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まずはノートを書こう。話はそれからだ



倉下忠憲新しい本が出ました。

『すべてはノートからはじまる あなたの人生をひらく記録術』というタイトルの本です。

特定の具体的なノート術でもなく、アナログやデジタルに特化することもなく、ずいぶん広い意味で「ノート」を定義し、そのノートと私たちのより良い関係を構築するための論考をまとめた本です。

なので一般的に「ノート術」の本と聞いて想像される本とは少し違っているかもしれません。

それでも実用的な話はこんもり盛り込まれています。小難しい理論を展開することなく身近で現代的なたとえを用いるようにも努めました。筆者が大好きな「引用乱舞」も抑えてあるので、一定の読みやすさはキープされていると思います。

とは言え、話をむりやり「わかりやすく」まとめるために、この分野が持つ話の面白さや視野の広がりを損なわないようにも気をつけています。わかりやすいけど、広がりがない本ってしょーもないですからね。

だから本書は、半分では「ノート術」の本ですが、もう半分では「ノート論」の本になっています。何がどう違うのかは、ぜひお読みになって確認してください。

というところで、以下は補足というか雑談です。

まずはノートを書こう。話はそれからだ

現在「デジタルノートテイキング」の連載では、主にPKM(Personal Knowledge Management)の話を中心に展開しています。これは「知的生産」においては不可欠な要素であり、今後も探究が必要でしょう。

一方で、そうした活動は高度であるとも感じます。高度というのは高い次元ということではなく、日常生活の一つ上のレイヤーに位置している、ということです。別の言い方をすれば趣味的、ということです。実務に関係することであっても、少しだけそうした切迫感からは遊離している雰囲気があります。

でも、ノートってもっと日常的なものです。あるいは、日常的なものになって欲しいと私は感じます。何かを進めるときや新しい問題に取り組むときに、さっと「ノート」を取り出すこと。そういうことが日常的な所作の一部になって欲しいと願います。

具体的な媒体はなんでもよいのです。パソコンでもタブレットでもノート帳でも情報カードでも何でも構いません。また、書き方もそう大した意味はありません。用途に合った書き方というのはもちろんありますが、それは「書くか書かないか」が持つ違いに比べれば誤差みたいなものです。

まずは、書くこと。

書いて、考えること。

そうした行いが日常的になれば、私たちの時間や頭の使い方は間違いなく変わってきます。

それがどう変わるのかはわかりませんし、どう変えていくべきなのかを私は決定できません。でも、「ノートを取る」が日常的なコマンド(行動の選択肢)に組み込まれているかどうかは決して無視できない違いを持つことだけは、ほとんど断言できます。

ツールは、合わなければ変えればいいのです。書き方も、自分の体感に合わせてアレンジしていけます。でもって、それをたしかめられるのも、すべては書いてからの話です。何も書きもしないのに、「適切なツール」を追い求めても答えが出るはずがありません。どんな書き方が自分の脳にフィットするのかも、書いてから(あるいは書き続けてから)たしかめられることです。

逆に言えば、何かを書き残すことで、それを敷き石にして一歩一歩進めるようになります。書き方をアレンジし、使い方をカスタマイズし、自分なりの「ノート術」を立ち上げられるようになります。

だからまず書きましょう。自分がどういうことを考えて、何をしてきたのかを書きましょう。自分の知識や着想や体験を言葉にしましょう。それらは一つひとつの行為が小さなゴールを持っていますが、しかしそれはより大きな工程の一つのステップでもあるのです。

こうした行為は、狭義のPKMよりもかなり手間にある話です。もっとずっと「日常的」なことなのです。逆に言えば、こうした行為が日常的になるならば、PKMという行為もまた日常に組み込まれることでしょう。たぶん、それが望ましい状態です。少なくとも、継続性においては必須な状態ではあるはずです。

さいごに

上記のような話はきわめて自己啓発的に響きますし、まさにその通りなのですが、「自分でノートを取っていく」という行為は自己啓発性では回収しきれない因子も生み出します。これはブログを書いている人ならばよくわかる話でしょう。「こんな風になるとは思わなかった」ことが起こるのです。「自己」を超えているのです。

でもまあ、これは狙ってやるようなものではなく、たまたま起こることなのでそれを目的にするのは違っているでしょう。でも、そういうことが起こりうることは頭の片隅に置いておいてもよいかもしれません。

ともあれ、ノートはとてもすばらしいツールです。それに楽しいツールでもあります。皆さんも、ぜひノートを取りましょう。気取らずに、もっと日常的に。

デジタルノートテイキング連載一覧

▼編集後記:
倉下忠憲



並行して進めていたかーそる第四号も実は完成しております。現在はまだBCCKSストアのみの販売ですが、時間が経てば他のストアにも配信されると思います。奇しくもテーマが「ノート」ということでノート祭りになっていますね。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中