以下の続きです。
» プロの伝え方に触れて、改めて伝える力のすごさを実感した話
先週末に「パトリオット・デイ(2017)」という映画を観てきました。たまたまラジオを聴いていたときに耳にした、いわゆるラジオCMでこの映画のことを知り、何となく気になって実際にはどんな映画なのかをネットで調べてみたら「あぁ、これは観よう」ということで、その日の晩の上映回のチケットをネットで申し込みました。
我ながら、いくつか驚いたことがあります。
- 映画の宣伝なのに映像なしの音声のみでも十分に効果がある!( ← 前々回)
- おなじみの役者が出ていると観に行くハードルが下がる!( ← 前回)
- チケットを買ってしまうともう後に退けない!( ← 今回)
今回は最後の「チケットを買ってしまうともう後に退けない!」について。
応分の報酬を用意する
ひとたび「今やらなくてもいい」となると、絶対に着手しないのが人間です。
とはいえ「今やらなければならない」となっても、そのプレッシャーが強すぎればやはり着手できません。
「それだけのプレッシャーを乗り越えるのだから、相応の報酬がないとね」という“不均衡の是正”を無意識のうちに求めるからでしょう。
つまり、常に応分の報酬を用意してあげればいいわけです。
この考え方を知ることになったきっかけは、今から25年ほど前の、大学受験を控えた頃に読んだ以下の本です。
» 難関大学も恐くない 受験は要領 たとえば、数学は解かずに解答を暗記せよ (PHP文庫)[Kindle版]
私は高三のときに、200本以上の映画を見た。週二回は二本立て館に出かけたわけで、周囲からは「いつ勉強しているのかしら」と思われただろう。
しかし、この、週二回は映画館に行くという“遊び”が、私の学力を確実に伸ばしてくれたのだ。そのカラクリはこうである。
まず情報誌を見て、映画を見に行く日を決める。そして、それまでに暗記すべきノルマを自分に課すのである。そして、それが終われば映画を見に行ってよし、完了しなければ映画はおあずけということを自分で決めるのである。
私は当時、たいへんな映画フリークだったから、これは効いた。限られた時間内に、徹底的に集中し、つめられるだけのものをつめこんだのだ。
また、受験生の小遣いでは、一年に百回も映画を見られない。だから、母親に理由を話して、自分がやることをすました日には、すこし“ボーナス”を出してもらっていた。これも、自分の努力へ成功報酬を用意したことにほかならない。
そして映画を見て帰ってきたら、またつぎに映画を見に行くまでの三~四日間の目標を設定するのである。そしてふたたび暗記に没頭する。一年間、これを繰り返したことで、私は理IIIを現役突破できたと確信している。
映画を観に行きたければノルマをこなすべし、ノルマをこなせば映画に観に行ってもOK、というわけです。
ただ、この方法の問題点はひとたび「今日中にノルマをクリアするのはムリ」と諦めてしまうと、そこで終わってしまうことです。つまり強制力が弱いのです。
そこで、先にチケットを買ってしまうようにします。しかも、指定席のチケットです。
こうすることで、ノルマがクリアできないと、映画を観に行くことができないばかりか、購入したチケットがムダになるというリスクが生じます。
チケット代は1800円程度ではありますが、されど1800円。
失わずに済むならそれに越したことはありません。
きちんとノルマをこなせたなら、1800円を失わずに済むのに加えて、楽しみにしていた映画が観られるという特典を享受できます。
損をせずに済んだうえに得もできるというコンボが強力に背中を押してくれるわけです。
コントロールを手放す
実際、今回の「パトリオット・デイ」を観に行こうと決めたときも、その場でチケットを注文しました。21時からの回しかなかったのですが、むしろその方が都合が良く、ギリギリまで仕事に取り組むことができます。
以下の記事にも書いたとおり、自分では動かせないリミットを設定してしまうことがカギになります。すなわち、コントロールを手放すということです。
なかなか取りかかれない仕事というものがあります。実はこの「取りかかれない」という部分に問題があります。取りかかるか否かは自分の裁量に任されているという「問題」です。自分の都合でいかようにもできてしまうがゆえに「後でもいいか」とずるずると先延ばしを重ねてしまうのです。
対策はシンプルにこの裁量権を返上してしまうこと。
ただ、リミットを設定しただけでは足りない場合もあります。そんなときは今回ご紹介したように「楽しみ」を加味することでこれをテコに自分を動かすわけです。
もちろん、こういったレバレッジをかけずとも「やろう」と決めたことができるのが一番なのですが、レバレッジがかかっていればより確実になります。
僕の場合は映画でしたが、もちろん映画以外でもOKです。「これを賭けると俄然やる気になる!」という「定番ブースター」を持っておくと良いでしょう。
» 難関大学も恐くない 受験は要領 たとえば、数学は解かずに解答を暗記せよ (PHP文庫)[Kindle版]
» 難関大学も恐くない 受験は要領―たとえば、数学は解かずに解答を暗記せよ (PHP文庫)
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