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その否定でアイデア増えました? 〜創造的否定について〜

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photo credit: timsamoff via photopin cc

倉下忠憲多人数でのアイデア出しでお馴染みのブレイン・ストーミング(以下ブレスト)。

この「ブレスト」の四原則をご存じでしょうか。

  • 判断・結論を出さない(結論厳禁)
  • 粗野な考えを歓迎する(自由奔放)
  • 量を重視する(質より量)
  • アイディアを結合し発展させる(結合改善)

一番最初に「結論厳禁」とあります。ということは、「あぁ、そのアイデア全然ダメ」とか「そんなの無理に決まってるでしょ」とブレスト中に言ってはいけないわけですね。

これはとても大切なことです。何しろ突飛な考えや常識外のアイデアをみると、つい否定したくなってしまうのが人間の心理的惰性です。それを戒めておかないと、斬新なアイデアは顔を見せません。

しかし、ブレスト中にいっさいがっさい・100%・完全に否定を入れてはいけない、というわけでもありません。効果的な否定、あえて言えば創造的否定、というのも確かに存在しています。


否定を含む前提状況

そもそも考えてみると、ブレストを行う場合、何かしらの議題や問題が必ず設定されています。それは見えにくいですが、何かしらの否定を含んでいることがほとんどです。

たとえば、「売上げをアップさせる方法を考える」には「売上げを下げてはいけない」という前提が含まれています。その前提(あるいは制約)があるからこそ、出てくるアイデアが一つの方向を向くわけです。ごく当たり前のことを書いていますが、大切なことなのです。

ブレスト中の「否定」は、要するにこの前提(あるいは制約)を事後的に加えるものです。表現を変えれば、アイデア出しの流れを制御するものと言えるでしょう。「ここから先、進入禁止」という看板を立ててしまうわけです。

切り落とす果実

たとえば、果物などを栽培している場合、育ちの悪いものを早い段階で切り落としてしまうことがあります。そうすることによって、育ちの良いものにより多く栄養分が周り、結果として大きな果実が育ちます。

ブレスト中の否定もこれと似たようなものと言えるかもしれません。

なんといっても、私たちには時間という制約があります。1時間なら1時間という設定されたスケジュールの中で、何かしら実のあるものを生み出さなければなりません。そういう状況では、目指している成果とあまりにもずれていくようなアイデアには制限を加えておく必要があるでしょう。

しかし、この否定は少々高度な作業です。間違って「育ちの良い果実」を切り落としてしまう可能性も充分あります。そうなったら台無しです。

否定しない理由

そもそも、なぜブレストの四原則には「判断・結論を出さない」が加えられているのでしょうか。

それは、「判断・否定」の存在が、思いついたアイデアを口に出しにくい環境を作ってしまうからです。誰だって「あぁ、そのアイデア全然ダメ」と何度も言われ続ければ、何か思いついても黙っていようと思うはずです。そういう状況では、ブレストの効果はまったく出てきません。

逆に言えば、「否定」をしても発言の熱が冷めないような環境が出来上がっているのならば、否定は問題にもなりません。

もっと言えば、「否定」をすることで、新しいアイデアが出てくるのならば、ブレスト中の「否定」もありです。

クイズ好きが問題を見たらつい解答を考えてしまうように、カメラ好きが構図を考えてしまうように、数学好きが数字の並びに法則性を探してしまうように、新しい制約が設定されると、より良きアイデアを出そうとするのがアイデアメーカーです。

「この部分は、この辺が足りてないよ」「じゃあ、こうすればどうですか」

というやり取りが行われるのならば、その否定は創造的否定と呼べるでしょう。

さいごに

しかし、上のようなやりとりは、アイデア出しに慣れている人や、問題解決マニアだけの話かもしれません。うまく否定するのも、否定されて新しいアイデアを出すのもわりと難しいのです。少なくともある程度の熟練が必要でしょう。

ブレストの場が「暖まって」くるとそういう心理状況になれるのですが、初心者の集まりだと暖まる前に否定が飛び交って終了、ということも珍しくありません。

というわけで、ブレストの四原則には「結論厳禁」が設定されています。四原則そのものが初心者向けに明示化されたルールなので、これは当然と言えるでしょう。

しかしながら、次のステップとして創造的否定があるということも一応知っておいてください。ただし、自分が否定したいからといって「これは、創造的否定だからいいんだ」という言い訳として持ち出すのは厳禁です。

その発言で新しいアイデアが出てきたのか、皆が押し黙ったのか。それが見極める基準になります。

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選挙も迫っておりますので、若い方はちょっと読んでみてもよいかもしれません。

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▼編集後記:
倉下忠憲



ものすごくKDPに取り組みたい欲求と戦いながら、締め切りオーバーしている書籍の原稿に取り組んでいます。

と、書くといささか大げさですが、いま何かの締め切りを持っていなかったら、間違いなく熱中してKindle本を作っているような気がします。


▼倉下忠憲:
新しい時代に向けて「知的生産」を見つめ直す。R-style主宰。