ちょっと気になるけど、今回は例外的な動きだからもう少し様子を見よう、それで落ち着くかもしれないし、へたに動いて損をしたくないし──。
一見すると臨機応変で理知的とさえ思える判断ですが、実は現実を自分にとって都合良く解釈しているだけであり、そこから導き出される判断もまた自分にとって都合の良いチョイスに過ぎなかったりします。
たとえば、以下のようなことです。
- 30分の予定で記事を書き始めたけど、キリが悪いからこのまま続けよう
- この仕事、今日やろうと思ったけど、締切までまだ日があるから明日まとめてやろう
もちろん、いずれも「このまま続ける」や「明日まとめてやる」という判断が良い結果をもたらす場合もあるでしょう。
裏を返せば、こうした“アドリブ”によって望ましくない結果を招いてしまうこともありうる、ということです。
映画やドラマを観ていると「当初の予定」がことごとく破られ、予定外で想定外の意外な展開で物語が進行していきます。
だからこそ「面白い」わけですが、それは脚本的には「予定通り」なのであって、こうしたアドリブ志向をそのまま真似るのは安全とは言えないでしょう。
13時からのミーティングに13時に到着
実は、最近まさにこの「望ましくない結果」を実際に招いてしまった出来事がありました。
懇意にしているA社のa社長に、これまた懇意にしているB社のb社長を紹介することになり、13時から三者で初顔合わせという段取りに。
aさんもbさんも、いずれも何度もお目にかかっていますし、一緒に仕事もしてきていますので、両者を引き合わせることができて本当に良かった、と内心うれしく思っていました。
いつもなら10分前に到着する予定で移動するのですが、なじみのある方々とのミーティングということで油断していたのか、気づいたらギリギリの時間になってしまい、慌てて移動開始。途中小走りしながら、会場となるA社のオフィスに着いたのが13時ちょうど。
すでに、bさんはaさんとの名刺交換も済ませており、ミーティングは始まっていました。
紹介者の立場がありません…。
今回はギリギリの移動でも電車が予定通りのダイヤで動いてくれたので間に合いましたが、少しでも遅れていれば遅刻していたでしょう(今回は予定時間前とはいえ、すでにミーティングが始まっていたので、事実上遅刻だったわけですが…)。そういう意味では「電車は予定通り動くだろう」という自分にとって都合の良い解釈をもとに行動していたことになります。
また、このようなことを防ぐために昼前に移動し、昼食はA社付近でとって時間調整を行うこともできたはずです。これなら、万一電車が遅れても影響はほとんどないはずです。
やろうと思えばできたのにやらなかったのは、「ギリギリまでPCに向かっていたほうが仕事が進む」という、やはり自分にとって都合の良いチョイスが原因です。
今回の失敗を今後に活かすなら、
- 13時からの先方でのミーティングは午前中に移動し現地付近でランチをとる
というルールを、
もし、午前中をめいっぱい仕事に充てたいなら、
- 午後の予定は14時以降に設定する
というルールを、
それぞれ定めて、これを守るようにすることでしょう。
ブログの管理画面に入れなくなった
別の事例です。
最近このブログの管理画面に入れなくなる、というトラブルがありました。
以下のような画面が表示されて、ログインすらできなったのです。
これもまた、先ほどの「電車は予定通り動くだろう」と同じく、「今日もブログのサーバは正常に稼働しているだろう」という自分にとって都合の良い解釈をもとに行動していたことを痛感させられる出来事です。
幸い、優秀なサポートエンジニアの方に即対応していただけたので、特に支障はなかったのですが、ここにおいても「何か起きたらサポートエンジニアの方に連絡すれば対応してくれるだろう」という自分にとって都合の良い解釈が存在することに気づきます。
もちろん、「自分にとって都合の良い解釈」のいっさいを排除するのは不可能でしょう。
ただ、自分にとって無理なくできる対策の余地がある限りは、その上限いっぱいまでは対策を講じておく。
「できることはすべてやった。それでもまだ何か起きるというなら、もう甘んじて受け入れるしかあるまい」という覚悟を決められるくらいに。
このような覚悟を決めるうえでの拠り所となるのが、記録に基づいた一日のスケジュールであり、週間の時間割であり、個々のケース別に定められたルール群ということになります。これらがきちんと整備されていることをもって「対策を講じている」と言えるからです。
多数派同調バイアス、正常性バイアス
今回、「自分にとって都合の良い解釈」を排除することの難しさについて書こうと思ったのは『人は、なぜ約束の時間に遅れるのか 素朴な疑問から考える「行動の原因」』という本に載っていた以下の事例が発端です。
津波の怖さを啓蒙し、警報システムを整備し、避難経路や場所を確保しても、警報を聞いた人が逃げ出さなければすべて無駄になってしまう。
総務省消防庁の調べによると、2004年9月に発生した紀伊半島沖地震では、沿岸部の約14万人の住民に避難勧告が出されたにもかかわらず、避難所へ避難したのはそのわずか6%に過ぎなかったという。
