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位相の異なるインプットを心がける 〜Idea Arts その1〜 

By: ‘Nino” Eugene La PiaCC BY 2.0


倉下忠憲連載企画をはじめます。

これから何回かに分けて、「発想法」について書いていきます。具体的な発想法というよりは、発想力を向上させるための習慣や考え方についての記事です。

キャッチーなタイトルを付けるとすれば、「アイデア溢れる人になる7つの習慣」になるでしょうが、とりあえずはIdea Artsと命名しておきます。ある程度書き上げたら、連載をまとめて電子書籍にしますので、そちらもご期待ください。

では、前置きも「はじめに」もすっ飛ばして、いきなり本編から入りましょう。「日常生活におけるインプット習慣」の章になります。

第一の習慣:日常生活のインプット

虚空からアイデアを取り出すことはできません。豊富な知識や経験が、総合的なアイデア力の土台となります。

さらに言えば、ただ知識を仕入れれば良い、というものでもありません。ある程度散らばった知識が必要です。点と点とつなぐ新しい線がアイデアだとすれば、点同士が離れていないとその線が引けないのです。

「位相の異なるインプットを心がける」

これが第一の習慣となります。

具体的には、以下の3つのポイントを押さえるとよいでしょう。

  • 専門分野を掘り下げる
  • 世の中の流れをスループット
  • 趣味生活を大切に


専門分野を掘り下げる

自分の「専門分野」をお持ちでしょうか。持っていないなら、すぐさま作りましょう。「これのことなら誰にも負けない」というレベルにまで達する必要はありませんが、尋ねられたらある程度のことはすぐさま答えられるレベルぐらいは目指したいところです。

そうした専門知識は、検索すれば見つけられますが、残念ながらアイデアの生成は脳内で行われるものです。なので、自分の専門分野で新しいアイデアを生み出したければ、やはり脳内にそれらを蓄えておく必要があります。理想を言えば、ありとあらゆる知識を脳内に蓄えたいところですが、時間もリソースも足りません。なので、最低限自分の専門分野についての一通りの知識はインプットしておきましょう。

※インプットの方法については、前回紹介した勉強法が参考になるかもしれません。

世の中の流れをスループット

アイデアパーソンと呼ばれるような人は、「今、何が流行っているのか」という情報にも敏感です。生み出されるアイデアが、「今」使用され、「今」アピールしなければいけないものであるならば、それも当然のことと言えるでしょう。

テレビ、雑誌、電車やバスの広告、ウィンドウショッピングで目に付く色、SNSで話題に上がっていること、大型書店の新刊コーナー……

「今」を知る材料はあまた存在しています。そうしたものに触れているだけでも、感覚的なものは伝わってくるでしょう。つまり、スループットしておくわけです。

もし、その中で興味が出てきたものがあれば、もちろん掘り下げて本格的なインプットにつなげてみるのもよいでしょう。

趣味生活を大切に

「専門分野」と「流行」以外に、押さえておきたいのが趣味的な情報です。

スポーツでも、知的遊戯でも、アニメでも、文学でも、音楽でも、なんでも構いません。専門分野とも流行とも離れたところにある情報もインプットの対象にしておきたいところです。そうしたインプットは一見非効率に思えます。非生産的に思えます。しかし、そういう情報こそが、離れた場所に点を打ってくれる存在になりえます。

幸いこうした情報は、今ではウェブでもたくさん見つけられますし、深い議論がやりとりされてもいます。そうしたものに触れておけば、専門知識しか持ち合わせていない、いわゆる「専門バカ」になるのを避けられるでしょう。柔軟な物の見方も見つけられるかもしれません。

さいごに

こうしてみると、アイデアを豊富に出すためには、豊富なインプットが必要になることがわかります。考えてみれば、道理でもあります。

ただし、単に数を求めるのではなく、「位相の異なるインプットを心がける」こと。日常的にそうしたインプットを行っていけば、自然とアイデア力の下地は整ってくるでしょう。

▼今週の一冊:

久しぶりに読み返してみたんですが、先生の「多趣味」っぷりには改めて驚かされます。

しかも、軽く触れるだけではなく、かなり本格的にやり込んでいる姿勢が素敵です。飽くなき知的好奇心の力はスゴイですね。

こういうインプットが、彼の頭に良い作用を与えていたに違いないと考えると、自分の「多趣味癖」も肯定できそうな気がしてきます。

『ご冗談でしょ、ファインマンさん』(上)(下)(リチャード・P・ファインマン)

▼編集後記:
倉下忠憲



物書きになって4年以上になるわけですが、ようやく「執筆のシステム」的なものができてきたような気がします。まあ、気がするだけですな。うまく回るようならば、それをテーマにした本も書いてみたいですね。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。