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消費税増税にまつわる「こういう時はどうすればいいんだろう?」に答えてくれる一冊『注文の多い料理店の消費税対応』

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大橋悦夫宮沢賢治の『注文の多い料理店』を40歳になってようやく初めて読みました。

↓青空文庫でも読めます。10分もあれば通読できますので、まだ読んだことのない方はこの機会にぜひ。

» 『注文の多い料理店』(新字新仮名)

タイトルを見て、てっきり「大いに繁盛している料理店」と勘違いをしていました(汗)。

同書の中でも、同じ勘違いが描写されています。

そして二人はその扉をあけようとしますと、上に黄いろな字でこう書いてありました。

「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」
「なかなかはやってるんだ。こんな山の中で。」
「それあそうだ。見たまえ、東京の大きな料理屋だって大通りにはすくないだろう」

 二人は云いながら、その扉をあけました。するとその裏側に、

「注文はずいぶん多いでしょうがどうか一々こらえて下さい。」
「これはぜんたいどういうんだ。」ひとりの紳士は顔をしかめました。
「うん、これはきっと注文があまり多くて支度(したく)が手間取るけれどもごめん下さいと斯(こ)ういうことだ。」
「そうだろう。早くどこか室(へや)の中にはいりたいもんだな。」
「そしてテーブルに座(すわ)りたいもんだな。」

『注文の多い料理店』より

物語が進むにつれて、この「注文」の意味が明らかになっていきます。

結論からいえば、この料理店は、意図的に客のミスリーディングを誘うことで、店を繁盛させているのです(推測ですが)。

自分にとって都合がいいように解釈していないか?

商売が繁盛していても、していなくても税金からは逃れられません。

折しもこの平成26年(2014年)4月1日から消費税が5%から8%に引き上げられます。
さらに、平成27年(2015年)10月1日からは8%から10%に引き上げられます。

消費者を支払う側としては、これまでよりもモノの価格(総額)がアップすることになります。
その結果、「5%のうちに買っておこう」ということになりやすいでしょう。
すると、いつまでに買えば「5%」で済むのか、という点が気になってきます。

一方、僕自身は事業を営んでいるので、消費税を受け取る側として、

  • どのタイミングで価格を書き換えたらいいのか?
  • 事前の告知はいつまでに始めていないといけないのか?

といった点が気になってきます。

いずれのケースも「正解」はあるのですが、それとは別に支払う側、受け取る側、いずれもが「正解」を知る前から「たぶんこうじゃないかな?」という当たりをつけているものです。

支払う側であれば「3月31日中に注文すれば5%で済むよね?」、
受け取る側なら「3月中に価格変更の告知をしておけば大丈夫だよね?」

といったあたりです。

共通点は、自分にとって都合のいい解釈である、ということです。

この解釈が「正解」と一致している場合もありますが、一致していない場合もあるでしょう。

「注文が多い」と言われれば、当然「客の注文」と解釈するのが自然でしょう。
まさか「店側の注文」だとは思わないわけです。

「どうもおかしいぜ。」
「ぼくもおかしいとおもう。」
「沢山(たくさん)の注文というのは、向うがこっちへ注文してるんだよ。」

(中略)

奥の方にはまだ一枚扉があって、大きなかぎ穴が二つつき、銀いろのホークとナイフの形が切りだしてあって、

「いや、わざわざご苦労です。
 大へん結構にできました。
 さあさあおなかにおはいりください。」

と書いてありました。おまけにかぎ穴からはきょろきょろ二つの青い眼玉(めだま)がこっちをのぞいています。

『注文の多い料理店』より

こうなってからでは手遅れなのです。

「二つの青い眼玉」の正体

『注文の多い料理店』には2匹の動物が登場します。でも、姿は見せず、扉のかぎ穴から「二つの青い眼玉」をのぞかせるのみ。店名が「山猫軒」となっているために、この「眼玉」の主は山猫なのだと思われますが、物語の中では明らかにされていません。

