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次なる一歩として、目次を仮決めする



倉下忠憲前回の記事で、企画案の方向性はずいぶん固まってきました。

この辺の作業は、テンションがあがるというか、気分が盛り上がってくるので作業もサクサク進みます。いい感じです。

しかし、どうやらこの辺で止まってしまうパターンも多いようです。テーマも見えた、切り口も固まりつつある。でも、それ以上になかなか進めない。そんな状況です。

おそらくは、「次に何をしたらいいのか」がわからない点が大きいのでしょう。何をしたらいいのかがわからない → 作業が止まる → 進捗が生まれない → やる気が増えない → 疎遠になる → 永遠の別れへ → ……こういう流れです。

執筆というプロセスは、同種の工程がずっと続くのではなく、異なる工程がいくつも切り替わりながら進んでいきます。そして、その切り替わりポイントをうまく乗りきれないと、手が止まり、やる気が減退しはじめます。挫折的危機です。

その意味で、ちょうどこのくらいのタイミングが一つめの谷だと言えるでしょう。その谷に、ずっぽりはまりこまないためにも、「次に何をしたらいいのか?」を確認しておきたいところです。

三つのできること

できることは、おおよそ三つ想定できます。

  • 資料集め
  • アウトライン(目次案)を仮決めする
  • まずどこかを書いてみる

まず企画案を考えてみて、あまりにも穴が多いなら、そのまま前進するのは止めにして、一度じっくり資料を読み返すところからスタートした方が良いでしょう。

今回の『情報社会の歩き方〜知的生産とその技術〜』に関しては、ある程度埋めることができましたが、それは私がいくつかの記事をすでに書いていたからです。同じようにすっとうまく埋まらないことは十分あります。

そのときは、そのテーマに関する資料を振り返りましょう。あるいは、新しく探してみてもいいです。とにかく、何かしらの資料に当たって、穴を埋められるようにしておくこと。それがポイントです。

その際は、ただ漠然と読むのではなく、テーマをしっかり意識しておきましょう。自分の書こうとしている本に役立つのはどこか、どういう問いが役に立つか。そうしたことを探すように読む目的特化型読書です。

そうした読書では、赤ペンや付箋などで「後から利用したい部分」を即座に取り出せるようにしたり、読書メモや情報カードを使って、アイデアを書き留めることも合わせて進めます。アウトプット、という目的に力点を置いた本の読み方です。

一冊の本の特定の章や項だけを拾って読んだり、逆に一冊の本を丹念に読み込んでみてもいいでしょう。どういうやり方にせよ、普段の読書とはちょっと違った読み方になりそうです。

アウトラインを仮決めする

もし、そんなに大きな穴がない場合は、書きながら埋めていってもよいでしょう。その場合にできることが、残り二つです。まず、「アウトライン(目次案)を仮決めする」から見ていきましょう。

すでに書き出したノートにはたくさんの項目が出てきていると思いますが、それらを眺めながら、「目次案」を作ります。注意したいのは「目次に組み込まれそうな情報を列挙する」のではなく、「目次」を作る意識を持つことです。どういうことでしょうか。

たとえば、以下が「目次に組み込まれそうな情報」を列挙したものです。

これこれで役には立ちますが、そうして完成する本がどのような本なのかは見えてきません。情報の粒度や階層もバラバラで、単に情報がそこにある以上のものではないわけです。

一方で、以下が「目次」(目次案)です。

現状は、中身も空っぽで、本当に六章で収まるのかは未定ですが、このように整えられた形が「目次」です。この空っぽの目次を埋めていくのが、目次作りです。

埋めて、決める

たとえば、先ほどの空っぽな目次に、項目を当て込んでいくとします。

当然のように第一章と第二章と第三章と第四章と第五章と第六章の「粒度」は同じにしなければなりません。内容的には別のことが書かれていても、その「まとまり感」(としかいいようのないもの)は揃っている必要があります。
※揃っていなくても本にはなりますが、統一感が欠けた印象は覚えるでしょう。

そして、その「まとまり感」を作ろうとしているうちに、徐々にコンテンツのまとまりというのが生まれ始めます。そうなったら、徐々にそれは「本」に近づいていきます。

つまり、ここでは二つの思考対象が存在しています。「書かれるもの」(内容)と「まとめ方」(構造)です。

ある程度構造作りに慣れている場合なら、これらを同時に対象にして思考を進めることもできるでしょうが、そうでないならば、まず「書かれるもの」を洗い出し、その後、それを参照しながらその「まとめ方」を考える、という手順を踏むのがよいでしょう。

まず文章を書く

上記のような構造作りを進める代わりに、まずどこかの部分について実際に文章を書いてしまう、という手もあります。だいたいは、冒頭部分やコンテンツの導入部分がその対象になるでしょう。

不思議なことに、そうした部分を文章で書いていると、それまであまりクリアでなかったものが、徐々に明瞭になってくることがあります。どんな話をどんな順番で伝えたいのか、自分が一番いいたいことは何なのか、どういう風な語り口で進めればいいのか。それが掴めるのです。

もちろん、そううまくはいかないことも珍しくありません。まったくぜんぜん一行も思い浮かばない場合もあるでしょう。そういうときは、最初に書き出した素材群をいったん見返してみることをお勧めします。何か伝えたいことがあるならば、きっとそこから掘り出せるでしょう。

さいごに

というわけで、三つの次なる行動を紹介してみました。

どの行動が最適なのかは状況によっても人によっても違うでしょう。とりあえず行動の選択肢を持っていれば、どれかを選ぶことはできます。

とりあえず、『情報社会の歩き方〜知的生産とその技術〜』では、次のステップとして目次案を決める方向に進みます。この際のポイントは、先ほども書きました「決める」ということです。

それ以前のステップでは、自由な書き出しであり、構造もへったくれもあったものではありませんが、ここからは完成した「本」の形を見据えて進めていくことになります。で、その最初の一歩が目次作りです。

もちろんこれはあくまで仮決めなので、後から変えても全然ヘッチャラです。しかし、何も決めないで、ただ自由な書き出しを膨らませていくだけでは、これっぽっちも「本作り」は進まないことも確かです。

だから、ここで「仮」を決めてしまいます。その後のことは、その後で調整すればいいだけです。でもって、この作業ではアウトライナーが大活躍するのですが、その話は次回に譲りましょう。

▼今週の一冊:

たまたま「面白い」という評判を聞きつけて、これからの人生で論文を書くことは一切ないだろうと思いつつ読んでみたのですが、存外な「面白さ」がある本でした。非常に肩の力の受けた、しかし実際的(実地的)な知見がまとめられた一冊です。こういう本の書き方は、一つ引き出しにいれておきたいと思った一冊でした。

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▼編集後記:
倉下忠憲



確定申告は無事終わったのですが、花粉症がまだ健在ですね。複数の企画案について並行で考えているのですが、かなりゆっくりとしか進んでいません。3月の末くらいから本格的に進めればいいかな、くらいの心持ちでおります。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中