ひと口にアイデアと言っても、それを生み出すための方法は一つではありません。古今東西さまざまな発想法が生み出され、そして改良を加えられています。
あまりにもたくさんの発想法が存在するので、これからそれを学ぼうと考えている人にはややとっつきにくい印象を受けるかも知れません。しかし、眺めてみるとこういった発想法はいくつかの分類に分けることができます。ある種の「型」がそこには存在しているといってよいでしょう。
今回はアイデアを生み出す方法を4つの型に分類し、それぞれの発想法についても紹介したいと思います。
深める
ある種の物事について、突き詰めて考えていくのが「深める」です。一時的な思いつきをそのまま使うのではなく、「そもそもこれは一体何を意味するのか」といった本質的な問いかけをするのがこの型です。実際的なアイデアよりも、問題提起について考えるときに使われることが多いでしょう。
代表的な発想法としては以前この連載でも紹介した「メタ・ノート」があります。短期間で成果が出ないかわりに、深みのある大きな着想を育てていくことができます。著作や論文といった大きなアウトプットを生み出すための発想法と言えるでしょう。
拡げる
一つの中心的な事柄から、思いつく要素を付け加えていく手法です。代表的な発想法としては「マインドマップ」があります。マインドマップはここ最近でかなり有名になったのでご存じの方も多いでしょう。
それ以外にも「マンダラート」と呼ばれる3×3マスを使ったものや、「はちのすノート」と呼ばれる前述する二つの発想法を組み合わせたようなツールもあります。マトリックス法などもこの分類に入れることができるでしょう。
この「拡げる」というのは「人間の脳を平面図に落とし込む」というのが特徴です。「連想」を「見える化」すると言い換えることもできます。こういった発想法を使いこなすには多少の慣れが必要ですが、頭の中で考えをまとめるのが苦手な方が思考を整理するのに効果を発揮することでしょう。
結びつける
関連性が見えにくい事柄に新しいつながりを見い出すのが「結びつける」です。代表的な発想法としては「KJ法」と呼ばれる手法があります。
KJ法のネーミングは発案者川喜田二郎氏のイニシャルからとられたものです。発想法としては古典的な方法ですが、もしかしたらご存じない方もおられるかも知れないので、簡単に手順をご紹介しておきます。
- 情報をカード一枚ずつに書き込む
- それらをグルーピングする
- それらを図解化する
- 図解化したものを文章化する
手持ちの情報を一度細分化し、再構築していくことで情報のつながりを見直しながら構成を立てることができます。またそれぞれはカード化されているので、一度グルーピングしたものでも、再分解→再構築がやりやすいのがポイントです。
文章のアウトラインを考えるのに有効な方法だといえるでしょう。
置き換える
すでに存在する事柄の一部分を他のものに置き換えたり、あるいは全体を変化させることでアイデアを生み出す手法です。この手法は発想のトリガーがパターン化されているので、比較的簡単に始めることができます。
パターン化されたものとしては「オズボーンのチェックリスト」というものあります。
- 転用
- 応用
- 変更
- 拡大
- 縮小
- 代用
- 再利用
- 逆転
- 結合
既存の事柄に対して、このチェックリストの要素を適用したらどうなるか、どうすれば適用できるのか、を考えることで発想を刺激します。例えば「転用」であれば、
・別のことに使えないだろうか?
・別のものを使えないだろうか?
という問いかけに置き換えて考えることができます。
ブレストの回でも書きましたが、アイデアを生み出すためには「物事をあらゆる角度から眺める行為」が必要です。これは「いろいろな視点」で物事を見つめるとも言い換えられます。あらかじめ「いろいろな視点」を準備してくれているのがこういったリストです。オズボーンのチェックリスト以外にも、TRIZ理論を応用した「智慧カード」と呼ばれるツールもあります。
また、次のような発想のトリガーも考えられます。
- 類推する(似た事例で考える)
- 比喩を用いる(別のものに例えてみる)
- 逆向きに考える(結果から考える・因果を反転させる)
このようなリストやツールを使い発想の引き出しを増やしておけば、さまざまな場面で新しいアイデアを生み出せるようになるでしょう。
まとめ
今回は「発想法」を4つのタイプに分類してみました。これらはそれぞれ使う目的が異なっています。
- 「深める」はアイデアそのものを豊かにしていくこと
- 「拡げる」は着想や連想といった脳の中身を平面図に落とし込む事で思考を整理する
- 「結びつける」は脳の短期記憶では扱えないほどの情報をまとめる/li>
- 「置き換える」は新しい発想を生み出す/li>
発想法を学ぶ前に、まずどのような目的で発想法を必要としているのかを考えてみて「型」を選んでみてはいかがでしょうか。
▼参考文献その他:
情報の扱い方、頭の使い方、メタ・ノートについて。
外山 滋比古
筑摩書房 ( 1986-04-24 )
ISBN: 9784480020475
おすすめ度:
マインドマップ超初心者向けの一冊です。
トニー・ブザン
ディスカヴァー・トゥエンティワン ( 2008-12-20 )
ISBN: 9784887596764
おすすめ度:
KJ法について知りたければ、この一冊
川喜田 二郎
中央公論社 ( 1967-06 )
ISBN: 9784121001368
おすすめ度:
株式会社マグネットデザイン
▼関連エントリー:
・思考を整理する「メタ・ノート」習慣を始めよう!
・「効果の上がらないブレスト」から抜け出すための5つのルール
▼今週の一冊:
先日、シゴタノ!で佐々木さんが書評を書かれていたのを読んで、その足で購入しました。知的生産の分野とノートは密接な関係があるので、ノート術は個人的に押さえておきたいポイントです。25人のビジネスパーソンがどのようなノートの使い方をしているのかの紹介が本書のメインテーマです。加えて、ノートの使い方についての悩みへの美崎流アドバイスなども読むことができます。
「他の人がどんな風にノートを使っているのか興味あるな」という方にオススメ。
美崎 栄一郎
ナナ・コーポレート・コミュニケーション ( 2010-06-25 )
ISBN: 9784904899014
この記事を書きながら、ふと「メタ・マインドマップ」って面白いんじゃないかな、と思いつきました。マインドマップはある時点での自分の「脳」を表現したものです。これ自体は大変有効なメソッドです。これに「時間的重み」を加えられれば、面白いメソッドになるのではないか、という目論見です。まとまったら記事にでも書くことにします。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。