- 位相の異なるインプットを心がける ~Idea Arts その1~
- アイデアの種を拾い集める ~Idea Arts その2~
- 頭を開く ~Idea Arts その3~
- 柔軟にアイデアを広げる ~Idea Arts その4~
- アイデアの肥料を集める ~Idea Arts その5~
- 前のめりに考える ~Idea Arts その6~
の続きです。
第七の習慣:脳を整える
これまでの習慣では、「頭を使うこと」をメインに据えてきました。アイデアを生み出すのは、自分の頭なのですから、これは当然のことです。
しかし、それだけで充分かというと、答えは否です。何かを使い続けていれば、いずれメンテナンスが必要になってきます。アイデアを生み出すための脳にも同じことが言えるでしょう。言い換えれば、脳の機能を十全に発揮するための整備。それが第七の習慣です。
具体的には
- アイデアノートを整理する
- 一息つく
- 基準点を持つ
となります。
アイデアノートを整理する
日常的にメモしていると、たくさんのアイデアの種を掴まえられるようになります。それはそれで喜ばしいことなのですが、多すぎることの弊害も起こりえます。アイデアの種たちが埋もれてしまうのです。
たまに時間を取ってアイデアノートを見返してみましょう。古くなったアイデアは消すなり移動させる。面白そうなアイデアを再発見したら、それを新規で書き加える。そのようにして、アイデアノートの鮮度を維持するのです。
「アイデアをメモしても何の役にも立たない」と言われる方は、この作業をスルーされている場合が多くあります。アイデアをメモして放置しているだけで良いアイデアがムクムク育つなら何の苦労もありません。実際には、整理の手間をかけてやる必要があるのです。といっても、大げさなことは必要ありません。たまに見返して、手を入れるだけでじゅうぶんです。
一息つく
ごく単純に考えて、怒り心頭の真っ最中のなかで良いアイデアが閃くことはないでしょう。緊張状態100%でも難しそうです。日常的に強いストレスにさらされていても厳しいでしょう。
状況を俯瞰する、あるいは別の方向から物事を見るためには、精神的な余裕が必要となってきます。どれだけ優れた脳であっても、置かれている状況次第ではその能力は発揮されません。
しかしこれは、「怒りの感情を全て消してしまえ」という話ではありません。それは感受性のスイッチをオフにするようなものです。何かにイライラするような気持ちが、新しいアイデアの発見__もう少し言えば解決すべき問題の発見__につながることもあるわけで、それは大切にしたいところです。
ただし、感情に思考が飲み込まれてしまえば、アイデアを生み出すことは難しくなります。
そこで「ふ~」と一息つくことが大切です。一日のうち5分でも10分でも一息ついて、じっくり考えごとができる時間を持つことができれば、アイデアの種の育成は早まるでしょう。
基準点を持つ
いろいろな情報に触れ、いろいろなことを考えていると、やがて多様性の限界を越えてしまい、状況が把握できなくなることがあります。一種の混乱です。
そうしたとき、「立ち帰れる場所」を持っていると安心できます。
好きなクリエーターの作品でも良いですし、あるいは共感できるシンプルな原則でも良いでしょう。なんであれ、自分が感じる価値の基準点に立ち帰ることで、たくさんの情報にも立ち向かえるようになります。
なんにせよ「完璧なアウトプット」などありません。長所を伸ばせば、短所が引き立つものです。あちらを立てれば、こちらは立ちません。しかし、いろいろなことを考えていると、その全てを取り込みたくなってきます。それが混乱の原因なのです。
自分の中に明確な基準点があれば、思索の採択に迷いが無くなります。あるいは少なくなります。
何かしら「立ち帰れる場所」をキープしておきましょう。
さいごに
これで「アイデアを生み出す七つの習慣」を全て紹介できました。
どれしもが大切ですが、なにせ「習慣」です。一回二回やったところで意味はありません。長期的・継続的に行うことで真価が発揮されます。ぜひとも、チャレンジしてみてください。
※それぞれの習慣についての掘り下げは、まだまだ充分とは言えませんので、そちらは作成予定の電子書籍で行っていきたいと思います。
▼今週の一冊:
短編小説集。
「ワーカム」という万能著述支援用マシンが登場するのですが、知的生産の技術を探求している人間としては考えさせられることが多くありました。先週紹介した『オートメーション・バカ』と合わせて読むと、一層考えなければならないことが増えてきます。
それはそれとして、SF作品としても充分面白いです。
» オートメーション・バカ -先端技術がわたしたちにしていること-
月末が迫ってきておりますが、未だに電子書籍新刊の本文も完成していませんし、タイトルすら未定です。果たして間に合うのでしょうか・・・。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。