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「あなたたちの中で失敗を犯したことのない者が、まず、この人に石を投げなさい」
と言われて、石を投げられる人などほとんどいないでしょう。
人間多かれ少なかれ失敗やミスを経験しているものです。失敗ゼロの人間は理想の中にしか存在しません。かといって、何でもかんでも失敗OKというわけではないでしょう。
注意したいのは、
「同じミスを繰り返さないこと」
です。
しかし、「同じミスをしないように気をつけます」と口にしただけで状況が改善されるならば、世の中はもっと幸福な状態になっているでしょう。何かしらの具体的な行動が必要です。
そういう時には、ノートを取り出してみましょう。
「失敗ノート」
築山節氏の『脳が冴える15の習慣』では「失敗ノート」というノート法が紹介されています。これは自分の脳の使い方を改善するための一つの方法です。
脳の問題を自覚するもっとも良い方法は、自分がした失敗を分析することです。特に繰り返しする失敗には、脳の悪い使い方や機能の低下が分かりやすく表れています。
似たようなミスを繰り返してしまうのは、単なる不注意以上のものが含まれている可能性が高いでしょう。それに注目することで、日常的な行動の改善につなげていくわけです。
それを分析し、改善の指針にするには、まず失敗を記録しなければいけません。
なぜ、わざわざ記録に残すのか。それは人が覚えているものががたいてい「大きな失敗」だけだからです。背筋が凍り付くようなミスをしてしまったことは印象が強く、記憶にも残りやすいものです。でも、ちょっとしたミス__小さな失敗__はすぐに忘れてしまいます。
しかし、その小さな失敗の中にこそ、大きな失敗を未然に防ぐ警告が含まれているのです。
そういう小さな失敗を記録し、分析することで、小さな行動の改善を行うことができます。
失敗だけを記録し続けるのは苦痛なので、日記の最後のほうに「こういう失敗をした」と箇条書き程度に書き残すという方法でもよい、と著者の築山氏は書いています。
つまり専用の「失敗ノート」を作らなくても、日記、手帳、業務ノートにちょこっと書き付けるだけでも十分ということでしょう。拡張して、日刊ブログの最後のほうに書くというのもありかもしれません。
「トラブルノート」
『ミスが少ない人は必ずやっている[書類・手帳・ノート]の整理術』でも、同じようなノートの使い方が紹介されています。
こちらは仕事上のトラブルが起きてしまったときの対応法です。かんたんにまとめると、
- 失敗の内容を書き出す
- クレームにどのような対応をすべきかノートにリストアップする
- トラブルの原因を客観的に分析し、解決のために必要な行動をすべてノートに書き出す
- (3)の再発防止策を実行するデッドライン(期限)も決めてしまう
となります。
ノートにリストアップしておけば、クレームへの対応に抜けや漏れが発生するのを防げます。こうしたことは「日常業務外」の作業であり、ルーチンではありません。これを頭だけで処理してしまうと、大きなポカが発生しかねません。
また、再発防止策を考えて、期限を決めてしまうことで、それを一つの「プロジェクト」として扱うことができます。具体的に何を、いつまでに実行すると決めることが、「同じミスをしないようにする」ということの意味です。
「クレームノート」
実は似たようなことを私も前職(コンビニ店長)の時にやっていました。
業務連絡用のノートとは別に、「クレームノート」を作り、そこに発生したクレームについてのデータを残していました。当然、そのノートは全スタッフが閲覧・記入可能なノートです。
書いていたのは次の4つのポイント。
- クレームが発生した状況
- 対応に取った手順
- 発生したのは何が原因と考えられるか
- どういう手段を講じれば、類似のクレームが発生しないか
1と2はすぐに書けますし、これだけも結構役に立ちます。全スタッフが同時に顔を合わせるという事がないコンビニでは、スタッフ間の情報共有がなかなか進みません。一番最悪なのが別のスタッフが同じお客さんに同じミスをしてしまうこと。それを避けるためにも、「失敗」の情報を共有しておくのは大変意味があります。
さらに重要なのが3と4です。
失敗した直後というのは、お客さんに怒られたりしているので、だいたい落ち込みます。そういう時には「俺はダメなんだ〜」的思考にはまりがちです。こういう思考はわりと泥沼でなかなか抜け出すことができません。
しかし、ちょっと時間をおいて、原因を分析したり、次に何をすればそれが避けられるのかに注意を向けると、気分が多少前向きになってきます。それに実際ミスも減ります。
バトル漫画のように「仕事力」を測定するスタウターみたいなものは存在しませんが、実績や成果、あるいは失敗やそれに対する処方などをノートに蓄積していくことで、おぼろげにでも自分の仕事力が向上していくことを実感できるというのは、物理的な厚みがあるノートならではの特徴と言えるでしょう。
さいごに
失敗なんて発生しないにこしたことはありませんが、人間である以上どうしても避けられないものでもあります。
であれば、「失敗」とのうまい付き合い方を知っておくのも大切なことでしょう。
「失敗」の記録を残しておくのは、かかる手間に比べるとそのメリットは大きいものです。もちろん、単に記録を残すだけではなく、それを分析し、改善点を考えなければいけません。そして、そのために行動を実際に行う必要もあります。
こういうやり方はあまりスマートな方法とは言えないかも知れませんが、徐々にでも、確実に何かを変えていくことにつながります。
▼参考文献:
どうすれば脳の機能を活かせるか・維持できるかが、15の習慣の形で紹介されています。大がかりなものは何も必要なく、日常生活の延長線上で実践できるものばかりです。
社会人になったらとりあえず読んでおいて損はない本ではないかな、と思います。基本と言えば基本ですが、誰かに教えてもらわないと、わりとわからないままに年月を過ごしてしまうことも。
▼今週の一冊:
頭にある村上春樹さんのインタビューに惹かれて購入しました。17人のクリエーターのインタビューがまとめられています。
私自身は物書きですが、荒木飛呂彦さん、かわぐちかいじさん、弘兼憲史さんなどの漫画家さんへのインタビューが面白く読めました。コマ割にも深いこだわりがあるんですね。まあ、プロの仕事ですからそれも当然なのかもしれませんが。
それぞれの人の違った「物語観」に触れながら、自分との差異を確認してみると、自分なりの「物語観」も立ち上がってくるかもしれません。
Follow @rashita2
最近、いろいろな「ノート法」を集めてみようかな、という気分になっています。知的生産系の本を読みあさっていると、いろいろなノートの使い方が出てくるんですよね。それらの体系的にまとめるなかで、記録がを持つ意味を再確認する・・・というのはなかなか骨の折れそうな作業ですが、面白そうでもあります。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。