- 位相の異なるインプットを心がける ~Idea Arts その1~
- アイデアの種を拾い集める ~Idea Arts その2~
- 頭を開く ~Idea Arts その3~
- 柔軟にアイデアを広げる ~Idea Arts その4~
- アイデアの肥料を集める ~Idea Arts その5~
の続きです。
第六の習慣:前のめりに考える
第五の習慣までで、アイデア生成の準備・実行・後始末の一連のプロセスを紹介できました。これらの習慣を意識するだけでなく、実行にも移せばアイデア生成力はアップしていくでしょう。
次なる第六の習慣では、そのアイデア生成力をさらにアップさせます。ある種のトレーニングと言っても良いでしょう。
アイデアが必要な場面を問題解決だと捉えれば、私たちが抱える課題は「本番」です。そして、「本番」に取り組む前に、さまざまな練習問題をこなしておくのは有用です。
日常の中に練習問題を見つけ、それに自主的に取り組む、というのが第六の習慣です。
具体的には、
- 他人の課題を勝手に解決してみる
- 問題を変形してみる
- 流行品をレポートしてみる
の3つがポイントとなるでしょう。
他人の課題を勝手に解決してみる
世の中には「問題」がたくさん転がっています。それは自主練習に利用しない手はないでしょう。
- 誰かが道を尋ねていたら、心の中で自分でも道案内をしてみる
- 渋滞に巻き込まれたら、渋滞を解消する方法を考えてみる
- 人気のないカフェに入ったら、どうやったら人気が出るかを考えてみる
いくらでも挙げられます。
もちろん、こうしたものを考えても直接的な益はまったくありません。自分に与えられた課題ではないわけで、解決できなくても怒られませんし、(心の中で)アイデアを出しても褒められません。そういう意味では、無駄と言えば無駄でしょう。
しかし、そうして頭を動かしたこと自体は、一種の経験値となるでしょうから無駄にはなりえません。また、問題に取り組めば、何かを調べてみたり、あるいはある種の情報に敏感になったりするともありえます。確実に変化はあるわけです。
ただし、注意があります。それは他人事ではなく、自分事として問題に取り組むことです。言い換えれば、よくある__そして実現不可能な__解法を適応して終わり、という状況を避けるわけです。でないと、頭を動かすトレーニングにはなりません。
問題を変形してみる
ある種の問題を見かけたとき、直接その解決に取り組むのも良いのですが、問題を変形させてみるのも脳のトレーニングになるでしょう。
変形とは、たとえば達成すべき課題や与えられた状況を極端にすることです。「人気のないカフェに人を集める」という課題があったら、「人気のないカフェに毎日行列を作る」という課題に変えたり、あるいは「人気のないカフェに、予算1000円で人を集める」というように変形するのです。
また、「人気のないカフェを、赤字から脱出させる」と変形させることもできます。このように変形すれば、求めるものが人集めのアイデアだけではなくなります。もちろん、もっと違った変形のバリエーションもありうるでしょう。
そうして、問題を再設定し、それについても解法を考えてみる。そうすれば、練習問題が尽きることはありません。
流行品をレポートしてみる
以上の二つは、「誰に頼まれたわけでもなく」やる練習問題ですが、こちらも似たようなものです。
何かの流行品があったとき、それを観察・分析して、それについてのレポートを書いてみます。あるいは、書くつもりで観察・分析してみます。
たんに「あぁ、これ流行っているな」と納得して終わりにするのではなく、自分自身で流行のメカニズムについて仮説を立ててみるのです。もちろん、それが正しいと主張して回る必要はありません。単に、仮説を立てるトレーニングです。
こうして「なぜ、そうなっているのか」を考えるようにしていると、アイデア発想にも、あるいは何かに説得力を持たせることにも役立ちます。
さいごに
第六の習慣は、前のめりに考えることでした。それはつまり、「誰に頼まれたわけでもなく」やることです。
アイデアの本番でしかアイデアを考えていない人と、日常の中に練習問題を見つけ、それに取り組んでいる人ではエンジンの回転数が違うのは不思議な話ではありません。ぜひとも練習問題に取り組んでみましょう。
▼今週の一冊:
過剰なオートメーション化の推進は、私たちに何をもたらすのか。
いささか過激なタイトルではありますが、内容は穏便です。
オートメーションは人間の力の不足を補ってくれる存在ではあるが、なんの注意も払わなければ主体としての人間を疎外してしまう。そして、それはコスト削減圧とも調和してしまう。しかし、本当にそれで良いのだろうか、と著者は問います。
この問題には非常に込み入った事情__産業の発展・コスト・文化・人間__が入り込んでいるので、楽に適用できる解みたいなものはないのでしょう。それでも、無自覚にオートメーション化を進める手を止めて、ちょっと考えてみることは必要なのでしょう。
» オートメーション・バカ -先端技術がわたしたちにしていること-
Follow @rashita2
花粉症という名の厄災に苛まれております。あきらかに自分のパフォーマンスが下がっていることがわかりますし、もともと高くもないのでなかなか大変です。今月も新刊発売がクリアできるのか、ちょっと心配になってきました・・・。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。