Obsidianのv0.9.16 & v0.9.17でフロントマター(front matter)が使えるようになりました。
フロントマターとは本の前付けのことで、デジタルツールではそのファイルのメタ情報を記述する場所のことを指します。イメージとしては、HTMLファイルのhead部分が近しいでしょうか。
Obsidian(v0.9.17)では、エイリアスとタグの二つがフロントマターで指定できます。
記述方法
フロントマターは以下のように記述します。
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aliases: [hoge1,hoge2]
tags: [giga]
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「—」で囲まれた部分がフロントマターです。それぞれの記述については後ほど確認するとして、まずはフロントマターを記述したページとそのプレビューを見てください。
フロントマター部分はプレビューでは表示されていません。ページの「中身」ではなく、メタ情報だからですね。言い換えれば、ページの中身を変えないで、ページに作用を与えられる場所がこのフロントマターです。
エイリアス
エイリアス(alias)とは、別名や通称といった意味で、デジタルツールでは、WindowsのショートカットやMacOSのシンボリックリンクといった実体ファイルを参照できる機能や、シェルスクリプトのショートカットコマンドで使われています。
Obsidianでも、そのファイルの「別名」や「あだな」として使えます。
たとえば、「倉下忠憲」という言葉(概念、用語)は、私の中で「rashita」や「くらした」という言い換えが存在します。言い換えれば、この概念を名指すときには、いくつかの言い方・表現があるのです。
だからこそ、情報整理ツールでは「表記揺れ」が常に問題になります。
「名付け」を探していたのに、「名づけ」として保存されていてなかなか見つからなかった、といった問題です。他にも、「ノベル」と「ノベルス」とか、「Magic The Gathering」と「MTG」など、さまざまな表記揺れの可能性があります。
一つの対策として、そうした「ありうる表現」についてすべての記述を押さえておく──論理的にではなく実際的に──手がありますが、エイリアスはそれを簡易に行ってくれます。
aliases: [rashita,くらした]
のように、「,」で区切って、エイリアスとして指定したい文字列を入力していけばOKです。前述したように、そこに書いても本文(のプレビュー)には影響を与えません。
しかし、たとえばその言葉でリンクを作ろうとしたとき、きちんとサジェストしてくれるようになります。
リンクにもエイリアスが使えるので、表記としては「rashita」となっていても、リンク先は「倉下忠憲」になっていることがわかります。
*内部リンクのエイリアスについては以下の記事に書きました。
タグ
フロントマターには、タグも指定できます。
こちらは特に説明は不要でしょう。本文中に書く「#hoge」とまったく同じ機能です。フロントマターに書いても、Tag paneにはきちんと表示されますし、graph表示にも出てきます。唯一の違いは、それが本文中に現れるか、現れないかの差でしかありません。
ただし、本文中に現れないと、それをプレビューモードでクリックできません。リンクを辿る移動ができないわけです。逆に言えば、そうした使い方をしないタグであれば、どちらに置いてあっても変わりません。
もう一点、違いがあるとすれば、フロントマターはPDFにエクスポートしたときにも表示が隠されます。
Public機能を含めて、こうして他の人にページの内容を見せる場合に、タグが書かれていると若干不細工だけども、自分の使い方としてそれを消すのは避けたい、といった場合にフロントマターのタグは活躍してくれるでしょう。
さいごに
おそらくですが、このフロントマターに記述できる要素は今後も増えていくでしょう。ページ単位で情報の細かい制御ができるようになる可能性があります。それは情報ツールマニアとしては楽しみではあります。
一方で、これは本文の「外側」の要素なのでまったく使わなくてもぜんぜん構いません。あくまで、今回書いたような用途を実現したい場合にだけ使用すればOKです。
もちろん、そういう事態に備えてあらかじめ何ができるのかは知っておいた方が良いとは思います。
Follow @rashita2
最近やたらめったらポッドキャストをやっている気がしますが、文章をきちんと書き下ろしするよりははるかに楽なので、気分的にはそれほど大変ではありません。とは言え、1時間の番組を収録するには最低でも1時間必要だ、という物理的な制約は避けては通れませんね。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中。