は、印象を変えざるを得ない形に持っていくことになります。ややショック療法に近いところがありますが、ケースバイケースで先の少しずつにじり寄るアプローチの方がダメージの少ない場合もあります。

結局のところ、多少の「痛み」は避けられませんので、そこを先行投資と割り切れるかどうかでしょう。

2.他人を巻き込む

自分一人ではいくらでも言い訳を重ねて先送りできることであっても、一緒に取り組む仲間がいればそうはいきません。人は一人から二人になった瞬間からチームです。自分一人であれば、決めたことを覆すのは自由ですが、二人で始めれば、決めたことに責任が生まれます。

「この日までにこれを決めよう」「その次はこうしよう」と、自分の中にとどめていた決め事を相手に宣言することになるため、やらざるを得なくなる(やらないでいると相手からの信用が損なわれるリスクにさらされる)わけです。

さらに、途中までできたところで、その経過を見せ合う(レビューしあう)ことによって、やり続けるモチベーションを絶えさせないようにすることができます。

例えば、職場の同僚と二人でそれぞれの仕事の直近の見通しを交換しあうようにする。お互いに相手の仕事について関心を持つようになりますから、相手の仕事に役に立ちそうな情報があれば、自然とそれを提供しあうという副次的な効果もあります。

このブログの執筆陣の一人、佐々木正悟さんとは2006年から一緒に仕事をする“同僚”になり、今年で13年目に入りました。

週に2回ほど、Zoomでオンラインミーティングを行っていますが、まさにこのミーティングが僕と佐々木さんの仕事のエンジンになっています。

ミーティングに向けて、それぞれの分担作業を仕上げ、ミーティングの中ですり合わせを行います。

  • 次のセミナーでどんな話をするか
  • それぞれがどのパートを担当するか
  • いつまでに資料を完成させるか
  • 新たに始めたいプロジェクトについて
  • もうやらなくてもいい共同ルーチンについて

などについて、ミーティングの中でどんどん詰めていきます。「決めるべきこと」が次々と決まっていくのも爽快ですが、それ以上に「もうやらなくてもいいこと」を減らせることは実に重要だと感じます。

ミーティングは仕事の駆動装置であると同時に、整理装置でもあるわけです。

まとめ

環境や同僚といった、自分の外にある不可抗力を活かすことで苦手な仕事の難易度を下げることができます。

以下の記事で書いた3つの効果のうち「地形効果」と「支援効果」がこれに当たるでしょう。


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