何かを思いついたら、すぐに書き留める癖があります。
でもって、思いつきが発生するのは、本を読んだり、原稿を書いたり、散歩していたりと、何かの行為中なので、その思いつきのメモはがっつり詳しく記述したものでなく、印象を書き留めたもの、見出しだけを抽出したものになります。
このメモは、言ってみればつるつるの球体です。
アイデアのコンセプトはぎゅっと凝縮されているし、球として何かには使えるだろうけれども、何に使えるのかはわからない。いわば、リンクを欠いた状態です。
これに記述(肉付け)を加えることで、励起させます。
リンクを立てる
何かを思いつき、書き留めたということは、単に書き留めたものだけを思いついたのではなく、その後ろに何かしらの概念があり、それがわずかでも面白そうだと思ったということです。言い換えれば、一行メモの後ろには、書き込まれるべき内容があるはずなのです。
パソコンの充電アダプタで、普段はプラグが折りたたまれて収納されているものがあります。使う段になると、そのプラグを立ててコンセントに差し込む。そういう使い方をします。
アイデアメモにも同じことをしてみましょう。
Let’s 肉付け
実際にやってみましょう。Evernoteの中にあるアイデアメモからいくつか選んで、それをScrapboxで展開します。
ex.1)インタビューにおけるトリム
とりだしたアイデアメモ。
記述が増え、リンクが3つ生まれました。内容に直接関係あるリンク(インタビュー)、やや関係あるリンク(トリム)、ほぼ関係ないリンク(String.prototype.trim())の3つです。これがどうつながるかはわかりませんが、少なくともこのメモから線が生じたことは間違いありません。
ex.2)箇条書きとアフォリズム
とりだしたアイデアメモ。
生まれたリンクは三つで、そのうち二つはタイトルにあるキーワードなので(この段階では)たいしたことはありませんが、一つのリンクは、すでに作られていたリンクで、言い換えれば、既存のページとこのページが接続されました。球体と球体がくっついたわけです。一歩前進です。
ex.3)ウィザード同士の会話
とりだしたアイデアメモ。
今回のメモには、タイトルだけでなく、数行の書き込みがありました。
これを元に文章の肉付けを進めます。結果、断片的メモというよりは、ミニエッセイになってしまいましたが、それはよしとしておきましょう。
文章中にリンクはなく、全体として「これは本の書き方に関する話だな」と思い、そのハッシュタグをつけました。
すると、そのタグがついている別のページが表示されます。となると、そのページが気になってきますね。覗いてみます。
すると、そのページには#ライティング・プロセス・パターンというハッシュタグがついていました。ここで私は考えます。「ウィザード同士の会話」のページは、ライティング・プロセス・パターンだろうか? 否。だったら、なんだろうか。
ライティング・デザイン・パターンだ。
というわけで、そのハッシュタグをつけると、そのタグがついている別のページが見つかりました。そうでした。以前にも同じことを考えたことがあったのです。うまくそのアイデアと邂逅することができました。リンク接続です。
さいごに
私のEvernoteには、上記のような一行程度の書き込みが4000程度あり、それらすべてが「未リンク」なままで眠っています。
もし、それらすべてをこのように励起させていったら……。
おそらく、本何冊か分のコンテンツになるでしょう。もちろん、実際に行うまでは捕らぬ狸のなんとやらですが。
▼今週の一冊:
提唱者のポランニーは、「形式知」という言葉を使っていないのですね。というか、彼が定義する「暗黙知」は、形式化できないもののようです。
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。メルマガ毎週月曜配信中。