Giveaway of the Dayという、ソフトウェア販売サイトがあります。単なる販売サイトとはひと味違う、非常に「そそる」一工夫がほどこされており、これがこのサイトのエッジとなって、人を集めるだけでなく、サイトの目的である「実際に使ってもらう」という行動を促すことに成功している、ように見えます。
さらに、この考え方を応用すると個人のタスク管理、特にタスクの先送りを抑えるうえで役に立ちそうです。
「第一発見者」にならなければ無料権は得られない
まずは、サイトの説明。
- 毎日1本ずつソフトウェアを公開
- ソフトウェアは公開から24時間以内なら無料使用可能(機能制限なし)
- 無料なのは、ダウンロードしてから24時間以内にインストールした場合
- つまり、インストールしてしまえば、自由に使用可能(商用利用はNG)
- 翌日になると前日に公開されたソフトウェアは有償販売
ややややこしいですが、要するに無料でソフトウェアを利用するためには、
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- 1.毎日Giveaway of the Dayにアクセスし、
- 2.その日のソフトウェアに興味があればダウンロードし、
- 3.24時間以内にインストールして、使ってみる
という行動が求められるわけです。
仮にある日のソフトウェアがソーシャルブックマークなどWeb上で話題になったとしても、それに気づいた頃には手遅れになっている可能性が非常に高いことになります。
自分が「第一発見者」にならなければ、無料で楽しむ権利が得られないからです。
サイトとしては、公開した途端にたくさんのユーザーが速攻でダウンロードして試用してくれる、という「場」を提供できるという強みを活かして、ベンダーを集めやすくなるでしょう。ベンダーが集まれば、より良いソフトウェアが掲載される可能性が高まり、そうなるとますます多くのユーザーが集まる、というナイスなスパイラルが目に浮かびます。
ここで注目すべきは、ユーザーの行動を強力にドライブするその考え方です。ざっくりとまとめると、このサイトは次の2つのことをユーザーに仕向けており、ユーザーは喜んでそれに従ってくれそうです。
- 毎日サイトをチェックする習慣をつけてもらう
- 良さそうなソフトなら24時間以内に試してもらう
たまに訪れて、何か良さそうなソフトがあればダウンロードして試してみる、という人や、ダウンロードしても「あとで試す」ということでHDDにアーカイブされたまま放置している人を行動に駆り立てることができるわけです(とりあえずインストールだけして後で試す、という抜け道もなくはないですが…)。
仕事の先送り対策にも応用できる
そして、この考え方は仕事における先送りタスクをやっつける上でも役に立つのではないかと感じます。
先送りが許される(先送りをしてしまう)タスクというのは、
- 1.締め切りまでにまだ余裕がある
- 2.今日やっても明日やっても状況は変わらない
という2つの条件にマッチしたものでしょう。それゆえ、「まぁ、明日でもいいか」と判断できてしまうのです(意識的な先送り)。こうして、翌日が締め切りというところまで追い詰められると、もはや今日やらざるを得なくなるわけですが、そういうタスクに追われていると、その日に予定していた翌々日が締め切りである仕事が先に押しやられて(不可避な先送り)、結局翌日にはまた次の締め切りに苦しめられることになります。
つまり、1つの意識的な先送りが不可避な先送りを生み出し、不可避な先送りがさらなる意識的な先送りを後押しするというバッドなスパイラルが形成されてしまうわけです。
このスパイラルから抜け出すには、月並みですが、先送りをやめるほかありません。今回の考え方を応用するなら、先送りが許されない状況を作るのです。
例えば、以下のようなルール。
- 締め切りまでにまだ余裕があっても、その仕事を今日やり終えることができれば、締め切りまでの残り日数分をポイントとして付与。
- └金曜日が締め切りの仕事を火曜日(3日前)にやり終えたなら3ポイント。
- └水曜日(2日前)なら2ポイント。
- └そして、締め切り前日にやり終えたら、マイナス5ポイント。
少し厳しすぎるような気もするので、やり終えなくても、とにかく何かしら手を付けることができたら、ということでも良いかも知れません。少なくとも締め切り前日になって初めて手を付けるという危険な行為を抑止でききれば、事態はかなり改善されると考えられるからです。
エアーの予約で言えば、「早割」のような特典を用意することになります。早く着手すればするほど、仕事が楽になるわけです。
仕事が楽になりさえすればよいのですが、これとは別にポイントを設けているのは、自分の仕事ぶりを数値化することで、「今月はプラスに転じた」(=前倒しで仕事ができた)とか、「先週は4アンダーだったので、今週は少なくともゼロにまでは引き上げたい」(=遅れ気味な状況を改善したい)と言った目標の設定と評価がしやすくなる効果が期待できます。
ポイントを上げるために、「何か前倒しで進められる仕事はないか」という先送りとは真逆の姿勢が生まれるでしょう。それ以前に、翌々日が締め切りのタスクを抱えているのであれば、ポイントを大きく失ってしまう危険があるわけですから、まずは「借金」を増やさないようにそのタスクをなんとかしようとするはずです。
さらに、チームでこの仕組みを導入することにより、競争原理が働いてより楽しくなるかも知れません。営業獲得件数などのように成果を数値化できる仕事ならともかく、そういった指標のない仕事に携わっている人であれば、なおさらでしょう。
そして、月ごとにMVPを決めて表彰したり、特別ボーナスを支給するなど組織としての取り組みにまで持って行ければ…。
あ、話が大きくなりすぎました。
何にしても、毎日の仕事に何らかの「特典」が得られるチャンスがあれば、先送りしがちな仕事を前に押し進めてくれるモチベーションになるのではないでしょうか。