「知的生産の技術」についてまとめたい、という思いがあります。
その思いは「企画案」として萌芽し、「出版」という形で結実するのですが、問題はその企画案です。もう少し言えば、その企画案の切り口です。
さきほど確認したら、この「R25の知的生産」の連載記事は、456個ありました。かなりの数です。そして、これだけ数があれば、その切り口もまた膨大になります。
「さて、どのようにしてまとめるのか」
これについて考えました。三週間ほど考えました。
しかし、結論が出なかったので、この記事を書くことで、考えを整理してみます(これを「書くことで考えるメソッド」と呼んでおきましょう)。
大きな方向性
まず、企画案の大きな方向性です。これについては二つ思いつきました。
- 大全的アプローチ
- 入門書的アプローチ
「大全的アプローチ」は、知的生産の技術を網羅的に紹介するものです。一つの流れある話というよりは辞書的な在り方で、どこからでも読める、逆引きできる、というのが特徴になるでしょう。
一方で、「入門書的アプローチ」は、知的生産の技術を身につけていくためのステップを意識して紹介するものです。頭から終わりまで通して読むことを想定し、徐々に知識を身につけていくための、一種の教科書的役割を目指すものです。
どちらも意義あるまとめ方と言えるでしょう。しかし、そうであるがゆえに、決定打に欠けます。もう少しの検討が必要です。
大全的アプローチ
大全的アプローチの特徴は、その網羅性です。「この一冊を読めば、これについてはだいたいフォローできる」という知識の重厚感がウリになります。おそらく何度も参照されて、利用されるタイプの本となるでしょう。
しかし、それがそのまま弱点にもなります。厚みが増え、ページ数が増え、値段が上がり、読み通すのに気力が必要となります。なにしろ、「知的生産の技術」というのは広大なフィールドです。メモの書き方、ノートの取り方、文章の作成、発想法、思考法、情報整理などなど、かなりの領域をフォローしなければ、「知的生産の技術」をまとめたとは言えません。
また、網羅的であるからこそ、他の本との重複が出てきます。たとえば、『アイデア大全』『ライフハック大全』『問題解決大全』『知的生活の設計』などですでに紹介されているノウハウが、この大全にも多く記載されることになるでしょう。そして、それらの本に比べれば、一つひとつの項目の掘り下げは小さくなるかもしれません(なにせ全体の数が多いのです)。
こうして考えると、「大全的アプローチ」で進めるためには、相当に腹をくくる必要がありそうだ、ということが見えてきます。幅広い領域をカバーした上で、少々の重複など気にならないくらい(≒重複が少々だと思えるくらい)にコンテンツを充実させること。それがクリアすべき最低限の課題と言えそうです。
入門書的アプローチ
では、入門書的アプローチはどうでしょうか。
入門書的アプローチの場合、網羅的にすべてを記載する必要はありません。むしろ、入門者にとっては、そのような記載は学びを妨げる要因になりかねないので、限定した方がよいくらいです。
そうすると、入門書的アプローチの方が大全的アプローチよりも簡単に思えますが、話はそう簡単ではありません。選別と順番の問題があります。
網羅的に載せなくていい、ということは「どれを残し、どれを削るのか」を判断しなければいけないことを意味します。もちろん、大全的アプローチでもその選別は行われますが、それよりもずっと大きいジャッジメントが入門書的アプローチでは待っています。取っつきやすいものと、奥行きのあるもの。それらのバランスを考えて配置しないと、内容が偏ってしまい、入門書としての十分な機能ははたせないでしょう。
また、選別が終わったら、次にそれらを配置しなければなりません。どんな順番で、どんな風に要素を並べていくのか。その決定は、大全的アプローチよりも大きな意味を持ちます。組み方を誤れば、まったくぜんぜんわからない本になってしまう可能性すらあります。それは避けたいところです。
というわけで、入門書として機能するコンテンツの選別と順番の決定。それが入門書的アプローチでのクリアすべき最低限の課題と言えるでしょう。
おわりに
こうして記事にしてみると、ずいぶん見通しがよくなりました。それぞれの企画にはメリット・デメリットがあり、それらを整理してみないことには、前には進めません。
もちろん、今回整理したことだけで企画案を決定できるものではありませんが、それでも書き始める前には考えてもみなかったことがいくつか手に入りました。たとえば、「アイデア」「問題解決」「ライフハック」という言葉に比べると、「知的生産」(あるいは「知的生産の技術」)という言葉の認知はあまり高くありません(そうだろうと推測します)。
となれば、そのまま「大全」を作っても、あまりリーチはしないでしょう。では、どうすればリーチするのか、ということも含めて、引き続き「知的生産の技術のまとめ方」について考えたいと思います。
▼今週の一冊:
『小さなチーム、大きな仕事』の著者らが送る、「穏やかな会社」の作り方です。
この本を読んで抱く感想はいろいろあるでしょうが、「いいな〜」というのは共通しているのではないでしょうか。
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勝手に勘違いして、3月末に発売かな〜と思っていたら、2月末の運びとなりました。「タスク管理」+「新書」という珍しい組み合わせになっております。どうぞ、よろしくお願いいたします。
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▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中。