さらに言えば、「二つの青い眼玉」たちには上役にあたる「親分」がいることが会話の中に見えますが、その正体も不明。大山猫かもしれませんし、別の動物かもしれません。動物ですらないかもしれません。

読者の想像に委ねられているのです。

この「二つの青い眼玉」に生命を吹き込み、山猫壱号、山猫弐号というキャラクターに仕立て上げ、彼らが“勤務”する「山猫軒」を舞台にその消費税増税対応をわかりやすく解説しているのが今回ご紹介する『注文の多い料理店の消費税対応』という本です。

著者は税理士です。

「自分たちにとって都合のいい解釈」で増税対応を乗りきろうとする山猫たちの掛け合いコントと、これに対する税法に則った解説が続きます(このフォーマットは、NHKで毎週土曜日に放映されている、「四角い仁鶴がまぁ~るくおさめまっせぇ」という定番フレーズでピンとくる人にはピンとくる「バラエティー生活笑百科」を彷彿とさせますね…)。

↓たとえば、こんな感じです。

山猫壱号 うちで雇っているバイトの家猫が、なまいきなことを言ってるんでさあ。
山猫弐号 ん? ああ、最近忙しくなったから雇ったあいつか。でも、しっかり仕事してくれてるがな。何を言ってるんだ?
山猫壱号 山猫軒の給与規定では、通勤手当は一か月ごとに支給と決まってるんですがね。家猫のやつ、「この三月は六か月分よこせ」と言いやがる。
山猫弐号 おいおい「よこせ」とは言ってないだろう。この耳で聞いてたが、接客態度同様、とても低姿勢な物言いだったじゃないか。
山猫壱号 で、どうせ六か月分せしめた後に、どろんと逃げちゃうんだろうと思いまして…。
山猫弐号 で、理由を聞いたのかい?
山猫壱号 なんでも「消費税の経過措置でそのほうが安く定期券が買えますから…」ときたもんだ。
山猫弐号 いや、それはそのとおりだよ。さすが経済観念のしっかりした坊やだ。
山猫壱号 へえ…。そんな経過措置があるとは…。勉強してきます!(ぴゅっ)
山猫弐号 おやおや。家猫坊やにあととりの座を奪われるとでも思ったのかな? あっという間に消えてった。これぞ猫まっしぐらってやつか。

(中略)

【解説】

1 旅客運賃等の消費税率に関する経過措置

今までのところは、指定日がポイントになる経過措置を中心にお話ししてきました。指定日がポイントになる経過措置とは、指定日(5% → 8%の時は平成25年10月1日、8% → 10%の時は平成27年4月1日)の前日までに、契約をしたり準備をしたりすれば、施行日後も旧税率のままで取引できる、というものでした。

この「旅客運賃等の消費税率に関する経過措置」は、ちょっと違います。一番最初に48頁でお話しした、電気・ガス・水道料金等の経過措置のように「施工日」がポイントになる経過措置です。

(中略)

たとえば、平成26年4月1日の新幹線の切符を3月31日に買った場合、原則に従えば輸送サービスの提供は施行日後になるので、消費税率は8%になりそうですが、鉄道の運賃は経過措置により、サービスの提供が4月1日であっても、3月中に支払が完了していれば消費税率5%が適用されるというわけです。

前半の掛け合いコントがかなり練り込まれており、読ませます。

「ああ、確かにこういう時はどうすればいいんだろう?」という疑問を山猫たちと共有できるので、これに続く解説がすっと頭に入るという仕掛けです。

個人的には、回数券とネット販売についての解説が参考になりました。

消費税を支払う側と受け取る側のいずれにも、もちろん対応していますし、平成27年10月1日には8%から10%にさらに引き上げられますが、これについても今からできる対策が載っています。

135ページほどのボリュームで、1時間もあれば通読できると思いますので、手っ取り早く今回の増税について把握しておきたい、という方はご一読をおすすめします。

※ちなみに、アマゾンで購入する場合は「ご注文商品の発送が4/1以降になる場合に8%の税率が適用」されるようです。



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