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チーム内に「面白ルール」を導入することで得られる5つのメリット

 1.本来やるべきことに意識を集約できる
 2.会社に必要な人を見極めることができる
 3.経営者の想いが具現化しやすくなる
 4.社員の力を結集できる
 5.仕事が楽しくなる

こちらでちらりとご紹介した『この「社則」、効果あり。』ですが、単に「面白ルール」を紹介しているだけの本にとどまりません。その行間にはとことん考え抜かれたチーム運営の本質が見え隠れするのです。

そんな本書を読み解く中で得られた、「面白ルール」を導入することによってチームにもたらされるメリットを5つ、ご紹介します。

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チーム内に「面白ルール」を導入することで得られる5つのメリット

1.本来やるべきことに意識を集約できる

例えば、「バーゲン半休」という、文字通りバーゲンに行くことを理由に半休がとれる制度についての解説が以下。

Hime&Companyは口コミマーケティングによる商品プロモーションを主要事業としている会社です。トレンドの最先端のモノやヒトを紹介します。つまり、流行に敏感でなければならない。働く社員もトレンドをつかみ、オシャレであってほしいという思いもこの精度にはあるようです。(p.33)

以前、デザイナーを多数抱える、とあるデザイン会社の社長と話をさせていただいた折に、同じようなエピソードを聞いたことがあります。流行に敏感な顧客に対して最先端のデザインプロダクトを提供しなければならないデザイナーが、多忙だからという理由で、いっこうに最新トレンドに触れる機会を持てないのは本末転倒ではないか、と。

そこで同社では、会社から1グループ1回あたり5000円を出すので、トレンドスポット(表参道ヒルズや東京ミッドタウンなど)に出かけて“大人の社会科見学”をせよ、という制度を作りました。良い仕事をする上ではインプットが欠かせない、というわけです。

本来であれば、こういったことは自腹でやらなければならないところかもしれませんが、このようにルール化することによって後押しが得られる、ということはあるでしょう。さらに、ルール化されることによって、社員の意識を一定方向に収束させる効果もありそうです。

#まぁ、過保護といったらそれまでなんですけど、「社員を大事にしています」という採用アピールにはなるでしょう。

2.会社に必要な人を見極めることができる

本書の著者・柳澤大輔さん率いる面白法人カヤックには、「スマイル給」という制度があります。

面白法人カヤックの社員には、
毎月、給与手当として「スマイル給」が支給される。
スマイル給の支給額は0円とする。(p.107)

いったい何の意味があるのか? と思われるでしょう。

その意味は、金額の多寡ではなく給与明細に印字される言葉にあります。

スマイル給とは、その当人のよい部分、素敵な部分、褒めるべき部分を、ひと言コピーにして「○△×給」として支給するというもの。(p.108)

というわけで、例として以下のような「スマイル給」が挙げられています。

●「井戸水給」
 冬は温かく、夏冷たい井戸水のように社内の空気感を平均的にハンドリングしてくれた。
●「火事場のヒーロー給」
 とあるプロジェクトが火を噴いているときに自ら火の中に飛び込んで来くれた。
●「言霊給」
 ○○さんに「できるよ!」「いいじゃん!」といわれると本当にできてしまう。

「〜給」を「〜賞」と読み替えると、よりイメージがつかみやすいでしょう。運動会などの特別賞でありがちな「笑顔が素敵だったで賞」みたいな感じ。

さて、毎月評価しなければならない相手がランダムに決定されて、上記のようなキャッチーなコピーとともにその相手の働きを寸評するわけですが、この制度のもとでは社員は次のようなことを求められることになります。

 ・普段から人の良いところを観察する
 ・それをコンパクトに凝縮して伝える

読んでいるだけでは「ふむふむ」と普通に読み流してしまうところですが、よくよく考えてみると、これは相当に高度なクリエイティビティを要求されるワークです。

そんな“荒行”を毎月のように強いられるわけですから、この会社で仕事をし続けられる人(=こうした遊び心を楽しめる人)はおのずと限られてくるでしょう。

つまり、制度がフィルタになるのです。

そもそも同社には鎌倉に本社があるという“第一関門”があります。

» 14:鎌倉に本社があるわけ:柳澤大輔「面白法人カヤックのいきかた」

そして現在では、この本社が鎌倉にあるということが、面白法人カヤックで働きたい人を集める上での、フィルターのひとつになると考えています。そこに魅力を感じてくれる、つまり価値観の似ている人が集まるだろうという算段です。

まさに“地の利”を活かした採用戦略。鎌倉だけに。

3.経営者の想いが具現化しやすくなる

本書を読んで思ったことは、ルールとはシンボル(象徴)である、ということです。何のシンボルかといえば、経営者の想い。それが形になったものがルール。

例えば、次のルール。

カヤックにおいて、人間関係におけるルールはたった1つだけ。
それは、コミュニケーションを取った方が勝ちとする。(p.142)

「誰かに不満を持っていたとしても、それを伝えなかったら負け」というわけです。

ルールのためのルールは束縛でしかありませんが、想いが具現化されたものとしてのルールであれば、ルールを介して経営者と社員とが一つになれるはずです。これを体現しているのがカヤックという会社でしょう。

4.社員の力を結集できる

ピンチが常にやってくる。ヒーローだからしょうがない。(p.159)

これは、カヤックのイントラネット「みんなの情報ポータル」、略してminpo(みんぽー)のコンテンツの1つである「カヤック流行語大賞」にエントリーされたもの(ほかにもいくつか魅力的なフレーズが紹介されていますが、個人的にこれが一番ぐっときました)。こうした、見た人にやる気を起こさせるような「流行語」が多数寄せられているといいます。

これは、ルールに加えてイントラネットという「仕組み」も必要ですね。

似た事例として別の会社のものですが「三行提報(ていほう)」という制度が個人的には興味深かったです。詳細は本書のp.152〜でどうぞ。

5.仕事が楽しくなる

本書を読むことで得られる“効能”の1つは、ルールというものの認識が改められることにあります。直接的には書かれていません、僕が行間から感じ取ったところをまとめれば、ルールとは社員の行動を縛るためではなく、より楽しくのびのびと仕事をしてもらうためのものであると再定義できます。

例えば、p.185で紹介されているpaperboy&co.の「パイン」「ココナッツ」「キウイ」という、個人で作ったサービスの評価ランクなどは遊び心と楽しさにあふれています。

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まとめ

本書にはルール(=制約)をポジティブに活用するためのヒントが詰まっています。それは、著者の次の言葉からもうかがい知ることができるでしょう。

世の中というのは、自分のやるべきことを誠実にやり、自分が与えられる以上のものを相手に与えられる人が、自由になるチャンスを得るのだと思います。やることをやる、相手にたくさん与える、それができてはじめて、ルールや権利を堂々と行使できるようになるから。

ルールや制約があるから不自由なのではなく、自分がルールや制約を使いこなせるような状態になることが、自由への一歩なんですね。(p.24)

そんな一歩を踏み出すうえで、本書は有用なガイドになってくれるはずです。チームを率いるリーダーはもちろん、これからリーダーを目指す人にも是非読んでいただきたい一冊です。

4396111177 この「社則」、効果あり。 (祥伝社新書 117)
柳澤 大輔
祥伝社 2008-06-26

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