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年末は情報の大掃除を!

倉下忠憲
12月も最後の週です。そろそろ大掃除の準備をされている方も多いでしょう。1年分の汚れや埃を払い落として、新しい気持ちで新年を迎えるというのが年末の大掃除の意義です。できれば家の掃除だけではなく、一年分の「情報」や「思考」も大掃除しておきたいところです。

今回は「情報の整理」について、年明け一回目は「思考の整理」について少し考えたいと思います。

情報の整理

以下は誠 Biz.IDの名言で読む「リーダーの必読書」(2009年12月21日)で紹介されていたラテン語の格言です。

「相手かまわず信頼するのは、誰も信頼しないのと同様に過ちである」

この言葉を情報に置き換えれば

とめどなく情報を集めるのは、何一つ情報を持っていないのと同様に過ちである

となるでしょう。情報というのは使うために集めるのであって、その収集自体が目的ではありません。情報を集めたはいいが、どれを使えばよいかわからない・使いたいときに出てこない、というのでは用をなしません。

集めた情報を有効に活用するためにも、たまったままで整理していない情報は、このタイミングで一度じっくり整理してみることをオススメします。

ファイルシステム

簡単に情報を整理する方法として、以下のような4つのレベルに情報を振り分けるというシステムがあります。

  • アクティブファイル (最近使ったし、しばらく頻繁に使う)
  • インアクティブファイル (ある程度のペースで使う)
  • アーカイブファイル (一定期間保存する必要有り)
  • ゴミ箱 (上の3つに当てはまらない物は全て捨てる)

これは、シゴタノ!での大橋さんの過去のエントリー「できる人はデスクスペースを5つに分ける」の中で紹介されているファイルシステムです。

それぞれのシステムにどのようなツールをを使うかは自由ですが、例えばアクティブファイルにおいて、電子ファイルならばDropBox、紙ベースならば封筒に入れて管理する「押し出しファイリング」といった選択肢があります。どのようなツールを使うにせよ、きちんと行き先を決めてファイルを割り振っていく作業を行えば、予想以上のファイルを減らすことが出来ると思います。
※押し出しファイリングについては野口悠紀雄氏の『「超」整理法』参照のこと

もちろん、これは年末だけ行うのではなく、一つのシステムとして使い続けていくことで机の上やPC内を整理された状態にすることができるはずです。

情報の入手経路を整理する

自分の手持ちの情報を整理したら、次は「入手経路」の整理です。もし、自分のキャパシティー以上に情報を入手していれば、どのような整理システムを持っていたとしてもいずれ破綻します。入り口を監視して、不必要な情報を入れない対策を行う必要があるでしょう。情報の入手経路もさまざまありますが、いくつか例を挙げておきます。

RSSリーダー

フィードは上がってくるけども、実際あまり見ていないサイトはないでしょうか。見出しを見るだけならば秒単位の作業ですが、数が増えてくると徐々に負担になってきます。あまり参照しないサイトはリーダーへの登録を解除した方がよいでしょう。ある程度減らして余裕がでてきたらリーダーがおすすめしてくるようなRSSを登録して視野を広げることもできます。

雑誌

買うことが習慣になっている雑誌はないでしょうか。一年間振り返ってみてあまり役に立っていない情報誌はなかったでしょうか。あるいは、役には立ったがほんの少しだけ、という雑誌はどうでしょう。もしそういった雑誌があるならば来年からは購入を見送ってみてはいかがでしょうか。それだけでいろいろな物が節約できそうです。もし、どうしても買うことを見送る決断ができない場合は「特集の記事が気になったら買う」という条件付きで買うのを一時中断してみるのもよいかもしれません。。

読書メモを付けている人は、自分の読書の傾向と面白く感じた本がだいたいつかめていると思います。読書メモを付けていない人は本棚をじっくり見直しましょう。流行だからと買った本が案外面白くなかったということはよくあることです。一年を振り返ってみて、そういった本の購入が多ければ、来年からは本を買う前に深呼吸することを心がけた方がよいかもしれません。落ち着いて考えれば家にはまだ読む本がたくさんあった、と気がつき購入を見送ることができるかもしれません。

ちなみに、メモも付けないし、本は家には残さないという方にとっては、これは難しい作業です。そういった方はメディアマーカーというサービスが便利です。ネット上に自分の本棚を登録できる(しかも無料)ので一度試してみてはいかがでしょうか。

まとめ

知的生産における情報収集というのは、あくまでアウトプットが目的です。使いもしない、見返しもしない、どこにあるかも分からない、という情報は知的生産においては「素材」にはなりません。むしろ脳の能力的限界からすればノイズになる可能性の方が高いでしょう。

望む限りの食材が詰め込まれている「なんでも冷蔵庫」は大変魅力的です。しかし、そのような冷蔵庫の前に立てば普通の人は何を作ればよいのか分からなくなりそうです。

むしろ、人の創造力が発揮されるのは限られた食材をいかに使うか、という状況に置かれた時でしょう。効果的な知的生産を行うには、自分の身の丈にあったサイズの冷蔵庫を持ち、食材を整理しておくことが重要なのではないでしょうか。

 
▼参考文献:

「超」整理法―情報検索と発想の新システム
野口 悠紀雄
中央公論社 ( 1993-11 )
ISBN: 9784121011596
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

 
▼今週の一冊:
この連載を書くようになって「知的」という単語が入った本はとりあえず手に取るようにしています。もちろん当たり外れはあるわけですが、「知的」と「勉強法」というある撞着語法的な雰囲気を携える以下の本はなかなか印象的でした。

著者の齋藤氏が言うには、「知的な勉強法」と「そうでない勉強法」がある、ということです。「そうでない勉強法」だけでは知識は頭に入っても、地アタマ力は鍛えられないと述べられています。
では知的な勉強とは何か、という問題ですが、一言でまとめると「自分の勉強法をDIYしていく」ということになりそうです。この本の中で紹介されている勉強法はビジネス本からいかに吸収するかという視点で見ても有用なものが多いと思います。

地アタマを鍛える知的勉強法 (講談社現代新書)
齋藤 孝
講談社 ( 2009-12 )
ISBN: 9784062880275
おすすめ度:アマゾンおすすめ度

 

▼編集後記:
倉下忠憲
今年も残すところ一週間を切りました。私自身は年末年始だからといって休みというわけではありませんが、休みになられる方も結構おられるでしょう。まとまった時間に読書をする、あるいは新年の目標でこれから読書をしようと考えられている方はR-styleで「書評企画」を実施しております。気になる方はちょっとチェックしてみてください。

 
 
▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。