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やっつけ仕事の発生を防ぐには?



大橋悦夫エンジニアのための時間活用術、第17回です。

前回は、大きな仕事を一気に片付けようとするのではなく、ほどよい大きさのフェーズに分けて、1つのフェーズにつき1日をあてて取り組むことによって、無理のないペース配分で仕事を進めることができる、という話を書きました。


一気に片付けるとは、「気合い」や「勢い」や「やっつけ仕事」といった不確定要素に頼る方法です。たくさんの仕事をこなしたという実感は得られても、自分なりの仕事のやり方を確立することは難しいでしょう。

常に行き当たりばったりで仕事をすることになり、「本当に締め切りに間に合うだろうか?」という不安と背中合わせになってしまうからです。

そもそも、なぜ「やっつけ仕事」に陥ってしまうのでしょうか。今回はこの問題について考えてみます。

「持ち時間」と「持ち仕事」のミスマッチ

例えば、朝9時に出社し、定時の18時に退社するという場合、「持ち時間」は8時間です(昼休み1時間を除く)。

このとき、8時間に対して、抱えている仕事である「持ち仕事」に要する時間が8時間を超えている場合、超過分がそのまま残業時間あるいは翌日以降に繰り越されることになります。

持ち時間を「手持ち資金」、持ち仕事を「買掛金」と置き換えれば、支払い余力以上にクレジットカードで買い物をしてしまった状態といえます。残業という「借金」をすることで何とか支払おうとするわけです。

このような事態を防ぐには次の2つの方法があります。

  • 1.「安く買う」(短い時間で仕事を片付けられるようになる)
  • 2.「払える分だけ買う」(「持ち時間」以上の仕事を引き受けない、断る)

1.は仕事のスピードをアップさせることであり、2.は仕事そのものを減らすことです。

いずれの方法も、「持ち時間」と「持ち仕事」をバランスさせようとする行為ですが、現実問題として、2.は自分の都合だけでは決められないことが少なくありませんから、どちらかというと1.のスピードアップが求められることになります。

長距離走より短距離走

仕事のスピードをアップさせるコツは、一回あたりに走る距離を短くすることです。長距離走では先が長いので、あまりスピードは出せませんが、短距離走であればゴールはすぐそばですから全速力を出すことができるからです。

具体的には、大きな仕事(長距離)を小さな仕事(短距離)に分割することです。これは、前回書いた、「フェーズに分ける」ことに該当します。

時間で考えても、「あと3時間ある」という場合と「あと15分しかない」という場合とでは、後者の方が「早く取りかからなくては!」と感じるはずです。

逆に「3時間ある」と言われれば「長丁場なので、とりあえずコーヒーで一服してからにしよう」などと、油断しやすくなります。

要するに、「すぐに走り始めなければ!」と思わせるに足る状況を作ることによって、取りかかるまでのアイドル時間を小さくしようというわけです。

やっつけ仕事を防ぐには?

時間はお金に似ています。たくさんあれば気が大きくなって無駄遣いをしがちですし、少ししかなければ大事に使おうとします。

この点についてはお金を節約するノウハウがそのまま時間を節約するうえでも役に立ちます。

例えば、お金をおろすのは毎週金曜日の週に1回限りとし、金額は5万円とする、というルールを作ったとします。

このルールに従っている限りは、どんなにがんばっても1週間に使えるお金は5万円です。

もし、ある週は3万円しか使わなければ残りの2万円は翌週に繰り越すことができ、翌週は7万円使えます。それでも、月間のトータルとしては20万円に収まります。

ルールを変更して、お金をおろす頻度を月に1回、金額を20万としたらどうなるでしょう。

今までは1週間という枠でやりくりしていたところが1ヶ月(4週間)と4倍になります。1週間であれば簡単に見通せたところを、1ヶ月になると難しくなるでしょう。

「1週間5万円」時代であれば、仮に週前半でお金を使い込んでしまったとしても、数日間を何とかしのぐことができれば、次の5万円が手に入ります。

でも、1ヶ月20万円となると、一度空けてしまった穴は容易には埋めることができません。

すると借金に走ることになります。時間でいえば、残業であり、もっとひどいと徹夜ということになります。このように本来あるべきペースを乱すことによって生じるのが「やっつけ仕事」というわけです。