(中略)
山村氏は、1980年に栃木県の川治プリンスホテルで発生した火災から逃げ遅れた人たちや、2003年に韓国の地下鉄で起こった放火事件で、車内に煙が充満しつつあるにもかかわらず逃げ出さなかった乗客の例をあげ、その原因を非常時に陥りやすい《バイアス》によるものだとしている。
《バイアス》とは、先入観とか思い込みといった心理的な偏りのことである。過去に経験したことのないような出来事が起こって、どうしてよいかわからなくなると、まわりの人と同じ行動をとることが安全と考えるのが《多数派同調バイアス》、こんなことは起こるはずはなく、だから何かの間違いであると信じるのが《正常性バイアス》だという。
韓国の地下鉄では、車内の異常を認知したのにもかかわらず、まわりの人が誰も逃げ出さなかったので《多数派同調バイアス》が働いて自分も逃げなかったということになる。川治プリンスホテルの火災では《正常性バイアス》が働いて「誤報か故障だろう」とか「避難訓練に違いない」と思い込んでしまった客が逃げ遅れてしまったことになる。
引用文中に出てくる《多数派同調バイアス》や《正常性バイアス》がまさに「自分にとって都合の良い解釈」を引き起こしていることが分かります。
» 人は、なぜ約束の時間に遅れるのか~素朴な疑問から考える「行動の原因」~ (光文社新書)[Kindle版]
同じ失敗の再発を防ぐためにEvernoteで続けていること
今回、この記事を書くにあたって「過去に自分が失敗した事例」が必要になりましたが、実に簡単に集めることができました。
普段から「これは失敗したな~」と痛い目に遭うたびに、その詳細をEvernoteに記録し、「+error」というタグを付けているからです。
ちなみに、この「+error」のタグがついたノート群は週に一度読み返し、きちんと対策が講じられているかのチェックを行うようにしています。「喉元過ぎれば熱さを忘れる」のごとく、すっかり忘れていることもあって焦ることが多々あります。
ちなみに、タグの先頭に「+」を付けているのには理由があります。感情にまつわる記録には「+」始まりのタグを付けるようにしているのです。
↓これについては以下の記事で解説しています。
» Evernoteに日々の感情の記録を残すことで得られること
感情に関するタグは、先頭に「+」を付加しています。上記それぞれに対応するタグは以下の通りです。
- +approved(認められた)
- +cool(してやったり)
- +impressed(感銘を受けた)
- +favorite(気に入った)
- +frustrating(イライラした)
- +disappointed(ガッカリした)
- +error(失敗した)
1日は無数の瞬間の集積ですから、それぞれの瞬間ごとに対応する感情タグをつけていくことになります。
もちろん、すべての瞬間を記録に残すことなど不可能ですから、あくまでも心に引っかかった、すなわち感情を強く動かされたこと限定です。
とはいえ、時間の制約がある以上、限られた瞬間だけしか記録に残すことはできません。
つまり、自分の感情の動きに敏感になることです。
最初はなかなか“捕まえられない”かもしれませんが、とにかく記録を続けているうちに、今まで見過ごしていた充実感や達成感が見えてくるはずです。
↓ほかにも「Setting」というタグも意識的に活用しています。
» Evernote上で「アイデア」と「方針」とを分けて捉えるためのタグ「Setting」
タグ「Setting」のついたノートだけを読み返す「Settingレビュー」を週に一度の頻度で実施しています。
現時点で、Settingのついたノートは513個あり、すべてを読み返すことは困難なため、最近作ったノートはしっかりと目を通し、それ以外はタイトルだけをざっと眺めて目に留まったものだけ本文も見る、という具合で、5分たったらやめます。
この過程で、すでに現状にそぐわなくなっている方針が見つかれば、Settingタグを取り除き、代わりに「ExSetting」を付けておきます。こうすることで、常に現状にフィットした方針だけが残ることになります。
このレビューを続けることで、自分の全方針を再確認でき、判断のぶれが少なくなると考えています。
↓「+error」や「Setting」以外にもさまざまなタグを活用しています。
» Evernoteに蓄積した記録から「良いアイデア」を見つけ出すための仕組み
Evernoteに蓄積したアイデアの素の活用度合いが高める上では、日頃からのメンテナンスが欠かせません。
例えば、検索に備えてノートタイトルをリライトしたり、適切なタグを付与したり、といったことです。
特にノートタイトルのリライトにおいては、ノート本文に含まれていないものの、自分にとって意味のある言葉を含めるようにすることが重要だと考えています。言ってみれば、脳内SEO対策です。検索に引っかかりやすくするように、キーワードを追加するわけです。
またタグについては、ノートの内容を分類するために付けはじめると、似たようなタグが増えて収拾が付かなくなるので、ノートと自分の関係性を分類するために付けるようにしています。