「やっつけ仕事」の発生を防ぐためには、本来あるべきペースで時間を使えるように、すなわちトータルで足が出ないように、持ち時間を細かく刻んで大事に使うことです。すなわち、短距離走に持ち込むようにするわけです。

「今日は終日ずっと外出予定も会議もない」という日は、一見すると仕事がはかどりそうに感じるかもしれません。

でも、外出や会議などの、自分では動かせない予定がほどよく入っていたほうが、時間が分断されて「短距離走」の状態に近づくことができ、かえって仕事がはかどることがあります。

むしろ、終日を自分の都合で使えてしまう方が「長距離走」になるため、時間を有効に使えない可能性もあるのです。

僕自身は、終日を自分の好きなように使える日は、次のように3つのパートに分けるようにしています。

  • 1.早朝 :メールのダウンロードなどオンラインでないとできない仕事
  • 2.午前中:カフェに移動してネットにつながずにオフラインで集中して仕事
  • 3.午後 :打ち合わせやネットでの情報収集など比較的のんびりとできる仕事

ポイントは2.の午前中の時間の使い方です。わざわざカフェに移動して仕事をするのは、こちらで書いた「環境ドリブン」の効果を狙ってのものです。

これに加えて、ノートPCをバッテリーで動かすことになるため、それが締め切りとなってイヤでも集中できるのです。ネットにもつなぎませんから、メールに邪魔されることもありません。

このように一日を3つの短距離走に分けることで、それぞれのパートでスピードアップを図っているわけです。

お金の原則の多くはそのまま時間にも当てはまる

いま、時間とお金の類似性について書きましたが、僕がこの類似性に気づくきっかけとなったのが『ベンジャミン・フランクリン 富を築く100万ドルのアイデア』という本です。

本書に以下のような一節があります。

カンに頼るよりも記録をもとに判断する

冬の間、山や川の源流にどれくらい雪が降ったのかを知っていれば、夏の間にどれくらいの水を使うことができるのかを予測することができます。

同じように、あなたが過去におけるお金の使い方を記録していれば、将来の支出の予測も立てやすくなります。

この本を読んだのは、社会人1年目の冬、1997年2月15日~18日の間でした。

これに先立つ2週間前の2月1日。どうしても欲しいノートパソコンがあり、当時の収入では手が届かなかったので、生まれて初めてクレジットカードの分割払いで購入(東芝のリブレット30という小型ノートです懐かしい!)。


当然、分割手数料が上乗せされましたが、そのぶん早く手に入るということで、受け入れていました。先の引用からいえば、降った“雪”以上の“水”を使ったことになります。

その後もついつい分割払いで買い物をしては、資金繰りに窮するという痛い目に遭うことがしばしばありました(借金に手を出さなかったのは不幸中の幸い)。

でも、お金に困るという体験は僕にとっては得がたいものでした。

なぜなら、ここから「時間にも同じことが言えるのではないか?」という着想が得られたからです。

「明日の朝早く起きてやろう」 → 本当にやれる?

時間は何もしなくても毎日“降って”きてくれます。どれぐらい使うことができるかは毎日一定です。予測するまでもありません。

どれだけの時間が使えるのかは明白なのですから、あとは何もしなくても(やむを得ず)失われる時間をここから差し引けば、現実に使える時間が弾き出されます。

ほんの一日でもいいので、朝起きてから寝るまでの時間の使い方を分単位で記録してみると、

「使える時間がぜんぜんない!」

ということが強く実感できるでしょう。

「夜にやればいいか」
「明日の朝早く起きてやろう」

といった自分との約束がほとんど履行されないのも頷けるところです。

これを覆すためには、睡眠を削るという“手数料”を支払うしかありませんが、この方法はとうてい長続きするものではありません。

結局、毎日“降って”くるだけの時間の中でやりくりするしかないわけです。

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ベンジャミン・フランクリン 富を築く100万ドルのアイデア

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